9月25日(日)2016明治安田生命J2リーグ第33節
徳島ヴォルティス 0-1 セレッソ大阪 (19:04/鳴門大塚/7,657人)
試合写真・コメントなど
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 前半から降り始めた雨が後半開始から強い粒に変わり、後半途中からは叩きつけるような豪雨となった。視界が遮られる難しい状況下、82分、杉本健勇がPKを決めた瞬間、アウェイゴール裏は一斉に歓喜に包まれた。前節のギラヴァンツ北九州戦 に続く背番号9の決勝点で、セレッソ大阪が粘る徳島ヴォルティスを振り切って、リーグ戦4連勝を達成した。

 9月22日(木・祝)に行われた天皇杯3回戦・サガン鳥栖戦 から中2日。リーグ戦の前節・北九州戦も含めると8日間でアウェイ3連戦という過酷な日程の締めくくりが、今節の徳島戦だった。
 前半、セレッソは8分に杉本がドリブル突破で徳島ゴールに迫ると、9分にも松田陸のクロスに飛び込んだ杉本がヘッドでゴールを狙う。幸先良く試合に入ったかに思われたが、その後は徳島のプレスに苦しむ時間帯もあるなど、思うように攻め切ることができない。25分には玉田圭司のニアを狙ったシュートが徳島GK長谷川徹に防がれ、38分には6試合ぶりの先発となった清原翔平がドリブルからカットインしてのシュートでゴールを脅かすも枠を捉えることができず。被シュートこそ2本に抑える内容ながらも、セレッソは前節の北九州戦に続いて相手の守備を崩すことができない我慢の前半となった。 

 冒頭で記したように、後半に入ると雨足が強まり、次第にピッチに水たまりができ始める。「途中から雨が強くなって、下(グランダー)でパスを回すことも難しくなってきた」(藤本康太)状態のなか、指揮官の決断は早かった。クロスに特長のある酒本憲幸と高さのあるリカルド サントスを早めに投入。パワープレー気味の戦い方にシフトすると、ピッチ上の選手たちも呼応。79分、茂庭照幸の左サイドからのクロスに頭で合わせたのはリカルド サントス。このシュートこそGKに防がれるも、ここで得たCKを酒本がファーサイドに思い切りよく蹴ると、ソウザが徳島DF橋内優也にユニフォームを掴まれ転倒。セレッソがPKを獲得した。
 最初はソウザが自らボールを持ってPKをセットしかけたが、ベンチからの指示によりキッカーは杉本に変更。「体が万全ではないなかで気持ちを表していた杉本が蹴ることが、チームにとってプラスなのかなということで、彼に蹴るよう指示をしました」と試合後に大熊清監督はその意図を話したが、杉本は期待に応えて確実に決めた。

 この決勝点の数分前には、この試合を左右するもう1つのビッグプレーが生まれていた。76分、徳島の直接FKをキム ジンヒョンが防いだ場面だ。ボールをセットした位置には、左利きの内田裕斗と右利きの岩尾憲が立っていた。「最初は左利きの選手が左足でニアの上を狙ってくるかなと読んでいた」と言うキム ジンヒョンだが、「右利きの選手も走ってきたので、最後までボールを見たことが良かったのかなと思います」と高い集中力を発揮。最後までキッカーとボールを見極め、ゴール隅の際どいコースに飛んできたキックを完ぺきに防いで見せた。

 今節の結果、セレッソは4位・ファジアーノ岡山との勝点差を5に広げ、2位・松本山雅FCを勝点1差でピタリと追走する。守備を固める相手から得点を奪い切る課題こそ持ち越されたが、状況に応じたサッカーの変化やプランを完遂するメンタルは、グループとしての成長の証だ。「こういう難しい試合で、いかに失点ゼロで抑えて勝点を持って帰るかは大切なことなので、交代選手も含めてチーム全体で取った勝点3だと思います」。山口蛍は今節をそう総括した。
 次節は、自動昇格争いのライバル、5位・清水エスパルス(勝点差6)との直接対決。ヤンマースタジアム長居が決戦の舞台となる(10/2・日・14:00キックオフ)。意地とプライドがぶつかり合う、激しい試合となることは必至だ。

文・小田尚史