6月25日(日)2017明治安田生命J1リーグ第16節
ベガルタ仙台 2-4 セレッソ大阪 (18:03/ユアスタ/15,530人)
試合写真・コメントなど
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 リーグ戦5試合負けなしのセレッソ大阪と、リーグ戦4試合負けなしのベガルタ仙台。好調なチーム同士の一戦は、最初から最後まで息もつかせぬ激しい展開の中、セレッソが3度、2点差を付け、粘る仙台を振り切って2-4 で勝利。首位の柏レイソルをピタリと追走する貴重な勝点3を手にした。

 試合開始からフルスロットルで仕掛けてきた仙台に対し、立ち上がりのセレッソは守勢に回る時間が続く。それでも立て続けに迎えたピンチをしのぐと、16分、一瞬の隙を見逃さず、柿谷曜一朗が先制点を突き刺した。マテイ ヨニッチのクリアを拾った清武弘嗣が前線の柿谷へ絶妙なパスを送ると、3バックの脇を突いた柿谷は自らの間合いにボールを引き込み、左足一閃。清武と柿谷の武器が共鳴したすばらしいゴールにアウェイゴール裏が沸いた。

 4分後、今度はソウザが高い位置で奪うと、杉本健勇から山村和也へ素早くパスが渡り、受けた山村がダイレクトでニアを射抜き、セレッソが追加点。前節の清水エスパルス戦 とは対照的に、訪れたチャンスを確実に仕留める決定力の高さで仙台を沈黙させた。

 ただし、ホームの大声援を受けた仙台のメンタルが怯むことはなかった。セレッソは仙台のビルドアップを防ぐことができず、36分には完全に崩されての失点。暗雲が立ち込めると、39分には、カウンターに移ろうとした清武にアクシデント。ドリブルで相手を振り切ろうとした際に左太腿裏を痛め、ピッチに倒れる瞬間に自ら交代の合図を送った。幸先よく2点を先取する流れから、失点に加えて、清武の負傷交代。前半終了間際にも仙台の波状攻撃を受けたセレッソだが、ここはなんとかしのぎ、1点のリードは死守して前半を終えた。

 前半は仙台の攻撃に対して守備がハマらなかったセレッソだが、ハーフタイムを機に落ち着きを取り戻す。「まだ勝っている。次の3点目が大事。先に取ろう」(キム ジンヒョン)と意思統一してピッチに戻った桜のイレブンは、後半は主導権を奪い返す。58分、CKの流れから、丸橋のクロスに山下達也が豪快なヘディングで合わせて3点目を決めた。

 この直後、仙台が切り札のクリスランを投入すると、セレッソも山村がDFラインに下がって3バックを形成。ピッチ上に変化が起きた局面で、まず効果を生み出したのは仙台だった。61分、セレッソはクリスランに起点を作られると、3バックを破られ、仙台に再び1点差に詰め寄られた。
 ただし、ここからの強さが今季の“ユン・セレッソ”の真骨頂。68分、相手のクリアをソウザが奪って杉本とのワンツーで持ち運び、シュート。GKが弾いたボールを山口蛍がダイレクトで蹴り込んで再びリードを2点に広げた。以降は仙台に攻められながらも5-4-1で後ろを固めた守備が機能。キム ジンヒョンの好守もあり、安定感を取り戻したセレッソが危なげなく試合をクローズさせた。

 ユアテックスタジアム仙台では、実に2003年1stステージ第8節以来となる勝利。「このスタジアムで勝っていないジンクスを覆せたことは、チームとしてまだまだ成長できる」と山下が話せば、「(柿谷)曜一朗が試合前に『ここから、このスタジアムで勝てる伝統、歴史を作っていけるように』ということも言っていた。今日の勝利が始まり」とは山村。
 進化を遂げる仙台の攻撃をまざまざと体感したセレッソは、何度もピンチを迎えた。そして、チャンスには大声援で選手を鼓舞する仙台サポーター。一体となったユアテックスタジアム仙台は、やはり一筋縄ではいかない“難所”だった。それでも、勝ったのはセレッソ。「スタジアムの盛り上がりや一体感はすばらしいものがあったと思います。近くでそれを感じて『すげぇな』と思いながら見ていましたけど、ウチの選手がそれ以上に、我慢強くパワーを持ってできたのだと思います」と試合を振り返ったのは柿谷だ。鬼門突破──。快進撃を続けるセレッソがまた一つ、逞しさを身に付け、チームとしての成長を手にした。

文・小田尚史