6月26日(日)2016明治安田生命J2リーグ第20節
セレッソ大阪 - 東京ヴェルディ (19:00KICK OFF/金鳥スタ)
試合写真・コメントなど チケット
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 東京ヴェルディにとって、セレッソ大阪は、必ず倒さなければならない相手である。
 昨季最終戦。7位の東京Vは、6位のV・ファーレン長崎と勝点差2と、J1昇格プレーオフ進出の可能性を残していた。そこで迎えた相手が、サクラ軍団だったのだ。長崎の結果次第ではあったが、東京Vは“一戦必勝”を絶対条件とし、トレーニングもメンタルも、チームも個々も最善の準備をして挑んだ。しかし、結果は茂庭照幸選手の2ゴールで0-2の完敗 。4位でJ1昇格プレーオフ進出を果たしたセレッソに対し、J1に行くためにはまだ力不足だったことを認めざるを得なかった。

 そして、リベンジの時が来た。
「去年の最終戦は忘れていない」と、誰よりも雪辱に燃えるのが冨樫剛一監督だ。「あの悔しさがあったから、僕は今年も監督をやっている。J1に行けていたら、続けていなかったと思う」自らの人生を左右したほど、影響力のあった一戦だったと明かす。さらに、「僕だけではなく、選手たちも、サポーターも、あの時に辿りつけなかったものがあるからこそ、『もっとやれるはず』だと、順位がなかなか上がらない中でも強い気持ちをもってここまでやってこれていると思う」と、同監督。昨季越えられなかった壁を乗り越え、今後の巻き返しを胸に期す。

 チームは現在17位と下位に沈むが、前々節・千葉戦では2点ビハインドから同点に追いつき、前節・京都戦は逆転勝利。「特にゲーム終盤でのミスが減り、距離感よく自分たちの時間が作れるようになってきた」と、指揮官も手応えを口にする。また、複数得点ができるようになってきたことで、選手たちの積極性が向上しているのも確かだ。アグレッシブにシュートを狙い、「そのシュートが誰かにぶつかって角度が変わったところを押し込むとか、ラッキーな形でのゴールが生まれている。それに、セットプレーでの得点が増えていることも、去年とは違うところ」だと、中後雅喜。良い流れで強敵に挑めそうだ。

 そしてもう1人、この試合を非常に楽しみにしている選手がいる。杉本竜士である。「健勇君がいるからね!」と、プライベートでも親交深い大親友との初マッチアップを前に満面の笑みを見せる。
 杉本健勇といえば、東京Vサポーターにとっても忘れられない選手の1人ではないだろうか。2012年、わずか3カ月のみだったが、出場機会を求めて期限付き移籍で加入し、18試合出場5得点と活躍した。そして、念願のロンドン五輪代表切符を勝ち取り、華々しく去っていった、いわば“超助っ人”的存在だった。
 その姿に憧れ、今なお「良きアニキ」と慕う杉本竜士は、熱く語った。
「あの頃は、僕が試合に出られなかったから、初めて同じピッチに立てることが純粋にうれしくてたまらない。健勇君は、すべてにおいて僕にないものを持っているから、試合中もめちゃくちゃ勉強になるんだろうなと思う」
 当時、「雲の上の存在」とまで評し、公私にわたって必死に追いつこうと無理をし、自分を見失っていた杉本竜士はもういない。ようやく同じフィールドに立てた今こそ、自らの成長を実感できるチャンス。真剣勝負で体をぶつけ合い、プレーで、そして結果で『杉本健勇超え』を目指す。

 今季4勝のうち、札幌・清水・京都と3勝が上位陣と、“ヒールぶり”を発揮している東京V。現在2位のセレッソは、まさに『大好物』。選手たちがいつも以上にテンションが上がっていることは間違いない。昨季最終戦で体感したピンクに染まったキンチョウスタジアムを、今節はため息で静まり返らせるところを想像し、冨樫監督は不敵に笑う。「見に来た人に『ヴェルディ、こんなに牙向いてきてる』と思わせるような、襲い掛かる、印象に残るゲームがしたい」。心残りなくJ1昇格を果たすためにも、セレッソに勝つことは、東京Vにとって今季最大の至上命題なのである。

文・上岡真里江