「まいど!セレッソ」のオフ恒例企画となった「選手別レビュー」。
実り多きシーズンの終わりに、番記者が思いを込めて各選手たちの活躍を振り返ります。


水沼宏太の2017年

 サガン鳥栖時代に師弟関係を築いた尹晶煥監督とともに、2017シーズンからセレッソの一員となった水沼宏太。前シーズンのFC東京ではなかなか出番に恵まれず悔しい思いを味わっていただけに、再起を懸けて臨んだが、J1開幕の磐田戦 で先発に名を連ねながら負傷交代。そこからは、しばらくケガに悩まされる時期が続いた。
「ただ、2回もケガをしたことで(開き直って)余裕も出てきて、その間にチームメイトが勝ってくれたのもありましたが、ちょっとずついい方向に持っていくことができた」
 周囲をうならせたのは、J1第13節・神戸戦 。後半に途中出場してから5分後、左サイドにいた山村和也の右足クロスを、ファーサイドから右足ボレーシュートで叩き込んだ。これ以後、自慢のハードワーク、精密な右クロスを発揮し続けて、要所でのゴール、そしてアシストでチームに大きく貢献。それだけでなく、周囲を常に盛り立てるムードメーカーとしての役割を存分に務めてきた。『ユン・セレッソ』の肝として、不可欠な存在になっていったことは誰もが知るところだろう。
 ルヴァンカップ準決勝第2戦・G大阪戦 で木本恭生の決勝弾をアシストした場面。天皇杯準決勝・神戸戦 で試合終了間際に失点してチームが窮地に陥ったとき、すぐさま同点弾を決めた場面。そして天皇杯決勝・横浜FM戦 、延長戦での劇的な勝ち越しヘディングシュート。「絶対にあきらめない」という強い姿勢を、形で、結果で体現してきたのも、彼の真骨頂。
 2018シーズンは完全移籍で、桜の戦士としてプレーする水沼。「感謝の気持ちを忘れず、サッカーと真摯に向き合い、また新たな目標に向かって全力で闘いたい」と、気合いみなぎる男から目が離せない。

ライターからひとこと

 常に明るく、前向きに、真摯にサッカーに取り組む。それが水沼宏太選手のよさであり、そのキャラクターに、自然と人が引き寄せられる。そういう姿を目の当たりにして、彼の存在の大きさを痛感しています。
「プレーでも声でも引っ張れる存在というのは、チームに1人は絶対に必要。僕はその役割を担いたい」と日頃から話していましたが、それを有言実行。そして、印象に残るゴール、アシストも多かったですよね。極めつけは古巣対決での勝負強さ。ルヴァンカップのグループステージ第3節・鳥栖戦 の2得点に始まり、J1リーグ戦でも第17節・FC東京戦 第32節・横浜FM戦 、そして天皇杯決勝の横浜FM戦。
 その決勝前、「古巣どうこうという思いは、そんなにはないです。今いるこのクラブのために、自分は救われた部分もあるので、優勝という形で恩返しできればいいな」と話していましたが、味方であることがなんと心強いことか。セレッソサポーターもそう感じたのではないでしょうか。2018年も、彼の大車輪の活躍をぜひ期待したいものですね。

文・前田敏勝

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