セレッソでは、逆境で何をすればいいのかを改めて教えてもらった。
自分の力を全部出して、勝点を置き土産に…

長谷川アーリアジャスール

 7月2日、レアル・サラゴサ(スペイン)への完全移籍が発表された長谷川アーリアジャスール選手。突然の報告に、驚いた人も多かったはず。昨シーズンからセレッソに加入し、献身的なプレーとフレンドリーな性格で、ピッチ内外で存在感を発揮していたアーリア選手。移籍決定直後の心境を聞いた。


■移籍が決まった今の率直な気持ちを聞かせてください。
「ずっと海外に行きたいという気持ちを強く持ってきたなかで、やっとスタートラインに立ったというか、『これからやってやるんだ』という新たな気持ちもあります。でも、自分が大阪に来て、セレッソが1年で降格してしまったという事実もあります。ファン・サポーター、チームメイトなど、厳しい時も一緒にやってきた人たちのことを考えると、このタイミングで出るというのは、責任みたいなものはすごく感じました。ただ、なかなかこういうチャンスはないですし、いろいろ考えたうえで、挑戦したいという気持ちが強かったので、今回の決断をさせてもらいました。自分の気持ちを受け入れてくれたセレッソにはすごく感謝しています。あと1試合あるので、セレッソのために戦いたい。今、チームはいい流れに来ていますし、いい順位にいます。できるだけいい状態で出て行くという形がいいのかな、と勝手ながら思っています」

■「海外へ」の思いは、いつごから芽生えましたか?
「正直、プロになってから、すぐ行きたいという思いがありました。でも、タイミングや自分自身の身の回りのことで行けないこともあったし、果たしていくべきなのかと悩んだこともありました。やみくもに行けばいいとは思っていなかったですし、ステップアップ、次につながる移籍というのがいいと思っていました。そういう意味で、今回の移籍は次につながるということもありますし、監督(ランコ・ポポヴィッチ氏)が僕のことを知ってくれている人だということもありました。最初の挑戦としては、いい環境なのかなと思います。あとは、自分の頑張り次第で、どうにでもなるんじゃないかなと。スペインという国、レベルの高いチームに自分を置いてみて、どうなるのかというのも楽しみですし、挑戦したいと思います。
 海外に行っている選手に話を聞いてわかったのは、より結果にこだわった世界で、得点だったりアシストだったりでガラッと(人生が)変わる。それは行かないと経験できない部分。そういうのを肌で感じることによって自分の足りないところもわかるだろうし、サッカーを通して、違う国に行けるというのはなかなか味わえないもの。運も含めてラッキーだと思います。今から、チャンスをつかむか、つかめないか…。思い描いていたものが強かったので、後悔のないようにやりたいです」

7月3日、舞洲での最後の練習中に

■セレッソに来て、1年半です。印象に残っている出来事はなんでしょうか?
「そうですね…。セレッソに来て、確かに悔しい思いだったり、監督が何回も代わったり、(J2に)落ちてしまったり、悔しい思いは多かったかもしれないですけれど、逆にそういうときこそ、チームってまとまらなきゃいけないんだなとか、苦しい時こそ何ができるのか、逆境になったときに何をすればいいのか、ということを改めて教えてもらった気がします。もちろん、その時はセレッソをどうにかしたいと必死にやっていましたし、それを今後生かさないといけないし、絶対生きてくることだと思います。だから、セレッソ大阪に感謝したいなという思いはありますね」

■そういうふうに言われると、悔しい思い出ばかりで申し訳ないような気持ちにもなります。せっかく東京から大阪に来てくれたのに…と。
「全然!そんなことはまったくないですよ。ファン・サポーターの方もそうですし、セレッソに関わってくれたスタッフの皆さん、事業や運営の方もそうです。僕らの見えないところで関わってくれた方たちが同じ思いでセレッソを支えてくれていて、それに応えるのがプロ。そういう意味では、サポーターは選手以上に悔しい思いもあると思います。自分たちの生活の一部を削って応援してくれて、アウェイにも来てくれていることを考えると、選手の責任は大きいと思います。難しい状況にありましたけど、本当に強いチームならまとまれる。そういう意味では、自分としても未熟さがあったと思います。
今までも上がったり落ちたりしてきたチームが、この経験を次に生かさないと意味がないです。ひとりひとりがその意識をしっかり持ってやれば、今はJ2にいても、上がったときに絶対に強くなれる。あとは選手たちがやるだけなのですが、サポーターの皆さんも一緒に戦ってもらえれば、それが大きな力になります。引き続き、応援してもらえたらと思います」

Vol.4【後編】につづく

構成・文 横井素子
インタビュー:7月2日