苦しみながらもJ2リーグを4位で終え、再び挑んだJ1昇格プレーオフ。そして、つかんだJ1への切符…紆余曲折あった2016シーズンを、今年も「セレッソ番」のお三方が振り返ります。前田敏勝さん、和田りつ子さん、小田尚史さんの熱いトークをお楽しみください。 
出席いただいた3記者profile 
2016番記者座談会

気持ちが伝わってきたアウェイ・山口戦

--2016シーズンのベストゲームについてお話しいただきたいのですが…J1昇格プレーオフは入れましょうか?
小田 今季のベストゲームと言うと、最後の試合(J1昇格プレーオフ決勝・岡山戦 )は全員の一致するところじゃないですかね。
前田・和田 ですね。
--では、レギュラーシーズンのJ2リーグ42試合で印象に残っている試合とその理由をそれぞれあげていだけますか?
小田 現場で取材した感覚で言うと、アウェイの山口戦(第28節)はよかったですね。
和田 私もあの試合、大好きです。テレビ観戦でしたが(笑)
小田 山口戦の前は4試合勝ちなし(1分3敗)で、直前の第27節・横浜FC戦 ではホームで逆転負けして、サポーターの皆さんが試合後にゴール裏に残るというできごとがありました。チームとしては今季で一番しんどい時期だったと思うんです。試合間隔も中3日で、相手は前半戦(第13節)で2-4と大敗 した山口。この試合からDFを3枚にして臨んだんですけど、『絶対に勝つ』という気持ちがすごくこもった、しびれる試合でした。相手にボールを回されてもしっかり守って、先制点を取って追加点も取って、という展開。時期的にすごく暑かったんですけど、感動する試合でしたね、素直に。ジンヒョン選手が頭を丸刈り にしたのも、この試合の前なんです。試合後、完封したけれど笑顔はなかった。でも仕事をしたというか、そんな選手みんなの気持ちが伝わってきました。


気持ちがこもった山口戦。ジンヒョン選手が丸刈り頭にして臨んだ一戦だった

前田 印象的な試合は2つあって、1つは後半戦の長崎とのホームゲーム(第31節)。いい勝ち方でした。玉田圭司選手のクイックスタートからのゴール、終盤の澤上竜二選手のダメ押し点。いい勝ち方で少し道が開けたというか、苦しい夏場を乗り越えたかな、と感じました。
もう1つは引き分けの試合ですが、スタジアムにいろんな意味でホーム感が出たなと感じた第38節・水戸戦 。松田陸選手が相手選手とやりあう感じがあったときに、スタジアムが異様な雰囲気になって、『戦うんだ』『絶対に負けないぞ』という気持ち、闘争心というか、サッカーの本質というようなものがスタジアム全体に広がりました。結局追いつかれて引き分けたんですけど、こういう気持ちの見える試合ができるなら、このチームはまだ落ちないんじゃないかな、という気がしました。
和田 私も一番心に残っているのはアウェイの山口戦です。ゲームというより、個のプレーがすごく印象に残っています。シュートのシーン、ジンヒョン選手の神セーブとか。
ただ、本当の意味でのベストゲームを求めると、今年に関して言えば申し訳ないんですけど「セレッソらしさって何なんだろう」と思ってしまったりもしました。らしくない形で勝った試合、例えばアウェイの松本戦(第11節)なんかは、全然自分たちのペースじゃないけれども、びっくりするようなきれいなゴールが個の力で決まって勝ちました。開幕の町田戦 での山村和也選手のゴール、J2の苦労人・清原翔平選手のゴールとか、個のプレーにしびれるというのが多かった気がします。
小田 ほかには、ホームの岡山戦(第15節)も見ていておもしろかった。ワクワク感は少し感じられました。柿谷曜一朗選手を1トップにして、ブルーノ メネゲウ選手をトップ下に置いて、清原選手が初スタメンという形で臨んだ試合。開始後すぐにソウザ選手がケガをして扇原貴宏選手に交代しましたが、それがいいように回りました。先制されたけど、2点返して…。
和田 イレギュラーがあって、逆にうまくいったというのがあの試合でした。
前田 アウェイの京都戦(第26節)の踏ん張りもすごかった。あれがなかったら、プレーオフには行けなかったんじゃないかと思うぐらいです。

0-3からドローに持ち込んだ京都戦。酒本憲幸選手が気合いを注入した

和田 (秀島弘)寮長がお亡くなりになられた 直後の試合で、杉本健勇選手の魂のゴール、しかも74分に酒本憲幸選手が途中出場してからの3得点というところがすごかった。酒本選手の存在感というのを見せつけましたね。スタートから不遇だった選手が活躍してくれたのはうれしかったです。

vol.5に続く 

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【出席いただいた皆さん】

前田敏勝さん(左)
Jリーグ公認ファンサイト「J’sGOAL」のセレッソ大阪担当。セレッソのオフィシャルメディアや雑誌、WEBなどで広くサッカーライターとして活躍を続けている。
和田りつ子さん(中)
元女子1級審判で、スカパー! の中継レポーターの経験も豊富。サッカーの見識、愛情ともに深い“おしゃべり屋さん”。セレッソ大阪堺レディース、ガールズも取材。
小田尚史さん(右)
『エルゴラッソ』のセレッソ大阪担当として、ホーム・アウェイの試合、トレーニングと広く深く取材を続けている。チーム愛に満ちた熱い記事が持ち味の気鋭のライター。
進行・まとめ
横井素子(まいど!セレッソ~マイセレ~編集担当)

2016年12月15日実施