猛暑のなかの、大熱戦だった。7月31日、「第20回全日本女子ユース(U-15)サッカー選手権大会」決勝。セレッソ大阪堺ガールズは、JFAアカデミー福島と対戦。30分ハーフのこのゲームは、本当に見ごたえのある好ゲームだった。

 試合前のロッカーで、岡本三代監督は、
「ここまで来られたことはすばらしいこと。コーチはみんなに感謝しています」
と、ミーティングの口火を切った。初めての決勝が、ホームのJ-GREEN堺のS1メインフィールドで行えるなんて、本当に幸せなこと。岡本監督が、選手に課したこの日の「約束」は6つあった。
・殻を破る
・フォア・ザ・チーム
笑顔
・決してあきらめない
・勝ちたい気持ち
・楽しむ
岡本監督との約束通り「笑顔」満開の記念写真!

 正午にキックオフ。予想通り、JFAアカデミーは強い。技術、戦術、フィジカル、すべてにおいて、セレッソより上に感じた。しかし、局面では負けなかった。負けそうになっても、止めた。走った。あきらめなかった。だから、少しずつ、相手とイーブンの関係にまで持ち込めたような気がする。前半を0-0で終えた。

 ハーフタイム、選手たちは少し難しげな表情をしていた。懸命にプレーしているのに、なかなか自分たちが主導権を握れないのが、もどかしかったのだろうか。岡本監督のハーフタイムの指示はシンプルだった。
「セカンドボールも球際もしっかりいけている。続けよう」
「あわてないこと」
「フィニッシュを増やそう。シュートを打たないとゴールは生まれない」
そして、最後の言葉は
「ゴールすれば、勝てる」
であった。

 果たして、その通りの後半になった。苦しい中、最後まで球際は厳しくいった。そして、待望のゴールは、34分。ゴール前に抜け出した宮本春花選手が思い切って打った左足シュート!リードしてからも、ピンチは何度もあった。でも、耐えきった。

 うれしい初優勝である。選手にとっても、スタッフにとって、そしてセレッソ大阪というクラブにとっても大きなタイトルだ。
この大会のポイントはいくつかあった。チームの最年長である中学3年生にとっては、中学時代の最後の大会であり、集大成に位置付けられていた。キャプテンの年本有優香選手、2回戦でハットトリックと大暴れした中村萌愛選手、そして決勝で豪快なゴールを決めた宮本春花選手、ゴールマウスを守った山下莉奈選手。ベンチにいた選手、ベンチ外の選手、そしてケガのため試合に出ることができなかった選手も、一緒に戦っていた。彼女らの頑張り、結束力なくしては、優勝は成しえなかった。

支え合い励まし合った3年生たち。結束は固かった

 もちろん、2年生にもいいプレーヤーがたくさんいる。ボランチとして試合をコントロールした松本歩音選手、田中智子選手。左サイドバックの北いぶき選手、ディフェンスの中心、芳本小夏選手。みんな伸び盛りといった印象だ。頼もしかったのは、1年生の選手が堂々と渡り合っていたこと。大会1ゴール目を決めた百濃実結香選手、準決勝で決勝ゴールを決めた善積わらい選手、ディフェンスでは河岸笑花選手が落ち着いたプレーを見せた。

 セレッソ大阪堺レディースのセカンドチーム(下部組織)としてセレッソ大阪堺ガールズが立ち上がって、今年で3年目。岡本監督が、3年間かけて育ててきたチームが、日本一になったことは意義深い。ただ、この大会が終わりではなく、あくまで通過点である。
「1日も早く、ここからレディースの試合に出られようになってほしい。厳しいようだが、ここで満足していてはダメ」。試合後、岡本監督は言った。その言葉を聞く選手からは、表彰式のときのはしゃぐ様子は消えていた。もう、次への競争は始まっているのだ。「レディース」へ、なでしこリーグへ。なでしこジャパンへ、世界へ。目標は高く、夢は無限に広がっている。

 暑い中、連日会場に足を運んで下さり、見守ってくださった皆さん、ありがとうございました。そして、妹たちを声でサポートしたセレッソ大阪堺レディースのみんなも、ナイスファイト!次はレディースの番。頑張りましょう!!
頼もしいレディースの選手による応援団

続 セレッソ・アイデンティティ|第9回 ガールズの夏I 
セレッソ大阪堺レディースブログ
第20回全日本女子ユース(U-15)サッカー選手権大会 テレビ放送予定

文・横井素子

◆横井素子 プロフィール
奈良県奈良市生まれ。広告代理店勤務のあと、フリーランスの編集・ライターとしてセレッソ大阪の広報ツールの制作などに携わる。
1999~2000、2008~2011年はセレッソ大阪トップチーム広報担当、現在はセレッソ大阪堺レディース広報担当、セレッソ大阪公式ファンサイト編集責任者を務める。
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