セレッソ大阪の丸岡満として、
しっかりやる
17歳で日本からドイツに渡った丸岡満。2年間ボルシア・ドルトムントでプレーし、今シーズン復帰を果たした。U-18時代から慣れ親しんだ舞洲で、ブランクを感じさせない笑顔を見せる背番号13。ドイツでも抜群の順応力で環境に溶け込んでいたという彼の、新しい挑戦が始まっている。
■舞洲でトレーニングするのは、久しぶりですね。
「高校時代以来です。高2と高3のときは、ここで練習していました。久しぶりですが、周りの人たちがみんないい人なので、問題ないです。あとはサッカーで信頼を得られるようにしないといけないです。これからキャンプを通じてしっかりやっていきます!」
■期限付き移籍の契約期間はまだ残っていましたが、このタイミングで戻ってきた理由は?
「セレッソも(Jリーグの) シーズンが終わりましたし、今から1年通して、新しいシーズンを戦うということで、いいきっかけかなと思いました。ドルトムントのセカンドチーム(U-23)でずっとやっていましたけど、トップチームではなかったので、プロとしてやっていく上で、プロとして試合を重ねるということも大事だなという思いもありました。
まだ(ドルトムントに)残りたい、という気持ちもありましたが、セレッソをJ2からJ1に上げたいという思いもあり、決めました。話し合いの中で、セレッソが評価してくれたこと、期待されていることを聞きましたし、チームに必要とされたことが帰ってきた一番の理由です。自分自身、2年間の成長について自信を持っていますし、とにかくチームのために頑張りたい。自分自身の結果よりも、セレッソのために…そんな気持ちで戻ってきたつもりです。今年はオリンピックもありますし、Jリーグでプレーすることによって、見てもらえるチャンスも増えるという思いもあります」
■2年間のドイツでの生活はどうでしたか?
「超楽しかったです。充実していました。17歳の時に1人で行って、英語もドイツ語もしゃべれない状態で、空港(の入国審査)では言葉がわからないから、聞かれてもちゃんと説明できなくて怪しまれて…そんなこともありました(笑)。最初の3カ月間はホテルに住んでいたので、窮屈な思いもしました。でも、慣れない環境の中で、すべて1人で打開してきたことで、成長できたという思いはあります。通訳に付いてもらったのは、初めの2カ月間だけ。どうしても頼ってしまうので、自分から断りました。半年後に真司くん(香川真司選手)が来ましたが、それまでは1人です。アジア人はヨーロッパの選手からしたらやっぱり下に見られているし、自分からボールを呼ばないと来ない。結果を残さないとボールは来ないです。そういう厳しい中でずっとやっていて、クロップ監督の時にはトップチームのキャンプに呼んでもらうこともできました。そこでしっかり結果を出すこともできて、何度かトップの試合のベンチに入り、1試合出場することもできました。日本人の最年少出場記録も作りました。ドルトムントの8万人のホームスタジアムの雰囲気も味わいましたし、マルコ・ロイス選手や香川真司選手など、世界のトップの選手と体をぶつけ合って、あのスピードの中、あの体格の選手たちの中でずっとやってきたことは自信になっています。周りから見たら『試合に出ていない』という評価になるかもしれないですけど、僕だけしか感じられないものはしっかり自分の中に吸収しています。でも、今からはドルトムントの丸岡満ではなく、セレッソ大阪の丸岡満として、しっかり切り替えて、セレッソのためにやるという気持ち、それだけです」
■ドイツの生活で、一番つらかったことは何ですか?
「まず、言葉がしゃべれないから、自分の思いが伝えられないのがつらかったです。モノがあったらいいんですよ。たとえば食事に行って、チキンがあったら、『this、this、これ焼いてくれ』みたいな感じで(笑)。チームでも、伝えるというのはホントに難しかったです。まずサッカーで信頼を得ないと、チームに溶け込むのは難しかったですね。ただ、トップチームのキャンプに行った時に、新加入選手は全員一発芸みたいなのをするんです。コロンビアから来た選手はコロンビアのダンスを踊ったり、イタリアの選手はイタリアの歌を歌ったり。僕は『カンナムスタイル』っていうダンスを踊ったんです。そしたら、全員がドッカーン!と来て、大ウケでした(笑)。マルコ・ロイス選手も、オーバメヤン選手も、全員が動画を撮っていました。それぐらい受けたんです。それからは、『コイツおもろい奴や』ってなって、チームメイトからは『キャプテン、キャプテン』って呼ばれていました。その時はまだキャプテンが決まっていなかったので、『お前がキャプテンでいいやろ』みたいな感じでいじられてました(笑)。そのあとで、キャプテンはマッツ・フンメルス選手に決まったんですけどね。プライベートで近づくことで、少しでも溶け込めるというか、やっぱりコミュニケーションは大事だなと思いました。だから、今年セレッソに入ってきたブラジル人にも、自分からあいさつに行って、コミュニケーションを取っています。なんとなく気持ちもわかるので」
■ドイツ語はできるようになりましたか?
「日常会話ぐらいなら大丈夫です。英語はリスニングだけはできたので、最後は英語でドイツ語を習っていました。英語はしゃべれるけどドイツ語ができないチームメイトがいたので、その選手たちと一緒に。結構レベルの高い練習会でした。週に3回、1時間ずつ勉強していました。ドイツ人の監督は、やっぱり言葉をしっかり話せるようになってくれと求めてきます。大事なことだと思いました」
■ドルトムントのサッカーについてはどうでしたか?
「すごくレベルは高かったです。川崎フロンターレとの試合(2015年7月7日@等々力)を見てもらったかと思うんですけど、6-0という結果でした。強いですし、迫力もすごいです。ただ単に数字じゃなくて、勝つ喜び、勝利へのこだわりをドイツで学びました。僕もまず勝つことを優先したいと思います」
■セレッソでの先輩でもある香川真司選手とも一緒でした。
「僕、面識はなかったんですよ。以前、セレッソの寮に真司くんが遊びに来た時に『サインください、写真撮ってください』って言っていたんですから。その時の写真を見せたら、メッチャ受けてましたけど(笑)。ドルトムントに真司くんが来るってわかった日は、練習場に行って出迎えました。吉田麻也選手や内田(篤人)選手とサプライズで食事会を計画していて、僕が真司くんを誘う役だったんです。でも、初対面の後輩にいきなり誘われて、真司くんは『ハァ?』ってなっていました(笑)。事情を説明して来てもらったんですけど、そこからは毎日のようにごはんに誘ってもらって、いつも一緒でした。1週間に5日は一緒にいましたね。試合の日と前泊の日以外は(笑)。実際に会った真司くんは、テレビで見るのと同じ、好青年って感じでした。けど、おもしろさも兼ね備えた人でした(笑)。プレーは超うまかったです。ドルトムントの中でも輝いていました。真司くんとは、フロンターレ戦も一緒に出て、そのあとのマレーシアの試合も一緒に出ました」
■ドイツではいい経験をしたと思いますか?
「行ってよかったです。だから、そういうチャンスがあるなら、ほかの選手にも行ってほしいと思います。自分に強い決断があるなら、ですけど。決断とか、責任とか、自信とかは必要です。でも、間違いなく成長できると思います」
Vol.15【後編】につづく
構成・文 横井素子
インタビュー:1月15日