森島さん以上に、
愛してもらえるように

 2014年7月の涙の別れから1年半。柿谷曜一朗が、背番号8が、セレッソ大阪に戻ってきた。
誰もが待っていた今回の復帰。スイスでの経験、決断の理由、チームに合流した心境、クラブへの思い、今シーズンに懸ける意気ごみ…すべてを本音で語った。
Vol.13【前編】よりつづく


■セレッソを離れて、あらためて自分の目標を見つけたという感じですか?
「目標は、ずっと見えてた、わかってたんだけど、やりたいことがある、だからどうしよう、どうするのがいいのかなと迷ったりする時もありました。自分で勘違いしていた時もあったと思います。8番を着けて活躍をして、そのさらに上を目指さないといけなかったのに、例えばワールドカップに気持ちがいったり、セレッソの8番としてやることだけを考えていた時期と比べると、変なプレッシャーを感じることもありました。そういうことも全部含めて、自分が責任を持って、プライドを持ってやれるのが、やっぱりここだけやなって思えたんです。
 自分ももう若くない、今年26歳になりました。若い選手がいっぱい入ってきて、そういう選手たちに、セレッソでやるということはどういうことなのか、セレッソには8番だけじゃない、選手からもサポーターからも大事にされている番号があるんやぞ、ということは、(着けている)本人がいないと伝わらへんと思う。セレッソに来てくれるベテランの人たちは、それぞれ思いがあって来てくれただろうけど、ここからスタートする選手、育成からやっている選手には、自分が身をもってわからせたいなという思いがあります。まっだまだ、お前らじゃ甘いぞっていうのを、自分が若い選手に示していかないとアカンなと思っています」

■今回の移籍は、セレッソに根を下ろしてやり抜く、サッカーを辞めるまで、ずっとセレッソの8番を着けるという決意ととらえていいですか?
「もちろん!ずっと、セレッソが8番を背負わせてくれてたらいいですけど…それは自分が決めることじゃないけど、その覚悟もあるし自信もある。もう、2度目はないと思っています。一度8番を脱いで、もう一回8番を着ける。ほかの人には意味がわからんかもしれないけど、どれだけ自分が着けたくて8番を着けたのかというのを、この1年半でまた一段と強く思いました」

■2013年の1度目に着けたときとは、また違う重みを感じますか?
「はい。前は『よっしゃ8番や、俺はいろんな人にサポートしてもらうんや~。カッコええなぁ』と純粋に喜んでいましたけど、今はちょっと違います。8番はセレッソのもので、森島さんが築き上げたもの。ただ、森島さんよりサポーターに愛されるようになりたいという思いも、その自信もあります。男女問わず、森島さん以上にサポーターに愛してもらえるようになる。それが自分のやることだって、ホンマにはっきりしています、サッカーで結果を残す以外に。結果を残すことなんて当たり前やと思っています。結果を残してサポーターに認められるのは当然のことで、それ以外のチーム内のことや、何でも前に出て、となると厚かましいかと思うので、引くところは引くけど、しっかりやっていきたいと思います」

■サポーターの皆さんも、みんな復帰を喜んでくれていると思います。
「そうですかね…自分では、半々やったらいいほうじゃないかなと思っています。『帰ってくるんやったら、責任持ってずっとおれよ』と言う人もいるだろうし、『何しに行ったんや』と思う人もいるやろうし、『セレッソの8番を自分から脱いどいて、どうやねん』と言う人もいると思います。ただただ帰ってきたことについて素直に喜んでくれている人は少ないと思っていますけど、何を言われようと俺がセレッソの8番やし、セレッソの8番について来られへんなら、セレッソのサポーターはやらなくていいと思う…自分はそれだけの覚悟を持ってやる。だから、一緒に戦ってほしいです」

■今シーズン、J2を戦う上での意気ごみを。
「以前と比べて、J2のレベルはメチャクチャ上がっていると思います。どのチームのサポーターも熱心ですし。相手は100%、うちとやるときは目の色を変えてやってくる。でも、自信を持ってやれば、何も怖がることはない。相手は、セレッソより走るとか、そういうところは心がけてやってくると思うけど、いくら走っても負けるときは負ける。いくらシュート打っても入らんかったら負ける、そう思います。何でもいいからJ1に上がる、もちろんそれも大事かもしれへんけど、俺は強いセレッソを作っていきたい。もう2度とJ2に戻らないようにしたいなら、チームとしてやり通すことが大事やと思います。相手が守ってきているから、ボールを蹴ってそれで勝って勝点を積み重ねるのはいいと思うけど、そうならないうちに敵を仕留められるように、1点取ったら2点目、1点2点取られても3点取ったらいい、そういう戦いがしたい。1点取りに行っているから、1点取られることは何も気にしなくていい。J2では、セットプレー事故みたいなゴールは多いし、昔から。自分たちの力を信じてやれば、100%大丈夫。自信を持ってやるべきやと思います。
 今年何が何でもJ1に上がることは絶対やけど、そんなちっさい目標じゃなくて、広島みたいに、ガンバみたいに、常にACL(AFCチャンピオンズリーグ)に出て、アジアでも大きなクラブになっていって…それができるチームだと思うし、それがもう1回セレッソがもっと価値あるクラブになる条件やと思います。まず第1ステップとして、今年1年でJ1に上がって、みんなで喜んで1年を締めくくれるようにしたいです」

構成・文 横井素子
インタビュー:1月19日