3月18日(土)2017明治安田生命J1リーグ第4節
セレッソ大阪 - サガン鳥栖 (15:00KICK OFF/金鳥スタ)
試合写真・コメントなど チケット
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 1973年2月16日韓国の光州市で生まれ。1995年からKリーグで活躍し、2000年からはセレッソ大阪でプレーしたワールドカップ韓国代表にも選ばれたMFと言えば、セレッソサポーターならば簡単にその名前を答えることができるだろう。
 2006年から2年間はサガン鳥栖でプレーし、翌年から指導者へと転身した。2011年からは監督として鳥栖を指揮し、その年に鳥栖をクラブ史上最高位(J2)の2位に導き、J1昇格を決めた。と、ここまでヒントが続くと、セレッソサポーターだけではなく、鳥栖サポーターにも答えが導き出せるに違いない。
 尹晶煥。セレッソでも鳥栖でもレジェンドの1人に挙げられる選手であり、現在はセレッソ監督である。

 ただ、それだけならばこのコラムを書くはずがない。彼は、2014年8月に鳥栖監督を電撃的に解任されたのである。しかもその時、鳥栖はJ1で首位だった。解任の真相はいまだに語りつくされてはいないが、鳥栖での功績を考えると今節の試合は否が応でも『尹晶煥監督』に注目が集まってしまう。
『尹晶煥監督のリベンジなるか…』『鳥栖でもレジェンドとはいえ、今はセレッソの監督だから…』などと周囲からの声も聞かれる。この試合の結果を伝える見出しは、こぞって『尹晶煥監督』が主語になっているに違いない(と、筆者は予想しています)。

 そんな周囲の思いとは裏腹に、鳥栖の選手たちは意外と冷静である。ある選手は、『確かに尹さんと会えるのはうれしいけど、尹さんと戦うわけではない。鳥栖としてセレッソと戦い、勝点3を持って帰るだけ』と語る。

 この言葉を聞いて、あることを思い出した。それは、尹さん(あえて、ここでは“さん”付けで書かせていただきます)が現役を引退して指導者としての道を歩み始めた直後のことだった。練習後に筆者と2人きりになったとき、サッカーについていろいろと語り合ったことがある。そのとき、尹さんから聞いたことの1つが『サッカーは、システムや名前で戦うわけではなく、選手同士が目の前の争点に勝つことで勝利する』というものがあった。そして、『理想のサッカーはあるけど、現状で最強の力を導き出すのが指導者の仕事』とも…。
 この考え方があってこそ、当時の鳥栖をJ1に導き、一時は首位に立つ躍進を見せてくれたのだった。そして、この考え方は鳥栖の中に今も残るものなのではないだろうか。だからこそ、前述の選手の言葉があったのだと思われる。

 今は、セレッソを率いる尹さん。尹さんの残したものが今でも鳥栖で息づいている限り、今節も簡単な試合にはならないだろう。

文・サカクラゲン/サッカージャーナリスト