第16回:初めてのタイトル~みんなのルヴァンカップ①よりつづき

 リアリストといえば、決勝のメンバーについて尹監督は、「実は今日の試合のメンバーもすごく悩んだ。タイトルを獲るためには何かを犠牲にしないと獲れないと思ったので、こういうメンバー構成になった」と、明かした。今回の優勝を語るとき、決勝のメンバー以外の選手のことを忘れるわけにはいかない。

 試合後のミックスゾーンで、8試合に出場した丹野研太に話を聞くことができた。いつものように、冷静に、淡々と話したのがこのコメント なのだが、特に心に残っているのは、「今日メンバーに入った自分たちだけではなく、メンバー外の選手も、U-23の試合に行った選手たち(翌日に高知で開催)も含めて戦った大会だった」「大会の前は、こんなことになるとはだれも思っていなかったと思う。自分たちも1試合1試合必死でやったなかで、自信をつけながらやれた」という言葉。リーグ戦と並行してミッドウィークに行われることが多かったなか、リーグを戦う選手たちに刺激を受けつつ、「俺たちのルヴァンカップ」としてモチベーションを高く持ち続けたのである。

 丹野をはじめ、ディフェンス陣はベテラン選手が多かった。藤本康太は2005年加入で、前回優勝を逃した2005年12月3日のFC東京戦は、ルーキーながら先発していた。当時は、なにがなんだかわからないままプレーを続けたと話していたが、今回はベテランとしてチームを引っぱった。同じセンターバックの茂庭照幸は2010年にセレッソに加わった。同年の躍進に貢献した魂のディフェンスは健在で、若手を鼓舞し今回のルヴァンカップを盛り上げた。
 チーム最古参の酒本憲幸がボールを持つと、いつもスタンドは一層沸いた。決勝のピッチにこそ立たなかったが、決勝までのグループステージ、プレーオフステージ、ノックアウトステージ12試合を無敗で乗り切れたのは、彼らの力、想いによるものだ。

優勝トロフィーを掲げる酒本憲幸選手

 若い選手たちにとっても、非常に有意義な大会だった。ゲームキャプテンとしてプレーすることが多かった秋山大地。準決勝のアウェイ・ガンバ大阪戦 で劇的な決勝ゴールを決めた木本恭生にとっては、飛躍の大会になった。ルーキーの斧澤隼輝は多くのチャンスを与えられ、貴重な経験を積んだ。

「ルヴァンカップは、僕たちはあまり試合に出ていないので、グループステージから出ていた選手たちがもっと賞賛されるべきだと思っています」。決勝のあと、柿谷曜一朗はいみじくも語った。13試合を戦い抜いて勝ち取った、オールセレッソの力を結集して獲得したすばらしいタイトルである。

文・横井素子

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◆横井素子 プロフィール
奈良県奈良市生まれ。広告代理店勤務のあと、フリーランスの編集・ライターとしてセレッソ大阪の広報ツールの制作などに携わる。
1999~2000、2008~2011年はセレッソ大阪トップチーム広報担当、現在はセレッソ大阪堺レディース広報担当、セレッソ大阪公式ファンサイト編集責任者を務める。