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第9回 2014年、チャレンジリーグ2年目も苦闘が続く

 頑張り続けた1年目を経て迎えた2014シーズンも、楽な戦いではなかった。むしろさらに厳しくなったように感じた。実力あるチームがなでしこリーグから降格してきたこともあり、チャレンジリーグ全体のレベルが高くなったことが1つ。そしてシーズン序盤にU-17女子ワールドカップに出場したU-17日本女子代表に、西田明華と松原志歩の主力2選手を送り込んだことも影響した。

 
U-17女子ワールドカップで優勝したU-17日本女子代表に選出され、活躍した松原志歩(左)と西田明華。優勝を祝し、2014年4月12日のJ 1ホームゲーム(vsガンバ大阪)でセレモニーが行われた。

 開幕戦でノジマステラ神奈川相模原に敗れる(2-3)と、続くホーム開幕戦でスペランツァFC大阪高槻に力の差を見せつけられて敗戦(2-5)。その後も連敗となり、第9節のJAPANサッカーカレッジレディース戦では引き分けたものの、前半戦の11試合を終えて1分10敗。出口の見えない迷路にまぎれこんだかのような苦しさだった。
「どうしたら勝てるの?」
試合後ひとしきり泣いたあと、つぶやいた選手の声は今も忘れられない。

 それでも、リーグ後半戦には成長の兆しが見られた。第12節のスフィーダ世田谷戦では、上位争いをする相手に、臆することなく自分たちのサッカーを展開。しっかりとした前線からのディフェンス、そして攻撃に転じるとボールをつないでゴールに向かう……玉櫻ことの、松原志歩、西田明華の1期生がそれぞれゴールをあげて3-1で完勝したことは、選手に自信と勇気を与えた。

 続く第13節の常盤木学園高校戦は、3点リードするも追いつかれ、3-3で迎えた後半アディショナルタイムに矢形海優がゴールし、劇的な勝利。今まで勝てなかった相手に善戦し、勝利できるようになり、少しずつ勝点を伸ばしていった。

 【その後】
 勝てない苦しさと、少しずつ成長して差が縮まっていく喜びを感じることができたのが、2014年でした。その後の急成長を考えると、決してスピードは速くなかったですが、前進あるのみだったと感じます。のちにチームの屋台骨を支える矢形海優選手や北村菜々美選手、脇阪麗奈選手ら3期生たちが力をつけてきたことも大きかったです。

文・橫井素子