9月20日(水)第97回天皇杯4回戦
セレッソ大阪 1-0 名古屋グランパス (19:03/パロ瑞穂/6,569人)
試合写真・コメントなど
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 名古屋グランパスのホーム、パロマ瑞穂スタジアムに乗り込んでの一戦となった天皇杯4回戦。セレッソ大阪は、試合前、「中2日で次のリーグ戦があるので、ルヴァンカップに出ている選手たちを使おうと思っている」と尹晶煥監督が明言した通り、直近のリーグ戦、第26節のサンフレッチェ広島戦から先発11人を総入れ替えして試合に臨んだ。試合開始前から漂い始めた黒い雲が大粒の雨に変わったのは、キックオフのおよそ30分前。視界が遮られるほどの突然の豪雨に、一時、騒然となったスタジアムだが、幸いにも雨は次第に弱まり、試合に影響を及ぼすことはなかった。

 開始早々、試合は動いた、6分、相手のパスミスを逃さずに秋山大地が素早くリカルド サントスへ付けると、リカルド サントスはワントラップから優しいパスを福満隆貴へ送る。名古屋DFラインの裏を取って抜け出した福満がGKとの1対1を落ち着いて決め、セレッソが幸先良く先制に成功した。試合前から、名古屋の攻撃をしのいで隙を突くことをゲームプランとしていたセレッソだが、この早い時間帯での先制点により、“攻める名古屋と守ってカウンターのセレッソ”の構図はより鮮明になる。

 名古屋のポゼッションの中心にいたのは、昨季まで2年間、桜のユニフォームに袖を通してプレーしていた玉田圭司。随所にさすがのテクニックを見せるも、「(玉田に)チャンスメイクされるのはいいけど、フィニッシャーにさせるのだけはやめようと話していた」と試合後に振り返った茂庭照幸の言葉通り、名古屋にボールは持たれるも、ペナルティーエリア内には侵入させず、決定打は許さない。33分、シモビッチのポストプレーから古巣対戦に燃える永井龍に危ない場面こそ作られたが、永井のシュートは田中裕介がブロックした。すると、前半終了間際、カウンターからセレッソが立て続けに好機を作る。39分、関口訓充からリカルド サントスへ。42分には秋山がカットして持ち上がり、福満へ。いずれも決まってもおかしくないシーンだったが、シュートは2本とも、かつてセレッソにも在籍していたGK武田洋平に阻まれた。

 後半も最初のチャンスはセレッソ。関口がドリブルから絶妙なパスを澤上竜二に送ると、澤上はドリブルから反転してシュート。ただし、惜しくもこのシュートはバーを越えた。ここからセレッソは名古屋の猛攻を耐える時間が続く。52分、シモビッチのクロスから青木亮太をフリーにさせるも、切り返してのシュートは酒本憲幸がブロック。60分には田口泰士と青木に左サイドを破られかけるも、藤本康太と茂庭が素早く帰陣。体を投げ出してカバーに入り、事なきを得た。66分にも、名古屋にショートカウンターを浴びると、玉田、青木とつながれ、最後はシモビッチにシュートを許すも、再び茂庭がブロック。セレッソにとっては、ジリジリと最終ラインが後退していく厳しい展開に。すると、ここで尹晶煥監督が動いた。澤上に代えて山口蛍を投入、このタイミングで木本恭生をDFラインに落とし、[5-4-1]へ移行した。80分には、その木本に代わって山村が3バックの一角へ入り、逃げ切る姿勢を明確にする。そして、85分。セレッソにとって待ちに待った瞬間が訪れた。J1リーグ第16節のベガルタ仙台戦以来、公式戦は約3ヶ月ぶりとなる清武弘嗣がピッチに投入された。試合前日。「こうやって戻ってくることができたのは自分の力だけではないし、監督を始め、スタッフ、選手、サポーターの皆さん、そういった人たちが自分をリハビリに専念できるようにやってくれたおかげ。これから恩返しできるようにやっていきたい」と話していた清武。試合後は、「ここからじゃないですか」と、まだまだこれからを強調していたが、シーズン終盤に向け、試合を決定付ける力がある清武の復帰は、何よりの朗報だ。89分には、その清武が酒本の裏へのパスに抜け出し、GK武田と交錯しかけ、こぼれたボールに福満が詰めたが、ここはわずかに枠を外れた。

 試合は、最後までセレッソが名古屋に得点を許さず終了。終始、名古屋にボールは持たれるも、「一番危ないところだけはやられないようにしよう」(茂庭)という言葉通り、セレッソの選手たちはペナルティーエリア内での名古屋のシュートに対して戻りが早く、最後まで体を張った。リーグ戦で敗戦した直後の大事な一戦にカップ戦のメンバーを送り込んで勝利を手にした尹晶煥監督も、「お互いに助け合おうとするチームの一体感を見せた。自分のベストを尽くして戦うことができる選手たち」と賛辞を送る内容で、セレッソが天皇杯準々決勝進出を決めた。

文・小田尚史