7月12日(水)第97回天皇杯3回戦
アルビレックス新潟 2-3 セレッソ大阪 (19:00/デンカS/3,104人)
試合写真・コメントなど
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 J1リーグ、ルヴァンカップとともに、もう1つのタイトルを目指す戦い・天皇杯の3回戦に挑んだセレッソ大阪。対戦相手は、ルヴァンカップ、J1リーグ戦に続いて今季3度目の対戦となるアルビレックス新潟。敵地に乗り込んで迎えたこの試合、セレッソは、直近のリーグ第18節・柏レイソル戦 から、山口蛍と山村和也を除く先発9人を入れ替えた。一方の新潟は、直近のリーグ第18節・浦和レッズ戦と先発8人が同じ。浦和戦は出場停止だったホニも戻り、いわゆる“ベストメンバー”をぶつけてきた。

 序盤、セレッソは山村にボールを入れて攻めるも、10分、ホニが左サイドからカットイン。新潟のキーマンにドリブルからのシュートを許すと、ここから試合は新潟ペースで進む。14分、チアゴ ガリャルドのスルーパスからピンチを迎えるも、田中裕介がブロック。17分、今度は堀米悠斗のパスからホニが裏に抜ける。マークについた木本恭生がバランスを崩してヒヤリとするも、なんとか対応した。21分には、新潟に高い位置で奪われると、チアゴ ガリャルドにシュートまで持って行かれるも、茂庭照幸がブロック。こぼれ球を再びチアゴ ガリャルドが放ったシュートは決定的な一撃だったが、ここは丹野研太が好セーブで難を逃れた。
 ホニとチアゴ ガリャルドを中心とした新潟の攻撃に防戦一方のセレッソは、24分、ついに先制点を許してしまう。ホニが“裏街道”でドリブル突破を図ると、たまらず酒本憲幸が倒してFKを与える。すると、このFKから、試合前のアップ中に負傷した山崎亮平に代わって急きょ先発した平松宗にヘディングを決められた。その後も耐える展開が続いたセレッソ。44分、福満隆貴が抜け出して放ったシュートが前半、唯一のチャンスだった。

「みんなの戦う気持ちが見えない。責任感を持って、積極的にプレーしよう」。尹晶煥監督のゲキを受けてスタートした後半。セレッソは開始早々、田中の攻め上がりからCKを獲得すると、関口訓充のキックに田中がペナルティーエリア内で相手のファウルを受けてPKを獲得。これを山口蛍が落ち着いて決め、セレッソが同点に追いついた。直後の52分には関口のクロスに澤上竜二が飛び込み、チャンス。このままセレッソが後半は流れを掌握するかに思われたが、60分過ぎからはペースが再び新潟へ。63分、この試合、再三鋭いスルーパスを通していたチアゴ ガリャルドから矢野貴章へパスが通るも、ここは酒本と茂庭が体を張ってしのいだ。浦和戦から中2日にも関わらず、運動量が落ちない新潟に劣勢を余儀なくされたセレッソ。70分前後、尹晶煥監督は山村を3バックの一角に落とし、守備を安定させてカウンターを狙う戦術に切り替えた。
 尹晶煥監督は、65分には澤上に代えてリカルド サントスを投入。70分には酒本に代えて丸橋祐介をピッチに送り、田中を右へ移し、丸橋を左へ入れた。ここから試合は一進一退の展開。守備では、木本が、茂庭が体を張って防ぐ。攻撃では1トップのリカルド サントスを裏へ走らせる形を多用。77分、関口のパスに抜け出したリカルド サントスが相手DFのイエローカードを誘発すると、86分には田中のパスに抜け出しビッグチャンスを迎える。しかし、シュートはDFに防がれた。83分には、足をつった山村に代わって藤本康太がピッチに入るなど、セレッソは交代枠を使い切った中、1-1で90分が終了。勝負は延長戦に持ち越された。

 95分。チアゴ ガリャルドのスルーパスに対応した藤本と丹野に痛恨の連係ミス。藤本がクリアできずにGKに処理を任せようと時間をかけた隙を突かれ、最後はホニに押し込まれた。そんなミスから失点した嫌な空気を振り払ったのが、リカルド サントスだった。失点から1分後。丸橋のクロスに打点の高い強烈なヘディングを叩き込み、すぐさま同点に持ち込んだ。延長前半の残りの時間は新潟に2つの決定機が訪れるも、いずれも丹野が防いだ。
 延長後半に入り、最初のビッグチャンスも新潟。チアゴ ガリャルドのスルーパスに鈴木武蔵が抜け出しGKと1対1となるも、間合いを詰めた丹野に対し、鈴木のシュートは枠を外れた。110分には、セレッソに決定機。山口のサイドチェンジを受けた木本が丸橋とのワンツーからシュート。GKが弾いたところを福満が詰めてネットを揺らした。ただし、ここは福満がオフサイドの判定でノーゴール。それでも3分後、再び木本が左サイドの高い位置でボールを受けると、今度はリカルド サントスとのワンツーからペナルティーエリア内に進入。見事なシュートを突き刺して、この試合初めてセレッソがリードを奪う。その後はきっちりと時間を使い、試合を終わらせた。

 新潟に主導権を奪われ、シュート数、決定機の数では劣ったセレッソだが、DF陣の懸命のブロックに加え、GK丹野は随所で好セーブを披露。そんな守備の踏ん張りに応えるかのように、途中出場のリカルド サントスと丸橋が攻撃で勢いを与えた。そして、決勝点は3バックの一角に入っていた木本。2度のビハインドを跳ね返し、まさにチーム全員で掴み取った勝利だった。J1リーグ戦で続いている逆転勝ち。その底力を天皇杯でも発揮したセレッソが、クラブ史に残る“ビッグスワンの死闘”を制し、4回戦進出を決めた。

文・小田尚史