一見頑固そうでこわもて。実際はとても優しいパウロ・アウトゥオリ監督
 先日、「マイセレ」でインタビューしたパウロ・アウトゥオリ監督(前編後編)。新しい監督に話を聞くときはいつも緊張するのだが、今回は格別だった。就任が決まった当初の「鬼軍曹」というニックネームに加えて、見た感じもこわもて(失礼!)、気難しく話しづらい人ではないかと思っていた。しかし、実際は違った。
 
 このインタビューで私が一番聞きたかったのは、「チームづくりは順調ですか? 今、プロセスでいうとどこまで進んでいますか?」ということだった。4月11日、ツエーゲン金沢と対戦して今季初の敗戦を喫した。次のザスパクサツ群馬戦に向けていかに立て直すか、ということも知りたかった。1つの質問に対して、じっくりと丁寧に、それでいてよどみなく。学者然とした落ち着いた様子と次々に湧き出る言葉に、信念を感じた。真面目に、情熱をもって仕事に取り組んでいるのが伝わってきた。

 時間にして30分弱のインタビューだったが、心に残る言葉が多かった。前半はよかったのに、後半はそれを維持できず、逆に相手の頑張りに押し切られてしまった金沢戦について、「セレッソは昨年、非常に厳しい状況が続いていた。その時に感じたいやな思いをなかなか掻き消せないというのもあるのでは」と分析したこと。苦しみぬいた昨年のトラウマを指摘され、なんとなく腑に落ちる気がした。今年は、この見えない敵とも戦うのかもしれない。

 もっとも心に深くしみこんだのは、「J1に復帰するという結果と、将来に向けたチームづくりを同時に行うのは、困難ではないですか?」という質問に対する答えだった。
「『何でもいいからJ1に上がればいい』ということをすると、逆に時間をロスすることになります」と、きっぱり言い切った後の言葉が鋭く、かつ重かった。
 土台作りをおろそかにしてはいけない。(チームの成績に)波があるのを当然だと思ってはいけない。そして、「我々セレッソが歴史のなかで、どうしてこうなってしまったのかということを、クラブの中で自分たちに問いかけないといけない。問いかけ続けないと同じことを繰り返してしまう」という洞察には、この20年間のすべてをお見通しなのか、と思わされた。

 さらに、個人的にもっとも響いたのは「将来につながるものを今作っているのか?」という言葉。その場しのぎや付け焼き刃では、いずれ化けの皮がはがれてしまうぞ、しっかり真面目に日々の仕事をしなさい、それも将来につながることを…と諭されているような気持ちになった。

「チームづくりは順調である。少なくとも後退はしていない」という監督の言葉に安堵し、見守ったザスパクサツ群馬戦は、不覚をとった。悔しかった。負けたから、だけではない。せっかく順調にチームづくりをしてきたのに、それを発揮できなかったのがもどかしいのだ。まだ足りない何か、潜在的には持っているはずなのに発揮しきれていないのが悔しい。
 しかし、試合は待ってくれず、早くも明日(26日)はカマタマーレ讃岐戦がやってくる。気持ちを奮い立たせ、再び前へ進まなければならない。

 讃岐戦といえば、相手クラブに提供いただいた「イベント&スタジアムグルメ情報」が素敵だ。おもてなしの精神がちりばめられたインフォメーションに感服。そして、スタグルがまたおいしそう。丸亀に行かれる皆さん、どうぞ堪能して来てください。そして、お土産はぜひ勝点3を!

 丸亀に行かない(行けない)私は、こちらで仕事の予定。セレッソ大阪堺レディースが開幕4連勝のかかった大事な一戦に臨む。「さくらなでしこ」の頑張りも、機会があればご覧いただきたいもの。絶対ハマりますよ~!

文・横井素子


◆横井素子 プロフィール
奈良県奈良市生まれ。広告代理店勤務のあと、フリーランスの編集・ライターとしてセレッソ大阪の広報ツールの制作などに携わる。
1999~2000、2008~2011年はセレッソ大阪トップチーム広報担当、現在はセレッソ大阪堺レディース広報担当、セレッソ大阪公式ファンサイト編集責任者を務める。


◆「セレッソ・アイデンティティ 育成型クラブが歩んできた20年」(幻冬舎)
セレッソ大阪の全面協力を得て制作された、チーム創立20周年記念書籍。
香川真司、乾貴士、清武弘嗣、そして柿谷曜一朗。日本屈指のタレントがセレッソから続々と輩出されるのはなぜか。それぞれに独占インタビューを敢行し、セレッソ大阪のヒミツに迫る。
・価 格:1,400円+税
・著 者:横井素子
・発 行:幻冬舎
・発売日:2013年12月12日
amazonで購入