苦しみながらもJ2リーグを4位で終え、再び挑んだJ1昇格プレーオフ。そして、つかんだJ1への切符…紆余曲折あった2016シーズンを、今年も「セレッソ番」のお三方が振り返ります。前田敏勝さん、和田りつ子さん、小田尚史さんの熱いトークをお楽しみください。 
出席いただいた3記者profile 
2016番記者座談会

ターゲットにされたセレッソ、相手の「分析力」に苦しんだ

前田 (苦しくなった要因は)ホームで勝てなかったこと、それに尽きるのかなと思います。セレッソはホームでは五分に近い成績(9勝5分7敗)でした。アドバンテージのあるホームで勝てなかったのが、すべてだったかなと。加えて、後半戦で上位との直接対決で勝てなかったこと。札幌(第22節)に引き分け、松本(第29節)に負け、清水(第34節)には89分から逆転されて敗れました。あの3戦がこの成績につながってしまったのかなと思います。

第34節の清水戦は痛恨の逆転負け…暗雲が立ち込めた

--夏場からシーズン終盤まで、本当にホームで勝てなかったです。
和田 そうですね。夏場以降ホームで快勝したのは、天皇杯ぐらいですね。
小田 しかも逆転負けが多かったんですよ。
前田 もともとJ2の中でセレッソがターゲットにされていたとはいえ、かなり裸にされたことはチームとしても不本意だったと思います。その対策として、夏場からは3バックにして守備を固めるということも、やってはいたんですけど…。
小田 相手のやることは、はっきりしているんですよね、対セレッソということで。アウェイに乗り込むということで、『自分たちにできるのはこれだ!』とシンプルにやってくる。前半はひたすら耐える。最悪1点取られても耐える。後半、足が多少止まってきたところで…というスカウティングがなされていて、それは試合後に相手の選手が言っていました。いい意味で自分たちが下だと割り切って、チャレンジャースピリットで臨んできた相手に苦戦したのかなという気はします。
前田 セレッソはホームだからこそ圧倒したいというプレッシャーやスタジアムの雰囲気、マイナスのプレーをしたときに悪い雰囲気が出て、『どうしたんだ?』みたいな流れができてきちゃったというのは感じました。
小田 逆にアウェイでは、今年は強かったです(14勝4分3敗)。割り切るというか、アウェイだからやるべきことを淡々とやる、相手が逆にホームだから勇んでくるんだけど、そこをしっかりしのいで。内容が悪くても割り切って勝ちに徹するというか、そのあたりははっきりしていました。


劣勢を覆して勝利をおさめたアウェイの松本戦(第11節)

和田 J2は『分析のリーグ』と言われていて、その分析を踏まえて選手たちは忠実にプレーをします。特にセレッソはかなり研究されて、個の力が強いゆえにレギュラーの11人は相手にすべて分析されていました。逆に、試合中にセレッソにイレギュラーが出る、例えば柿谷選手がケガをして交代したら、相手はその対策ができていないから、いいゲームができました。セレッソには個の力がありますから。ただ、セレッソが勝ったときに相手の監督さんや選手たちが、『個の力で負けたが、チームとしては負けていなかった』というコメントをされていることを見ても、セレッソは個の力があって強い、でもまとまっていないのかな、という印象はありました。
小田 J2の監督さんたちは分析力に長けていて、ホントに百戦錬磨なんですよ(苦笑)。松本の反町康治監督がその筆頭格だと思うんですけど。昨季の金沢や今年の山口は、序盤はよかったけど研究されると厳しくなりました。ホント、分析されるんですよね(苦笑)。セレッソも特に夏場は苦しかったです。
和田 でも、J1昇格プレーオフでは個の対決になった部分があって、セレッソが強さを発揮しました。そこは自信になると思います。

vol.3に続く

【出席いただいた皆さん】

前田敏勝さん(左)
Jリーグ公認ファンサイト「J’sGOAL」のセレッソ大阪担当。セレッソのオフィシャルメディアや雑誌、WEBなどで広くサッカーライターとして活躍を続けている。
和田りつ子さん(中)
元女子1級審判で、スカパー! の中継レポーターの経験も豊富。サッカーの見識、愛情ともに深い“おしゃべり屋さん”。セレッソ大阪堺レディース、ガールズも取材。
小田尚史さん(右)
『エルゴラッソ』のセレッソ大阪担当として、ホーム・アウェイの試合、トレーニングと広く深く取材を続けている。チーム愛に満ちた熱い記事が持ち味の気鋭のライター。
進行・まとめ
横井素子(まいど!セレッソ~マイセレ~編集担当)

2016年12月15日実施