海外でのプレーを経て、クラブスタッフに
「セレッソの価値が上がる仕事をしたい」


第1回 1st HALF

「まさか上がれるとは思っていなかった」というトップチームに昇格した野口直人。しかし、1年目は試合出場の機会はなく、2年目の2012年には大分トリニータへ期限付き移籍することになった。
「自分をより成長させるために大分へ行きます。セレッソで学んだことを大分でも表現し、また大きくなってセレッソに帰ってきたいと思います」と、コメントして臨んだ新天地でも、チャンスはめぐってこなかった。プロ3年目の2013年には、MIOびわこ滋賀(JFL)へ再び期限付き移籍。試合に出場することができたものの、同年でセレッソとの契約が満了、MIOびわこ滋賀からも退団した。
「ずっと海外に行きたいという思いがありました。僕は、セレッソU-18のときに海外遠征がなかった年代なんです。僕らの前も後もヨーロッパに遠征しましたが…だからよけいに海外へ、という思いが強かったのかもしれません」

フリーになって、アメリカのチームのテストを受けに行ったが、移籍はかなわなかった。その後、ポーランドのチームの話があり、移籍が決まった。2014年春のことだった。
「ポーランドは3部までがプロで、僕が入ったのは、3部のオリンピア・エルブロンクというチームでした。残り10節というタイミングでチームに合流して、3カ月間プレーしました。6月の中旬にリーグが終わったときは、次のチームを探すつもりでした」

野口直人
事務局スタッフとして働き始めて3カ月足らずだが、すっかり周囲となじんでいる。

 チームを探している間、帰国した野口は、セレッソから「スクールでコーチとして働かないか?」という誘いを受けた。「チームが決まるまでスクールコーチとしてアルバイトをして、決まったら海外に行っていい」という条件は好都合だった。スクールで子どもたちを教えながら、新しいチームを探す日々がしばらく続いた。
「できれば英語圏のチームをと思って探しましたが、うまくいきませんでした。見つかっても、お金の面も含めて自分が納得して行けるチームではなかったんです。2カ月間移籍先を探して見つからなかったら、サッカーを辞めて海外に留学しようと考えていました。セレッソにはいろいろお世話になっていたので、宮本さん(功/一般社団法人セレッソ大阪スポーツクラブ代表理事)たちに相談させてもらったんです。アメリカにはサッカーをしに行くのではなく、英語を勉強しに行きたかった。そういう話をするなかで、スポーツクラブの事務局に入れてもらうことになったんです。Jリーグや選手会のスタッフの方たちにも相談していたんですが、セレッソで働くことが決まったときはみんな喜んでくれました」

 セカンドキャリアにクラブスタッフの道を選んだことについて、
「選手を辞めたら、サッカーで生きていくというより、別の仕事をしたいと思っていました。もっといろんな人と関わりたかったし、自分が知らないことはたくさんあると思っていたので。でも、こうして事務局に入れて、またサッカーに携われているというのは幸せなことです。しかも、セレッソに携われているというのが自分の中では一番幸せかなと思います」
と、話す野口。現在は、仕事をしながら早稲田大学の「eスクール」で学ぶ学生でもある。
「2011年に入学して、今年で5年目です。ゼミが終わって、卒業論文に取り掛かったところなんです。現役時代にあまり単位が取れなかったので、今頑張っています。仕事が終わって家に帰ったら勉強しています。そうしないと間に合わない感じです(笑)」

野口直人
ホームゲームの時は、スクール生のチケットを配布・販売することもある。
「裏方」への転身に「またサッカーに、セレッソに携われているのは幸せ」と話す。

 大学を修了して、そのあとは…?
「とにかく今やらせてもらっている仕事を頑張ってやって、英語も勉強して、大学の勉強も続けていけば、いろいろ見えてくるのかなと思います。まずは、今やるべきことをやっていきたいです。これからもセレッソに関われたら、一番です。セレッソは今すごく注目されていますし、これから新しいこともやっていこうとしています。その中に自分がいるということはすごくいいこと。将来的には、自分もセレッソと一緒に成長したい。セレッソの価値が上がるような仕事に自分が携われたら、と思います」

文・構成 横井素子



【のぐち なおと】
1992年6月7日生まれ、大阪府出身。
セレッソ大阪U-18から2011年にトップチーム入り。2012年に大分トリニータへ、2013年にはMIOびわこ滋賀にそれぞれ期限付き移籍。2014年にはポーランド3部のオリンピア・エルブロンクへ移籍、同年6月までプレー。
その後現役引退して、一般社団法人セレッソ大阪スポーツクラブへ。現在はパートタイムで事務局スタッフとして働きながら、早稲田大学で学ぶ大学生でもある。

野口さんが担当する、セレッソ大阪スポーツクラブ「大人のサッカースクール」の詳細はこちら