各選手たちの1年を、番記者が思いを込めてつづった「選手別レビュー」。
新シーズンに向けての期待感とともに、お読みください!


柿谷曜一朗の2017年

『ユン・セレッソ』の2017シーズン、キーワードの1つとなっていたのが「犠牲心」。その言葉を最も体現していた選手は、柿谷曜一朗かもしれない。託されたポジションは、最前線ではなく、ハードワークを要求される左サイドの攻撃的MF。攻撃の選手も含めて、全体が守備への比重を高く要求されるなか、チームのために左サイドを駆け回る。その象徴として残っている数字が、J1第4節・サガン鳥栖戦 で記録したスプリント数39回という記録。これは、水沼宏太(第15節・清水エスパルス戦)とともに、チーム内でシーズン中に最も多いものだった。
 それだけ脚を使いながら、一方で持ち前の足下のテクニックを使って相手を颯爽とかわしたり、信じられないようなぴたっと足下に止まるトラップ、キープ力で、チームメイトに安心をもたらす。ゴール数は6と、自身のストロングポイントでもある得点力を生かせなかったことに本人としても悔しさが募っただろうが、彼の「犠牲心」あるプレーがセレッソ躍進につながったことも、記憶にしっかり留めなければならないことだ。
 2シーズンにわたって務めてきたキャプテンの重責も、計り知れないほどの大変さがあったはず。「やることはそこまでないですよ」と表では言うが、彼の一言や存在の影響力はやはり大きなもの。クラブ愛という面でも人一倍想い入れがあるからこそ、8番の背中は本当に力強く見えた。
 ルヴァンカップで優勝したときに、「タイトルという1つの形を手には入れたが、まだ何も成し遂げていない。この先、自分たちにはたくさん試練が待っている」と、これまでの教訓を生かして、先を見据えてクラブのことを考えているのも柿谷のセレッソへの強い想いを示す言葉だ。
 新シーズン、キャプテンこそ外れたとはいえ、桜の要であることは言うまでもないこと。ゴールに飢えた曜一朗が、その類い希な技術で相手をキリキリ舞いさせてセレッソに歓喜をもたらす姿を、そして彼の笑顔を、数多く見たいものだ。それがさらなる栄光の歴史につながっていくはずだから。

ライターからひとこと

 舞洲での練習後、取材に来ていたレポーターの池田愛恵里さんをいじったり、柿谷選手らしいマイペースさにほのぼのさせられるところもありながら、取材などではサッカーと同じく「読めない」というか、はぐらかされることも多いのですが(苦笑)。それはともかく、やはり彼は愛されるキャラクターの持ち主であり、絶大な存在感のある選手です。
 2017シーズンは、ゴールという数字を残せなかったり、肝心なところで途中交代を余儀なくされることに相当の悔しさやストレスもあったと思いますが、それはサッカー選手として上を見据えるなら当然のこと。2018シーズンは、彼がさらに楽しく、そしてケガなく、充実した1年を過ごせるよう願わずにはいられません。

文・前田敏勝

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