Ｊ１昇格を決めた2016年。選手にとってのこの１年を、日頃から取材を続けてきた番記者ならではの視点で振り返ります。
田中裕介の2016年
セレッソにやってきて２年目のシーズンとなった2016年。田中裕介にとっては、新たなチャレンジの１年にもなった。サイドバックを本職とし、前年も右サイドバックでの奮闘が目立っていたが、2016年に初めて出番がやってきた第６節・ジェフユナイテッド千葉戦 から、背番号５は後方からのフィード力などをかわれて、センターバックの一角を担うことになる。そのなかで、時にはファウル覚悟でも止めにいくなど、身を挺して相手のチャンスを防ぐ場面も見せていったが、シーズン途中の複数失点が続いたときには責任を痛感していた１人だった。それでも、コンビを組む山下達也と頻繁にコミュニケーションを取り合って守備の修正に励み、さらに最終ラインが３バックになったときには、サイドバックの経験を生かして右から積極的に攻撃参加。果敢なオーバーラップでクロスを上げたり、時にはゴール前まで詰めるなど、守備だけでなく、攻撃面でも機転の利くプレーを披露。終盤戦にかけては負傷離脱を強いられ、Ｊ１昇格プレーオフの舞台ではベンチからチームを鼓舞する立場になったものの、「セレッソのユニフォームを着てプレーできる幸せ」を胸に、どんなときもファイトしていた、桜のユースケ。経験に裏打ちされたプロフェッショナリズムを感じさせるプレー、ユーティリティー性は、今季のセレッソを支えていた。
ライターからひとこと
セレッソ加入当初から言っていたのは、「僕は、勝ち試合のときにはあまりコメントを聞かれないが、負け試合のときにはよくコメントを受ける（苦笑）」。こういう形になるのは、取材をする側としては申し訳ない思いなのですが、それだけ田中選手はどんなときも冷静に試合をしっかり分析して言葉にできる、サッカーをよく知る選手の１人だということ。もちろん、勝ち試合でも田中選手のコメントをもっとお届けできるようにしていきたい、そういう思いにもさせてくれる選手でもあります。文・前田敏勝
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