2016シーズンのセレッソに望むこと

--ここからは来年の話をしたいと思います。次こそJ1に上がらないといけない、2016シーズンのセレッソに望むことをお話しください。
前田「今年のJ1チャンピオン(広島)をリスペクトするというか、見習ってほしい気がします。セレッソがもともと目指していたもの、アイデンティティーというものに立ち返るというか…。今年は立ち返るべきところがなかったので、もう一度見つめ直さないといけないのかなと思います。大きいスポンサーがついてグローバルな展開をしようとする中だからこそ、このクラブが近年どういった部分で伸びてきたのかということを見直していただきたい。アカデミーで若い選手を育てている良いやり方や流れを、トップにも連動性を持たせてやる。たとえばセレッソ大阪堺レディースとガールズの関係のように。
結局、一度J2を経験してJ1で頑張っているクラブはどこもそうですよね。広島も柏も湘南も、下からの良い流れがあってチームを作っている。どんな監督が来られたとしても、軸は、原点はそこなのかなと。1年でJ1に上がらなきゃいけないという仕事を考えたら継続性を求めるのは難しいかもしれないですけど、福岡も今季は3連敗からスタートして地道にスタイルを作って上がっていますから」
和田「2016年はセカンドチーム(U-23)がスタートして、J2とJ3で活動するということになります。すごく難しいことだと思いますが、ホントにJ1昇格に必要なのは、チームとしてのまとまりやセレッソを思う心、プライスレスな、お金じゃない価値観じゃないでしょうか。スポンサーも増えて、いい選手も取れると思うんですけど、セレッソを思う気持ち、魂みたいなものがあるかどうか。今季の最後のモニさん(茂庭照幸)の得点なんかは魂があったからだと思います。サッカーでは、言葉では表現しきれない、システムだけでは説明できないものが絶対にあると思うんです。それが、今年見に行かせてもらったセレッソ大阪堺レディースやガールズにはありました。ああセレッソの良さあるよな、セレッソらしさがあるよな、って」
小田「僕もレディースの試合を1試合だけですが見て、それを感じましたね」

U-15年代の全国大会でチャンピオンになったセレッソ大阪堺ガールズ。炎暑の中の決勝でJFAアカデミー福島を破っての快挙だった。

和田「竹花(友也)監督はセレッソの選手でしたし、『セレッソのサッカーが好きやねん』というところが原点なんですね。セレッソのサッカーってなんやねんと言ったら、ボールを大切にする、それだけじゃなくて戦う姿勢なんかも、もともとセレッソのトップチームから教えてもらったこと。それをアカデミーのチームが表現しているんです。その結果として、昨年U-18とU-12が優勝したり、今年はレディースが昇格したり、ガールズがU-15の大会で日本一になったり、U-15が揃って全国大会に出て頑張ったりしている。セレッソっていうたら、なんや小柄な選手が一生懸命頑張っているな、よう走るな、ボール触らしたらピカイチやんか、という感じがあって、前にセレッソがJ2からJ1に上がったときは香川(真司)選手や乾(貴士)選手がいたり、アカデミーからトップに上がってきた選手がセレッソをどうにかしたいという気持ちでやっていました。今年のレディースは、去年の悔しい思い(なでしこ2部に残れなかった)をチャレンジリーグWEST無敗につなげました。トップチームも、来年は負けなしでシーズン終わる!ぐらいの気持ちを持ってほしいです。
前田さんのおっしゃった、セレッソらしさがしっかりあれば、誰が監督に来てくれはってもいいですし、どんな選手が入ってきても大丈夫と思います。セレッソの畑はすごく肥えていて、土がいい状態で耕されているので、いい感じで育っていくと思います。スタジアムもすばらしいですし、サポーターもすばらしいです。セレッソを思う気持ちでまとまってもらって、レディースの選手が『やっぱりトップの選手はすごいな、越えられないな』と思えるトップチームであってほしいです」

2014シーズンの悔しさを忘れず、チャレンジリーグを戦い抜いたセレッソ大阪堺レディース。彼女らのひたむきさは、サッカーの原点であろう。

小田「すべて和田さんのおっしゃる通りだと思います。今年J1に上がったチームはやっぱり色があって、大宮はポゼッションをしっかり握って、きっちり崩してというサッカーをやってきた結果、最後のほうはちょっと減速しましたが、立ち返ることができて上がりました。磐田は強力な外国籍選手を取って、最初は彼らに引っ張られる形でいって、だんだん日本人選手ー上田康太選手や川辺駿選手、小林祐希選手たちーが伸びていって、最後は苦しんだけど昇格を勝ち取りました。福岡も最初は連敗がありましたが、ロングボールや高さ、セットプレーなどで特長を出して…結局はチームの色というものがあったと思うんです。じゃあセレッソはどうだったかというと、和田さんがおっしゃったように1年に3つのチームがあって 、1年間こういうサッカーをやりましたと胸を張って言うものが、今年に関してはなかったかなと。選手はもちろん戦っていましたしスタッフも頑張っていましたけど、それが出てない。来年はしっかり積み上げて、セレッソはこれをやってきましたと言えるチームを作ってほしいなと思います」

vol.10に続く 
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【出席いただいた皆さん】
前田敏勝さん(左)
Jリーグ公認ファンサイト「J’sGOAL」セレッソ大阪担当。セレッソのオフィシャルメディアや雑誌、WEBなどで広くサッカーライターとして活躍中。
和田りつ子さん(中)
元女子1級審判で、スカパー!の中継レポーターの経験も豊富。サッカーの見識、愛情ともに深い“おしゃべり屋さん”。セレッソ大阪堺レディース、ガールズも取材。
小田尚史さん(右)
『エルゴラッソ』のセレッソ大阪担当として、ホーム、アウェイの試合、トレーニングと広く深く取材を続けている。熱い記事が持ち味の気鋭のライター。
進行・まとめ
横井素子(まいど!セレッソ~マイセレ~編集担当)

2015年12月15日実施