苦しみながらもJ2リーグを4位で終え、再び挑んだJ1昇格プレーオフ。そして、つかんだJ1への切符…紆余曲折あった2016シーズンを、今年も「セレッソ番」のお三方が振り返ります。前田敏勝さん、和田りつ子さん、小田尚史さんの熱いトークをお楽しみください。 
出席いただいた3記者profile 
2016番記者座談会

活動開始したU-23、その成果は…?

--2016シーズンはU-23が活動を始め、J3リーグに参戦しました。皆さんはJ3の試合も精力的に取材されましたね。
前田 ホームゲームの取材に行っていたのは、ほぼこの3人だけでしたね(笑)
和田 ですね。「安定の3人」と言われていました(笑)
小田 U-23は今年スタートして、いろいろ手探りだったと思いますね、ピッチ外のことも含めて。最初は選手の人数も少なくてケガ人もいて、チームとしてやっていけるのか、というところから始まったじゃないですか。そんな中で、一歩一歩積み重ねていったシーズンなのかな、と感じました。

--気になった選手や、来季はトップで見たいと感じた選手はいましたか?
和田 U-18からの昇格が決まっている森下怜哉選手 斧澤隼輝選手 。今季のU-23でレギュラー的な存在だった2人なので、2017年はトップで見てみたいなと思います。
前田 そうですね。プラスしてストライカーの2人、米澤令衣選手 (※注:座談会のあとにレノファ山口FCへの期限付き移籍が発表された)と岸本武流選手 もトップで見たい選手です。U-23のサッカーは、アカデミーに共通する『チーム全体が走って前から行って、推進力を持ってゴールを狙う』というサッカー。2ケタ得点まではいかなかった(米澤選手は8得点、岸本選手は6得点)ですけど、2人がスイッチを入れて守備もしました。2人でゴールする形も試合経験を通じてどんどん増えてきましたし、貪欲な姿勢もありました。トップチームでは、紅白戦を含めてなかなか出る機会はなかったですけど、思い切って使ってみるのもおもしろいかもと思わせてくれる2人でした。
小田 ずば抜けて安定していたのは木本恭生選手 。中盤で攻守に活躍できる選手です。


「もっとトップで見たかった選手」と評された木本恭生選手。2017シーズンに期待!

和田 木本選手はトップで見たかった気がします。
小田 ただ、トップのボランチの競争は激しいですからね…。今年は終盤に秋山大地選手 が出てきましたけど、木本選手もそれに匹敵するものを持っています。
和田 木本選手は体もある(183cm/74kg)し、大きいので器用に見えないですけど、実はそんなことはない。競れるし、点も取れます。
前田 トップでのデビュー戦(第17節・長崎戦 )で点を取りましたから、持っているなと思いました。

--今、名前を挙げていただいた選手を見ても、各ポジションにいい選手が出てきそうです。
小田 加えて、終盤にグッと伸びたのが沖野将基選手 でした。
前田・和田 そうです、そうです!
小田 最後のほうはホントすごかったです。キレキレの試合もありましたし、これならトップでも…と思いました。何かをつかんだ感じでした。
和田 シーズンが終わるのがもったいないと思いましたね。
前田 あの沖野選手を見て、U-23の存在やJ3に参加した意義を感じました。シーズンを通して試合経験を得たからこそ、ドンと伸びた。最初のころはなかなか持ち味を出せなくて、もどかしい感じがしましたけど。やはり練習試合では得られないものがあったと思います。ほかのJ3クラブからしたら、セレッソ大阪U-23は目の上のたんこぶ的な存在だったかもしれませんが、若い選手が試合経験を積む大切さは、沖野選手を見ていると感じられました。


J3では12位(16チーム中)という結果だったセレッソ大阪U-23。得たものも多かった

和田 U-23は、ホームをきっちりと味方につけていました。ホームゲームで強かったです。プロの世界を体験しながら、サポーターの応援を力に変えているのをすごく感じました。ホームで大分に勝った試合(第10節 )は、私が見た中ではベストゲームだと思いますが、J1を経験したチームに対して臆することなくプレーしていました。フィジカルでは勝てないかもしれないけど、やっているサッカーはピカイチで。ただ、成績に結びつかなかったのはちょっと悔しいなと感じました。同じU-23のFC東京とガンバ大阪に負けてしまったのでも。でも、紅白戦をほとんどせずメンバーもなかなか固まらないなか、技術があるから試合で合わせていけたんだと思います。
前田 大熊裕司監督や高橋大輔コーチは大変だっただろうなと思います。チームをどう試合に向けていくのか、というところの調整は。前半戦は個をいかに伸ばすかに重点を置いたという話をされていました。そういった小さい積み重ねがあって、9月以降に組織としての戦いに切り替えた中で、沖野選手が出だしたり、ホームでも勝利をもぎ取りだしたり、アウェイで3位の長野に勝った(第23節 )りという結果につながりました。その頃には、フィールドプレーヤーはほとんどU-23の選手だけでメンバーを組むようになりました。
和田 シーズン終盤には、庄司朋乃也選手 がトップの試合でベンチ入りするようにもなりましたね。

vol.8に続く

【出席いただいた皆さん】

前田敏勝さん(左)
Jリーグ公認ファンサイト「J’sGOAL」のセレッソ大阪担当。セレッソのオフィシャルメディアや雑誌、WEBなどで広くサッカーライターとして活躍を続けている。
和田りつ子さん(中)
元女子1級審判で、スカパー! の中継レポーターの経験も豊富。サッカーの見識、愛情ともに深い“おしゃべり屋さん”。セレッソ大阪堺レディース、ガールズも取材。
小田尚史さん(右)
『エルゴラッソ』のセレッソ大阪担当として、ホーム・アウェイの試合、トレーニングと広く深く取材を続けている。チーム愛に満ちた熱い記事が持ち味の気鋭のライター。
進行・まとめ
横井素子(まいど!セレッソ~マイセレ~編集担当)

2016年12月15日実施