「桜なでしこ物語」についてはこちら をご覧ください。

--------
第12回 2015年、3年目のチャレンジリーグに挑む

「もし、あのときになでしこ2部に入れていたら…という思いはあります。でも、あの悔しさがあって、次のシーズンにつながった」。
 監督(当時)の竹花友也は2014年の最終戦 を振り返る。それほど悔しい出来事だった。持てる力をすべて出し、自分たちのサッカーをまっとうしても結果が出なかった。もっとトレーニングするしかない。選手たちは悔しさを押し殺してトレーニングに取り組んだ。

 2015年のチャレンジリーグは12チームを東西6チームずつに分けてリーグ戦を行ったあと、プレーオフ(プレナスチャレンジリーグEASTとWESTの上位2チーム・計4チームによる1回戦総当たり戦)を開催して年間順位を決定。1位が2016年になでしこリーグ2部に自動昇格、2位はなでしこリーグ2部の9位との入替戦に臨むというレギュレーションだった。

「目標は優勝してなでしこ2部に昇格すること」とは、開幕を前にした竹花の言葉。選手たちも同じ思いだった。主力メンバーが全員高校生になり、体格も大きくなり、フィジカルも少しずつ強くなっていた。チャレンジリーグ3年目にして、目標を一気に「優勝」と「昇格」に引き上げ、気合十分で開幕戦を迎えた。

 バニーズ京都SCをホームに迎えた初戦、立ち上がりからアグレッシブさを見せた。前半2ゴールを上げた矢形海優は、その象徴といえるプレーを見せた。1点目は脇阪麗奈のパスに抜け出し、相手の裏をとってのゴール。2点目は相手GKからのこぼれ球を泥臭く押し込んだ。もともとガッツあふれるストライカータイプの矢形だが、オフ・ザ・ボールの動き、相手DFとのかけ引きなどのプレーを身につけたことで、すごみが増した。矢形はその後も前線に欠かせない選手としてチームに貢献し続ける。

 1点を返された後半には、ゴール正面のFKでサインプレーを敢行。林穂之香が決めて3点目を奪った。後半のアディショナルタイムに失点し、スコアは3-2となったが、シュート数は相手の4本に対して20本。相手を圧倒し、チャレンジリーグ3シーズン目にして初めての開幕戦勝利をあげた。


2015年4月5日、チャレンジリーグWESTの開幕戦。矢形海優(右)が2ゴールの活躍を見せた。

【その後】
 心身ともに成長し、「目指すプレー」と「できるプレー」がようやくシンクロし始めたのが2015年でした。掲げた目標に邁進し、次々にクリアすることでチームの士気は高まるばかり…見ていて心躍るシーズンになりました。
 あらためて当時の写真(上)を見ると、宝田選手も矢形選手も若い(笑)!わずか4年前なのに…成長著しいことに驚かされます。

文・橫井素子