高校3年生の宮本光梨(左端)、山下莉奈(左から2人目)にとっては、今大会が最後になる全日本U-18。悔しさはひと際だった

「最後は笑顔やで~!!」。スタンドで観戦していたレディースの選手たちから声がかかったが、涙は止まらなかった。新年1月3日に開幕し、7日に決勝が行われた全日本U-18女子サッカー選手権大会。セレッソ大阪堺ガールズは、4大会連続出場、そして4大会連続決勝進出を果たした。優勝した日テレ・メニーナが表彰を受ける横で、肩を震わせて号泣する選手、顔をゆがめつつ必死でこらえる選手…2019年は涙で始まることになった。

 決勝の舞台はJ-GREEN堺S1メインフィールド、風は弱く陽射しも感じられる絶好のコンディション。選手たちはいつものように笑顔満開で勇躍ピッチに飛び出した。

試合前のハイタッチ。スタメン外の選手がメンバーを激励した

 相手にボールを握られてスタートしたが、前線では2トップの百濃実結香と浜野まいかが労を惜しまずにプレスを続け、中盤ではボランチの河岸笑花らがきっちりと相手の攻撃をつぶした。バックラインも含めた出足の速いディフェンスにより、攻められながらも逆にリズムを作り出していった。

ボランチとして大会を通じてレベルの高いプレーを披露した河岸笑花

冷静沈着なプレーに終始した松本奈己。複数のポジションをこなした

 先制ゴールはそんな中で生まれた。百濃が積極的なプレーでボールを奪うと、そのまま持ち込んでシュート。最初のチャンスをしっかり仕留めてリードした。その後も相手にボールを持たれながらもチャンスを作り、「あれを決めていれば」と試合後に悔やむことになる場面もあった。
 1-0で前半を終え、勝負の後半。きっちりと修正し、選手を入れ替えて攻守ともにギアを上げてきた日テレはさすがだった。

得意のドリブルは今大会でも輝いた。大会通算3得点を上げた百濃実結香

 守勢に回る時間帯が増え、押し返すのが精一杯になった。61分に同点にされると、75分には相手のシュートがGKの頭上を越え、バーに当たってゴールインするアンラッキーな逆転弾を浴びた。次々と選手交代をして巻き返しを図ったが思うにまかせず、1-2でタイアップ。「だんだんボールを奪いきれなくなり、体力を消耗してしまった。技術、戦術においてメニーナのほうが上手だった。この負けの中から、今後やらなければならないことが分かったと思う」。岡本三代監督は振り返った。

 悔しさはもちろんある。でも、大会を通じて見たガールズのサッカーは、楽しく、頼もしく、そしてすがすがしさにあふれたものだった。全員がひとつの形をイメージしてポジションごとに役割を90分間まっとうし続ける、まっとうし続けようとするサッカーはやはり美しい。選手たちの技術の高さにもあらためて驚かされたし、なによりも彼女たちは若い。まだまだ伸び続けるはずだ。今年もガールズの主戦場はチャレンジリーグ。この日の悔しさを晴らすチャンスはまだまだある。今年もたくさんの笑顔を見せてほしい。

文・横井素子
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◆横井素子 プロフィール
奈良県奈良市生まれ。広告代理店勤務のあと、フリーランスの編集・ライターとしてセレッソ大阪の広報ツールの制作などに携わる。
1999~2000、2008~2011年はセレッソ大阪トップチーム広報担当、現在はセレッソ大阪堺レディース広報担当、セレッソ大阪公式ファンサイト編集責任者を務める。