1月1日(月・祝)第97回天皇杯決勝
セレッソ大阪 2-1 横浜F・マリノス (14:42/埼玉/42,029人)
試合写真・コメントなど
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 2017シーズンのフィナーレを飾る、第97回天皇杯決勝。セレッソ大阪は横浜F・マリノスと、埼玉スタジアム2002で対戦し、延長戦にもつれる激闘の末、水沼宏太の決勝ゴールにより、2-1と勝利。前身のヤンマー時代(第48回、50回、54回)から数えて4回目の優勝、セレッソ大阪になってからは4度目の決勝挑戦にして初の天皇杯獲得。JリーグYBCルヴァンカップとあわせて今季2冠を達成し、クラブ史上に残る輝かしい1年を最高の形で締めくくった。

 日本サッカー界としては特別な舞台となる、天皇杯『元日』決勝。天候は快晴、4万2029人の大観衆が詰めかけ、セレッソサポーターが試合前にはゴール裏で2つのピンクの星をかたどった鮮やかなコレオグラフィーで、2冠獲得への強い意欲をかきたてる。そういった格別な雰囲気が作られたなか、桜色の戦士たちが伝統のカップ戦ファイナルに臨んだ。

 試合の立ち上がりは、「あまりいいスタートが切れなかった」と、マテイ ヨニッチ。開始早々から快足MFマルティノスと、巧みなポジショニングをとるFW伊藤翔を中心とした横浜FMの速攻に苦しむ。それでも、セレッソも序盤に清武弘嗣が、先発復帰したキャプテン、柿谷曜一朗との連動したプレーから決定機を作ったが、前半の8分、先制点を献上。相手の左クロスへの対応で、DF木本恭生が、伊藤の動き出しに振り切られると、そのまま伊藤に押し込まれた。

 前回のJ1での対戦(第32節)と同じく、劣勢からのスタートとなった、セレッソ。その後も前半から後半の始めにかけては、中澤佑二を軸とした組織的な守備とマルティノスのスピードをいかした横浜FMの速攻に手を焼き、我慢の時間も続く。それでも、セレッソも踏ん張り、2失点目は許さない。

 ハーフタイムで修正を図ったなか、同点に追い付いたのは、65分だった。その前の時間帯から、前への圧力を強めた桜色の戦士たち。すると、水沼が相手をかわして強烈なミドルシュートを放ち、そのこぼれ球が相手DFを経て、山村和也の足下に流れてくる。そこで、「トラップした瞬間にフリーだったのはわかっていたので、しっかりゴールの枠内に飛ばせば入るかなと思っていた」という24番は冷静に右足を一閃。尹晶煥監督のもとで前線にコンバートされた今季躍進を牽引したマルチローラーが、ゴールネットを揺らし、チームを蘇らせた。

 試合を振り出しに戻したあと、尹監督も、冷静に見極めながら、交代カードを切る。77分に田中裕介を投入してサイドの守備を強化し、80分にはリカルド サントスを送り込んで前線を活性化。チームは、今季の戦いで積み上げた『走りきる』姿勢を前面に出し、ケガから復帰して先発した中盤の要、山口蛍や、水沼らを中心に、後半に入っても足を止めず、力が落ちない。

 試合は、今大会セレッソとしては3度目となる延長戦にもつれこんだが、チーム全体で円陣を組み、気合いを一層高めて入った延長前半の5分、試合を動かす。左サイドに開いてボールを受けた山村が、右足でクロスをあげると、そこに大外から飛び込んできたのが、『ユン・セレッソ』の象徴となる選手の1人、水沼だった。魂を込めたヘディングシュートは、ゴールに吸い込まれていき、ついに逆転に成功した。

 そこから、すぐに山村を最終ラインに下げ、今季何度も見せた5バックの形で守備を固めつつ、カウンターで追加点を狙う戦法を実行。延長戦後半は相手の猛攻にもあったが、これも「今年(2017年)そういうことがたくさんあったので、みんな身体を張っていましたし、みんな頑張っていた」と、途中出場の秋山大地。GKキム ジンヒョンのビッグセーブをはじめ、全体の献身的な粘り強いディフェンスで、最後まで自軍ゴールを割らせない。

 そして、試合終了を告げるホイッスルが吹かれ、タフに戦い抜いた桜色の戦士たちは雄叫びをあげながら喜びを表現。ピッチには歓喜の輪ができた。戦前に「(ルヴァンカップで)表彰台に上がったときの景色は本当に最高でしたし、ほんまにまた戻ってきたいなという話をしていたので、それがまた現実になっている。あとは本当に優勝して、もう1回みんなであの上に立って、カップを掲げたい」と述べていたのは松田陸。その言葉をチーム一丸となって再現できた。

「本当にあり得ないことがあふれる1年を、僕らの選手たちは過ごしてきた。J1昇格プレーオフからJ1に昇格して、ここまでの成績をあげるのは決して簡単なものではない。これは絶対に誰か1人の力で成し遂げたものではなく、大勢の皆さん、全選手、全スタッフ、そしてセレッソに関わるすべての皆さんが力を合わせて達成した結果だ」と述べたのは尹監督。J1で18番目のチームとして臨んだ2017年シーズン、J1で3位、カップ戦は2大会とも無敗で制覇と、最高の1年を過ごすことができた。これで来季は、ユニフォームに2つの星をつけて戦う、セレッソ。3度目のACLも本選からの出場が決まった。オフは約2週間で、来季は多くの大会に臨めるなか、厳しい戦いが待っていることだろう。それでも、今季積み上げてきた総力での戦いと、貴重な成功体験を続けてこそ、真の強者となるというもの。あくまでも、これはセレッソ栄光の歴史への序章。ここから桜をますます開花させていく。

文・前田敏勝