今季、J2を戦う中で、楽しみなのはかつてセレッソでプレーした選手との「再会」である。アウェイでの対戦で実際に会うことはなくても、スカパー!の試合映像や、「マイセレ」のコメントやレビュー、プレビューで彼らの姿や声に触れるのは、何とも懐かしく、ほっこりした気持ちにさせられる。

 前節のギラヴァンツ北九州戦は、小松塁選手、井上翔太選手との「再会」があった。井上選手は先発メンバーとして、小松選手は途中からの出場だったが、いずれも主軸を担っているのが頼もしかった。小松選手は2006年に関西学院大学からセレッソへ。当時、「大学ナンバーワンFW」として名をはせた選手。山下達也とは同期で、「あいつから点を決めたろ、と思って試合に臨みました」と、試合後に話していたという。

 試合後は、小松選手、井上選手ともにセレッソのサポーター席前へ。あいさつをする2人をサポーターはかつてのチャントで迎えた。「(セレッソは)自分にとっても特別なクラブなので、今日の声援はすごくうれしかったですね」とは、試合後の小松選手のコメント。プロとしてのキャリアをスタートさせたクラブにはとりわけ思い入れが強い、とはよく聞く言葉で、確か大久保嘉人選手(川崎フロンターレ)にもそんな話を聞いたことがある。

 北九州のキャプテン、前田和哉選手もセレッソ出身だ。前節の出場はなかったが、「古巣」との対戦に相当燃えている、と聞いていた。2005年、大阪体育大学を卒業後、練習生としてセレッソに加わり、その後契約にこぎつけた苦労人だが、1年目からチャンスをつかんでセンターバックとして活躍した。ゴリゴリヘッドが持ち味で、愛嬌のある笑顔が魅力的だった。北九州と再戦する10月10日に、キンチョウスタジアムで会えるのを楽しみにしよう。

 そして、今節はV・ファーレン長崎との対戦。対戦チーム情報で、ライターの植木修平さんが「最も注目すべき選手」にあげているのが、黒木聖仁選手だ。2008年からセレッソに在籍し、昨シーズンに長崎へ期限付き移籍、今シーズン完全移籍をして大阪を離れた。植木さんの原稿を読めば、新天地でたくましく変貌した「聖仁」の姿が容易に想像できる。

 彼のルーキー時代、私は広報担当だった。宮崎から大阪に出てきたばかりの彼は、関西弁でまくしたてる私を見て、びっくりしたような、少しおびえたような(驚かせてゴメン)表情をしていた。同期加入で、よく一緒に行動していた京都府出身の白谷建人が私の関西弁に笑って調子を合わせていたのとは対照的だった。それだけに、今回のプレビューのコメントは驚きをもって読んだ。言葉から立ち上る熱い闘志に、気圧されてしまった。

長崎・黒木選手が、「いつも立ちたい、立ちたいと思っていた」と言うキンチョウスタジアムのピッチ。どんなプレーが繰り広げられるのか楽しみだ
「セレッソとの試合は、みんなが思う以上に自分にとっては特別な試合」と言う黒木選手。ポテンシャルを秘めながら、レギュラーの座をつかみ続けることはできなかったセレッソでの日々を、必ず試合にぶつけてくるはずだ。「いつも立ちたい、立ちたいと思っていたキンチョウスタジアムのピッチ」(黒木選手)を、彼はどんな思いで駆けるのだろう。しっかりと見届けたいと思う。

「マイセレ」を見て、もうひとつうれしかったのは、トップを経ることなく、つまりアカデミーに所属しながらトップ昇格がかなわず、セレッソを離れざるを得なかった選手の思いを知ることができたことだ。カマタマーレ讃岐の岡村和哉選手(元セレッソ大阪U-18) は、「セレッソと対戦できるなんて夢のよう。積極的にやらないともったいない」と意気込みを語り、ザスパクサツ群馬の大津耀誠選手(元セレッソ大阪U-15、セレッソ大阪U-18) は、「セレッソU-18時代のコーチには選手としてのすべてを教えてもらったので、成長をゴールという結果で見せて恩返しをしたい」と話したという。彼らの言葉もまた、深い感慨をもたらしてくれる。

 さて、V・ファーレン長崎戦。順位が1つの上相手であり、前線からの激しいプレッシングを持ち味とするチームとの対戦は、決して楽なものではないだろう。が、セレッソにとっては勝利しかない。とにかく勝つ、ホームでは絶対に勝つ。試合後の懐かしい顔との笑顔での再会を楽しみに、キックオフを待つことにしよう。

文・横井素子


◆横井素子 プロフィール
奈良県奈良市生まれ。広告代理店勤務のあと、フリーランスの編集・ライターとしてセレッソ大阪の広報ツールの制作などに携わる。
1999~2000、2008~2011年はセレッソ大阪トップチーム広報担当、現在はセレッソ大阪堺レディース広報担当、セレッソ大阪公式ファンサイト編集責任者を務める。


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