「まいど!セレッソ」のオフ恒例企画となった「選手別レビュー」。
実り多きシーズンの終わりに、番記者が思いを込めて各選手たちの活躍を振り返ります。


杉本健勇の2017年

 14得点を決めてセレッソ大阪のJ1昇格に貢献した2016年を経て、迎えた2017年。尹晶煥監督との出会いが、“ストライカー・杉本健勇”の運命を決定付けた。キャンプから杉本をFWに固定した尹晶煥監督は、「味方のために走って、得点の取れる位置に入っていくこと」を彼に求め続けた。もっとも、シーズン序盤は葛藤との闘いでもあった。「もともと前(FW)で勝負したいとは思っていたけど、16年は左サイドでプレーして自信も付いた。だから今季も最初のころは、FWをやりながら、左に戻りたいと思っていた時もあった」と、2016年に身に付けた役割や型とのジレンマに悩むこともあった。
 それでも、「やっぱり俺はストライカーとして勝負したい」と腹を括って臨んだ第7節の大阪ダービーで、一つの殻を破る2得点。咆哮がヤンマースタジアム長居にこだますると、その後はコンスタントに得点を量産。第22節・浦和レッズ戦での電光石火の2得点や、第23節・ジュビロ磐田戦での水沼宏太のクロスに合わせたダイレクトボレーなど、印象に残る得点も多かった。極めつけは、クラブ初のタイトル獲得となったルヴァンカップ決勝戦での先制点。そして、リーグ戦でも最終的には22得点とJ1得点ランク2位で終えた。
「周りからすれば、チームとしても、個人としても、いい結果を残せたのでは?と思ってくれると思うけど、自分自身はそうは思っていなくて。もったいない負け方をしたり、自分も決めるチャンスで外していたり。そういった甘さをなくしていれば、リーグ戦でも優勝できたかも知れない。3位で終わった嬉しさよりも、1番になれなかった悔しさの方が強い」。最後にそう話した杉本。もちろん、2017年は良いシーズンを送ったことは紛れもない事実。それでも、さらなる高みを目指し、2018年も先頭に立ってチームを引っ張る。

ライターからひとこと

 杉本健勇選手がトップチームに昇格して以降、歴代のどの指揮官も、ストライカーとしての杉本選手の能力と素質を認めていました。そのポテンシャルの高さについては、ジュニアユース、ユース年代の監督さんも、トップチームの監督と同じ気持ちだったでしょう。そんな期待され続けた彼の力が、昨季、ついにJ1の舞台で花開きました。残した22得点という結果について、「自分一人で残せたわけではない。仲間がパスを集めてくれた。そうやって仲間と信頼関係を築けたことがうれしかった」と、まずはチームメートへ感謝の気持ちを述べた杉本選手。ただし、そんな彼自身、どの試合後も、「もっと取れた」という言葉を残していたように、2017年の結果に満足していません。シーズン初ゴールを含む2得点を決めながら、2-2の引き分けに終わった第7節の大阪ダービーの後は、「3点、4点とあったチャンスを決めきれなかったほうが悔しい。本当にありえへんくらい悔しいけど、この悔しさを力にして、もっと突きつめてやっていきたい」と話し、その後の量産につなげました。
 そして、得点王を逃した最終節のアルビレックス新潟戦後も、「『そんなに人生、甘くない。そんな簡単に(得点王は)取れるものじゃないぞ』と神様が言ってくれていると思う。実際、そんな甘いものじゃないと自分に言い聞かせている」と振り返りました。その悔しさを、2018年にぶつけて欲しいと思います。まだまだ伸びシロはたっぷりと残されているのですから。そして、セレッソのストライカーから日本のストライカーへ。杉本選手にとって、新たな挑戦の1年にもなるでしょう。大いに期待しています。

文・小田尚史

マイセレ:杉本健勇選手の記事一覧