「まいど!セレッソ」のオフ企画、選手別レビュー!
J1昇格を決めた2016年。選手にとってのこの1年を、日頃から取材を続けてきた番記者ならではの視点で振り返ります。

第35節・FC岐阜戦(キンチョウスタジアム)のゴール後

玉田圭司の2016年

J2に降格し、涙に暮れた2014年。打ちひしがれた気持ちを救ってくれたのは、年明け早々の彼の加入だった。

2015年第2節・大宮アルディージャ戦 では、鮮やかな直接FKを含む2得点。挨拶代わりと呼ぶには強烈過ぎるホームデビューとなった。その後も、フォルランとカカウがシーズン途中で抜けた攻撃陣を引っ張り、夏場には得点を量産。一時は中位まで下げた順位を自動昇格が狙える位置にまで押し上げた。スタジアムを揺るがしたJ1昇格プレーオフ決勝 での得点は、セレッソ大阪のクラブ史に刻まれただけではなく、サポーターの記憶にも一生残る、魂の一撃だ。

柿谷曜一朗や杉本健勇の復帰、リカルド サントスらの加入で前線の層の厚みが増した今季は、開幕からスーパーサブとしての立ち位置が続き、初先発は第20節・東京ヴェルディ戦 まで待たねばならなかった。それでも、チームが4戦勝ちなしと苦境に喘ぐ中で先発した第28節・レノファ山口FC戦 以降は1トップのスタメンを掴み、勝利に貢献。出番を減らした今季も、先発した試合は7勝2分1敗と高い勝率を記録した。

苦しかったJ2での2年間。前を向くきっかけを取り戻す時には、いつも玉田圭司がいた。今季のシーズン終盤には、「(第27節・横浜FC戦 で三浦知良選手に)36歳でしょ?まだまだじゃん」と言葉をかけられ、「そんな何気ない一言で気持ちが高まった」というエピソードも話してくれた。

契約満了により、来季をJ1でともに戦うことは叶わなくなった。それでも、サッカーに対する意欲、向上心はまったく衰えていない。来季以降も、技術とロマンがたっぷりと詰まったその左足で、見る者を魅了するはずだ。

ライターからひとこと

J1昇格プレーオフ準決勝・京都サンガF.C.戦 の2日前、志願して居残りでシュート練習を行った。J1昇格プレーオフ決勝・ファジアーノ岡山戦 の2日前も、居残りで直接FKを20本蹴った。
「感覚は失いたくないからね」
最後まで刀を研ぎ続ける姿。プロとして偉大な年輪を重ねてきた背中が、そこにはあった。

12月15日。サポーター有志によって開かれた送別会では、100人近くに作られた花道を歩き、拍手で見送られた後、「幸せだね」と照れ笑いを浮かべながらクラブハウスに引き上げてきた。そんな彼に、「2年間、ありがとうございました。J1で一緒に戦いたかったです」と率直に告げると、「そうだね、残念だけど、セレッソのことはこれからも応援しているからさ。それに、またどこかで会えるよ」と笑顔で返してくれた。そこに湿っぽさはなく、屈託のない表情で。

文・小田尚史


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