5月22日(日)2016明治安田生命J2リーグ第14節
横浜FC - セレッソ大阪 (16:00KICK OFF/ニッパツ)
試合写真・コメントなど チケット
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 開幕3連敗と最悪のスタートを切った横浜FC。その心労による体調不良で、ミロシュ ルス監督が一時入院(2試合を欠場)したが、それ以来チームは6試合負けなし(4勝2分)で中位に浮上した。もちろんルス監督が病院で名監督になる手術を受けたり薬をもらってきたわけではなく、単純に2つの要因がある。

 まず1つは、守備のやり方を変えたこと。_プレシーズンから守備ラインを高くして前から奪いに行く守備に取り組んだが、プレシーズンの練習試合は惨憺たる内容。第2節・松本戦でも最終ラインの裏を突かれてあっさり失点したことで、第3節・千葉戦から思い切って守備ラインを下げ、「自陣に引き込んでボールを奪う守備(寺田紳一)」に変えた。最終的には、千葉戦でも船山貴之のスーパーボレーにこじ開けられて敗れてしまったが、続く第4節・山口戦、第5節・愛媛戦を完封で終えたことでチームは守備に自信を深めた。今や、「粘り強く守り、できるだけ失点ゼロの時間を長くすることが自分たちの戦い方(渋谷飛翔)」だという意識で全員がまとまっている。

 もちろんサッカーだから点を取らないと勝てないし、ボールを奪いに行くというよりもゴールを割らせないための守備はつらいものだ。それでも、その戦い方ができるのは前線のイバの存在が大きい。開幕後に加入し、第2節からデビューした大型FWがフィットしてきたことが、横浜FCが立ち直ったもう1つの要因となっている。190cmの長身に88kgと横幅もあり、母国ノルウェーや中国で活躍しただけに当たり負けしない。左足の強烈なシュートに加えて、フットサル代表の経歴もあるように足元も巧みで、ラストパスを出す能力もある。前線でイバが相手を引きつけ、ボールを収めることで、2列目の小野瀬康介や野村直輝が攻撃に絡む時間を作る。横浜FCの全16得点のうち、FWが10得点、2列目が5得点を挙げていることからも、いかに堅守から効率よくゴールを奪っているかがわかるだろう。

 ただ、現状は粘り強く守って焦れた相手の隙を突く戦い方しかできないため、「先制されると苦しくなる(佐藤謙介)」のも事実。第11節・岡山戦、そして前節・群馬戦でも、先制されるとバランスを崩し、追加点を奪われて敗れている。
 どこが相手であろうと「とにかく先に失点しないこと(渋谷)」が前提という現状だが、今回の対戦相手は強力な個のタレントを誇るセレッソ、「一瞬の隙も与えることはできない(市村篤司)」。堅守をベースに無敗を続けていたときでさえも、選手たちの口からは「守備はまだまだ。セレッソみたいな相手だとどうなるか」という声が聞こえていた。引き込んで守る守備だけに、基本的に相手に押し込まれる時間が長く、危険なところにボールが入る回数も多い。最後のところで体を張る、もしくは相手のミスに助けられることで失点は少なかったが、そこをこじ開けるスーパーな個人技に対する恐怖心は当然ある。柿谷曜一朗を筆頭に、それを持つ選手が並ぶセレッソをゼロで抑え続けるのは容易でないだろう。しかし同時に、「焦れてくれば前がかりになってカウンターでやられる脆さもある(佐藤)」という、横浜FCの戦い方がハマりやすい相手でもある。

 プレシーズンの宮崎キャンプで行った練習試合は、45分を4本戦って1-7の大敗 を喫した。横浜FCはそこから紆余曲折を経てチームとしての戦い方を確立してきたが、戦術や連携よりも個の能力を前面に押し出すセレッソの戦い方は「あまり変わってないのかな(寺田)」と見える。練習試合に“借りを返す”といった意識はないだろうが、横浜FCにとってはチームとしての成長を測る意味で負けられない一戦だ。

文・芥川和久