苦しみながらもJ2リーグを4位で終え、再び挑んだJ1昇格プレーオフ。そして、つかんだJ1への切符…紆余曲折あった2016シーズンを、今年も「セレッソ番」のお三方が振り返ります。前田敏勝さん、和田りつ子さん、小田尚史さんの熱いトークをお楽しみください。 
出席いただいた3記者profile 
2016番記者座談会

チームを束ね、コミュニケーションを重視した大熊清監督

前田  今季は最後まで走り続けるとか、相手に走り負けないとか、昨季にでき切れなかったことに始動時から取り組みました。勝負の夏場とかにそれが発揮できたかというと結果には出なかったですけど、いろいろ言われながらも取り組んできたことが、チームに足りなかったものを植え付けることになったかなと感じました。少しずつかもしれないですが、サッカーで戦わないといけないところはココだとか、J2を乗り切るためにはこれが必要なんだというところを積み上げた1年だったのかなと思います。
小田 大熊清監督が強化部長として来られた時からおっしゃっていた、セレッソに足りないもの、最後まで戦うとか、失点しても顔を上げて戦うとか、声の重要性、声を出して鼓舞し合うということを言い続けてこられた結果は、最後のJ1昇格プレーオフで出ました。選手の(プレーオフ決勝の)試合後の倒れ方や涙を見ても、大熊監督が訴え続けたことは絶対プラスになったと思います。来季以降もそういうことは必要だし、ブレずに挑み続けたというのは生きてくるのかなと思います。


J1昇格を勝ち取り、大熊清監督が選手たちの手で胴上げされた

和田 言葉という点では、今まであまりしゃべらなかった選手が言葉を発するようになったり、みんなに勇気を与える言葉を発するようになった。大熊監督の下で選手が成長されたのだなと思います。J1昇格プレーオフのあとに藤本康太選手に聞くと、『大熊監督のお陰で(負傷から)戻って来られました』と話していました。強化担当としての目も持ちながら、選手のケアもされ、声掛けなどもされていたのかなと。それが、バラバラになりかけたチームを1つにすることになったのかなと思いました。
前田 オフィシャルの仕事をしているから、普段よく顔を合わせているからと言われるかもしれないのですが、取材をさせてもらう中で、大熊監督が叩かれるのが解せないというのがありました。’86年のメキシコワールドカップのアルゼンチン代表の話なのですが、『マラドーナやブルチャガなどタレントがいるのにつまらないサッカーをして』と、監督が叩かれました。結果は優勝して『ごめんなさい、監督』みたいなことになって…。今年のセレッソも、リーグ戦4位という結果については、サポーターの皆さんにとって納得いかないもので、改善の余地はあるんでしょうけど、それでも昨季ああいう形でJ1昇格を逃して崩れかけたチームを、個性を束ねながらここまで連れてきた監督の手腕は、戦術とかは抜きにして、もう少し称えられるべきかなと感じました。コミュニケーションについては、スタッフを含めて、昨季の反省を踏まえてかなり気を配られていた気がしました。


チームの強化と現場の指揮、2役を担った大熊清監督

小田 シーズン後に山口蛍選手は、『今季は選手間、選手とスタッフ間の会話が明らかに増えた』というようなことを言っていました。チームの多くのシーンというのは、僕らが目にしない、できないところなのですが、そういう中で気持ちを切らさず前向きな声掛けや雰囲気づくりは1年を通してされたのかなと思います。
和田 セレッソは現場のスタッフが多いですし、U-23もあって選手の数も多いですから、前田さん、小田さんが言われたように、コミュニケーションは大事にされたかと思います。セレッソは昔からコミュニケーションを取るのはうまいチームでした。一時期それがなくなりかけていたのが、今季戻ってきたというか、大熊監督が戻してくださったのかなと思いますね。

vol.4に続く

【出席いただいた皆さん】

前田敏勝さん(左)
Jリーグ公認ファンサイト「J’sGOAL」のセレッソ大阪担当。セレッソのオフィシャルメディアや雑誌、WEBなどで広くサッカーライターとして活躍を続けている。
和田りつ子さん(中)
元女子1級審判で、スカパー! の中継レポーターの経験も豊富。サッカーの見識、愛情ともに深い“おしゃべり屋さん”。セレッソ大阪堺レディース、ガールズも取材。
小田尚史さん(右)
『エルゴラッソ』のセレッソ大阪担当として、ホーム・アウェイの試合、トレーニングと広く深く取材を続けている。チーム愛に満ちた熱い記事が持ち味の気鋭のライター。
進行・まとめ
横井素子(まいど!セレッソ~マイセレ~編集担当)

2016年12月15日実施