9月20日(水)第97回天皇杯4回戦(ラウンド16)
セレッソ大阪 - 名古屋グランパス (19:00KICK OFF/パロ瑞穂)
試合写真・コメントなど チケット
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 1年でのJ1復帰を目指して戦う名古屋グランパスの今シーズンは、現状ではなかなか厳しい戦いを強いられている。8月には5連勝を記録し自動昇格圏内に肉薄した名古屋だったが、それ以降の4試合で1分3敗と勝ち星がない。直近の第33節では19位だった金沢に1-3で敗れる失態を演じ、サポーターからもブーイングが飛んだ。
 セレッソ大阪と天皇杯での対戦が決まった際には「力試し」という言葉も聞かれたが、J1昇格プレーオフ圏内ギリギリの6位に順位を落とした今は、そうも言っていられる状態ではない。

 しかしながら風間八宏監督は相手によって何かを変える監督ではなく、むしろ自分たちらしさで相手の良さを出させないことを考える指揮官だ。ショートパスとポゼッション、そしてゴールへのいくつものアプローチを駆使して相手ペナルティーエリアを攻略するサッカーは、就任からの約8カ月を経て1つの形になっており、田口泰士や小林裕紀ら実力者の奮闘と青木亮太ら若手の覚醒によっても、その威力は増している。パス交換とラインブレイクのバランスが取れた時の攻撃力はJ1チームとも見劣りしないことは間違いなく、その意味でも今回の対戦は楽しみな部分がある。

 ただし、現在の中心メンバーが途中加入選手であり、彼らの登録が天皇杯では次戦の準々決勝からになることで、そうした期待感はややトーンダウンするところもある。特にJ2でナンバーワンのクオリティーを誇るガブリエル シャビエルが使えないのは戦力的に大きな痛手で、夏の移籍で放出した7名の選手が欠けていることもあり、実はこの4回戦に対する名古屋の戦力は乏しいと言わざるを得ないのが現実だ。数えてみれば負傷欠場中の八反田康平と、もともと登録枠から外れていた3人の新人を除けば、使えるフィールドプレーヤーは17人。ベンチを外れるのはたった1名という状況と、リーグ戦から中2日というタイミングを踏まえて、指揮官がどのような手を打ってくるかは未知数で、まさしく総力戦といった雰囲気が名古屋のクラブハウスには漂っている。 

 活躍が期待される、というより期待したいのはやはり古巣対戦となる2名の選手だ。昨季まで2シーズンをセレッソでプレーした玉田圭司はスタメン起用の可能性も高く、本人のコンディションも上々。「楽しみだよね。昨季まで一緒にやっていた選手たちも多いし、みんな本当にレベルが高くて楽しかった。そのメンバーが半年経って、どういうふうになっているかを見るのも楽しみだし、今のウチがJ1とやってどうなるのかを見るのも楽しみ」と、セレッソとの対戦を心待ちにしていた。
 玉田が挙げる要注意人物は杉本健勇。「代表に入ったし、センターFWで固定されて『お前が点を取るんだ』って期待に応えている」と、この半年での成長を認めている。彼以外にもキーパーソンはたくさんいると玉田。自らもまた、名古屋に戻ってからの変化をかつての仲間に見せたいだろう。

 そしてもう1人、永井龍の意気込みも熱い。中学生年代からプロ昇格を成し遂げ、その後も多くの時間を過ごしてきたチームは、彼にとっては「他と比べられない特別なクラブ」だ。おもしろいことに、今回の天皇杯4回戦のドローを前に、永井は運命のようなものを感じていたと言う。
「なにか、セレッソが来るんちゃうかなー、って思ってたんですよ。そうしたら本当に来て(笑)。予感があったんです」。古巣との絆を感じるエピソードだが、「決まった瞬間には『ホンマに来た!』って驚きましたけどね」と本音もポロリ。
 こうした関西人らしい茶目っ気や明るいキャラクターは、名古屋でも内外を問わず愛されている。彼が楽しみにするのは、公私ともに仲の良かったアカデミー出身選手たちとの対戦だ。「健勇が1つ下で、1つ上に山口蛍と丸橋、その上に柿谷。特に健勇とはチームでも代表でも2トップを組んでいたので、アイツの代表入りは刺激になっています」
 永井もこのところコンディションを上げてきており、日曜日の金沢戦ではスタメンに復帰。残るシーズンに勢いをつけるためにも、ここで目覚めの一撃を叩き込んでおきたいところでもある。

 風間監督は「1つひとつやるだけ」とこの戦いをことさらには特別視していないが、元来がこの上ない負けず嫌いである。J1にも通用するサッカーだと証明するためにも、心中では闘争心がたぎっているに違いない。
 ここから1つの負けも許されないリーグ終盤戦を戦っていく上でもチームのモチベーションは高く、「絶対に勝ちたいけど、その上で僕らのサッカーをセレッソ相手にできたら、これほど気持ちの良いことはない」と永井は前を向く。“格上”相手でも主導権を取りに行くサッカーは変わらない。名古屋はあくまで、ゲームを支配して勝機を引き寄せるつもりだ。

文&写真・今井雄一朗

玉田圭司選手

永井龍選手