監督交代で、ガラッと雰囲気が変わった


苦渋の決断だったシーズン終盤での監督交代。残り試合は大熊清監督の手にゆだねられた。

--リーグ戦1試合を残してパウロ・アウトゥオリ前監督が退任、大熊清監督が就任しました。この監督交代についてどう感じられましたか?
小田「大熊監督の就任会見での玉田稔社長の言葉 がすべてかな、という気がします。ここで変えないと後悔する、とおっしゃっていました。時期が遅いうんぬんというのはあるかもしれないですけれど、早かったらいいというものではないと思いますし…」
和田「昨年のこと(2度の監督交代)がなかったら、監督が辞めると言ったという騒動があったときに交代していたのかも…。今年はそうじゃないというところを出さなければと、社長が我慢されたのかなとも感じました」
小田「でも、ガラッと雰囲気が変わりましたね」
和田「選手も、私たちも含めて、みんな水を得た魚という感じでした」
小田「そうですね、選手間の会話も増えましたし」
和田「それまでも会話はあったと思いますが、空気感というか雰囲気がね。セレッソならではのパス回しも復活して、ああ、懐かしい!みたいな(笑)。縮こまっていた感がなくなりました」
小田「J1昇格プレーオフという目標が明確になったというのと、監督交代のタイミングが合ったのもよかったかなと思います。もう行くしかないと」

セレッソらしさ、が見られただけに…


落ち着いたプレーと声で、ラスト3試合のキーマンとなった橋本英郎選手。

--リーグ戦の残り1試合とJ1昇格プレーオフの準決勝、決勝の3試合。大熊采配に関してはいかがですか?
小田「大熊監督は『ピッチで力を出した選手を使う』とおっしゃっていて、そこは一貫していましたね。扇原(貴宏)選手の出場停止が明けても、橋本(英郎)さんのままだったというのが象徴的でした」
和田「あの3試合は橋本さんがキーマンでしたからね」
前田「そうですね」
小田「モニさん(茂庭照幸)も、最終節の東京V戦 で2得点をあげました」
和田「あの得点は、ホント涙が出ました!」
前田「東京V戦の前の週の練習で、今まではあまりなかったセンターバックの選手が相手FWに付いて行って前にグッとボールを取りにいくというシーンが出るようになりました。山下(達也)選手が象徴的だったんですが、ああいうアグレッシブなディフェンスがやっと見られた、持ち味が見え出したんです。山下選手に聞いたら、それまではなかなかそういうものがチームの戦術の中でできなかった、と言っていました」
和田「インターセプトの数字を見ても、ボランチの選手は多いんですけど、本来多いはずの山下選手たちはそれまで少なかったんです」
前田「チームの約束事も大事だけれど、そういうプレーをすることによって、スタジアムが盛り上がる、サポーターのテンションが上がっていく。周りが盛り上がることでチームも乗っていける。ちょっと雰囲気は変わってきたのかなと思いました」
小田「パウロ・アウトゥオリ前監督は『ポジションをしっかり取れ』と言っていましたからね」
和田「ディフェンスの練習も、食いつくのではなく、リスクマネジメントを大事にしていました。染谷(悠太)選手も山下選手は、シュートブロックというところでは、すごく数字が上がっているんです。でも彼らの良さは、山下選手なら対人のディフェンス、染谷選手ならカバーリング。そのへんがあまり出し切れなかった」
前田「センターバックに限らず、山口(蛍)選手も前に飛び出していく良さというところでは控えていたのかなと」
和田「残り3試合では、山口選手らしい前への飛び出し、でもまた戻ってくるという運動量、それが見られました」
小田「確かに、最後はそれぞれの『らしさ』が見られましたね」
前田「だからこそ、もったいなかった!」

vol.6に続く
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【出席いただいた皆さん】
前田敏勝さん(左)
Jリーグ公認ファンサイト「J’sGOAL」セレッソ大阪担当。セレッソのオフィシャルメディアや雑誌、WEBなどで広くサッカーライターとして活躍中。
和田りつ子さん(中)
元女子1級審判で、スカパー!の中継レポーターの経験も豊富。サッカーの見識、愛情ともに深い“おしゃべり屋さん”。セレッソ大阪堺レディース、ガールズも取材。
小田尚史さん(右)
『エルゴラッソ』のセレッソ大阪担当として、ホーム、アウェイの試合、トレーニングと広く深く取材を続けている。熱い記事が持ち味の気鋭のライター。
進行・まとめ
横井素子(まいど!セレッソ~マイセレ~編集担当)

2015年12月15日実施