どんな相手にも勝てる、
というものを作りたい

「今年は必ずJ1へ」を掲げた2016シーズン。大熊清監督が就任、充実の新戦力を得て、チームが始動して約1カ月が経った。
 タイキャンプ、宮崎キャンプでの調整具合は?新戦力はフィットしているのか?開幕戦の先発メンバーは?新キャプテンに求めるものとは…?
 キャンプ地・宮崎で聞いた、指揮官への開幕直前インタビュー。
Vol.16【前編】よりつづく


■始動から約1カ月、J2開幕を控えて手応えは?
「手応えはありますね。だけど、相手も変化し努力している。それにいつも言っていますけど、セレッソに対してはどのチームも120%の試合をしてきます。我々が100%でやっていても、サッカーは攻めていても1本のFKでやられるときもある。内容で判定勝ち、ということもない。1試合1試合で相手を本当に凌駕していくためには、まだやらなければいけないところはあります。
 ここまでの練習試合では、結果的にバンコクグラス戦(0-1で敗戦)以外は、劣勢の中で戦うというのがなくて、主導権を握れている試合が多いんです。今後は、もう少し課題を明確にして、負けているシチュエーションでどうプレーするかとか、時間帯によってのプレーをもう少し精査して…ということをやりたい。そこを最後の詰めとしてやっていこうと思っています」

■かなり入念に準備をすることになります。
「入念にやっても、さらにイレギュラーがあるのがサッカーなので、選手たちに言っているのは、『監督やコーチは事後の指摘や導きになるけれど、ゲームのなかで自分たち自身で変える力を養えれば、かなり変幻自在に対応できる』ということです。
 福岡との練習試合 は4-0で勝っていて、1失点したけれど、それを防ぐ術を彼らは持っている。選手たちがもうちょっと修正をする、お互いに声はだんだん出てきているんだけど、察知能力やゲームの中での修正能力というのを出していってほしい。それができるだけの経験があり、人材は揃っていると思います。そういうチームが常勝チームになっているので…そこですね。ヒントを与えて、自分たちの気づきでできるように近づけたい。ただ、少しそういう雰囲気は出てきているかなと思います」

■今年のキャプテンですが、どういう選手を選びたいと考えていますか?
「セレッソを本当に愛していて、あとはブレない選手だということ。そこだと思っています、キャプテンというものは。そして、11人のキャプテンではないということですね。今年は、U-23を合せると39人、2種登録の選手を合わせるともっと多くなります。その全員に目を配るというか、キャプテンの行動、言動はそこまで影響力があると思います。さらに広く、セレッソのアカデミーを目指している子どもたちにも影響を与える。非常に深く広くみんなのことを考えて、決めたことや覚悟したことに対してブレないでいてくれる、というのがキャプテンにとって重要なのかなと思います。新加入選手でもいいんですけど、プレッシャーになるかもということも考えると、セレッソの遺伝子を知っている選手がいいのかな、と。
 また経験上で言うと、キャプテンになったことがプレッシャーになった選手もいるので、副キャプテンの人数は増やしたいと思います。大所帯でもあるし、いろいろな立場でサポートをできるような選手、ベテランとか、また違う立場の選手を副キャプテンにして、クリアしたいです。キャプテンはまだ決まっていませんが、だいたい頭にはあるので、明日(2月17日)の夜に伝えて、18日のプレスカンファレンスに行ってもらおうと思っています」
プレスカンファレンスでの柿谷曜一朗選手

■開幕のスターティングメンバーは、もう頭の中にありますか?
「そうですね、ありますね。選手に関しては、競争も必要だけれど(メンバーを決めないと)わかりづらくなるというのもあるし、タイでもそれだけの競争をやってチャンスも与えてきました。正直、差も出てきていますし、特徴もわかってきている。スタッフとも相談しながら何カ所かの微調整はしたいと思いますが、もう(開幕戦のメンバーは)描いています」

■開幕戦は、アウェイでの町田戦 です。スタートダッシュが期待されるなか、チケットの売れ行きも好調で、非常に盛り上がっているようです。
「お客さんもかなり入るみたいですね。ただ我々は、冷静にどういうサッカーをすることで相手を凌駕できるのか、そういう心のよりどころとか積み重ねが大切だと考えています。気持ちと同時に、サッカーのスタイルをしっかり持って、気持ちの上で受けて立たないということは、昨年の経験から必要だと本当に感じます。気持ちの強さと過信にならない自信、これをやれば自分たちはどんな相手にも勝てる、というものを作ることは必要だと思っています。そのあたりを含めて、どうにか残りの期間でいい準備をしたいと思います」

■これをやれば勝てる、というよりどころのようなものは、昨年の戦いからも必要だと思いますが、現時点でかなりできてきているのでしょうか?
「そうですね。選手の表情を見るとわかりますが、それがいつもオールマイティーにできるのか、相手がまた工夫するなかで、相手の弱点だったり、90分・100分あるなかの時間の使い方とかを考えてできるのかどうか。あとは、味方の特長を理解する、特長をリスペクトする、信用してやるというのは重要かなと思います。信用すれば周りにはやってくれる選手がいる、たとえば『きちっと気持ちを含めてアシストしてやれば、前の選手は点を決めてくれるんだ』とか、逆に『前の選手はミスしたら自分自身で追ってくれるんだ』というのを後ろの選手が信じる。それをやり続ければ、絶対に相手は隙を作る、その力を持っていると思います。ただ、その助け合いがなかったときには、たくさん隙が出てくるのがサッカー。その隙が100分間まったくないというのはすごく難しいけれど、そこを少なくしていくのが、今後さらに必要なのかなと思っています」

構成・文 横井素子
インタビュー:2月16日