失点が多かった前半戦、ここからは「接戦を勝ちきる力」「逆転力」が必要だ

大阪サッカークラブ株式会社 強化部部長 大熊 清

 明治安田生命J2リーグ全42試合のうち28試合が終わった。セレッソ大阪の成績は現在勝点45の4位。目標とする自動昇格(2位以内)までの勝点差は6となっている(第28節終了時点)。
夏にカカウ、フォルランという2人の外国籍選手が退団、長谷川アーリアジャスールがスペインリーグに移籍。そして、先月末にはエジミウソン、マグノ クルスが加わった。戦力が入れ替わる中、現況をどのように分析し、残り試合に挑むのか。チームを統括するこの人に聞いた。


■ここまでの28試合について、どのように振り返りますか?
「ちょうど3分の2が終わりましたが、前半(21試合)を終えたところでは、やはり失点も多かったです。監督も言っていましたが、攻守にイニシアティブを持つサッカーを目標にしているわりに、ベースの守備のところの失点が多くて、なかなか勝ちきれない試合がありました。一方で、コンスタントな得点力があるのかというと、それにも波があった。結局失点が多いと勝ちにつながっていかない、安定感がないというのは感じていました。
 後半に入って守備の安定というのは少しずつ出てきました。ですが、逆に今度は接戦で勝ちきる、逆転(勝利)がないというところで、守備力の上に得点力をつけなくてはいけない、と。これはエジミウソン選手、マグノ クルス選手の加入記者会見でも言ったのですが、勝ちきる力、逆転できる力をつけることが、接戦の多いこのリーグを大宮のように抜けるためには必要なのかなというところです」

■前半戦の失点の多さの要因は、どういうところだと分析していますか?
「全員守備全員攻撃で、監督の言う攻守にイニシアティブを持つということの90分間の持続性を見ると、前半できたけど後半できないとか、失点の内訳をみると、だいたい同じ時間帯、後半の疲れたころにしているとか、90分間通してやりきれていないというのは、正直ありました。また、監督の考え方と選手のやりきる力を考えたとき、理想として高いところを目指している分、前半は土台ができる過程だったというのはあります」

■夏にフォルラン選手とカカウ選手が抜けるのが予想されるなど、いってみれば特殊なシーズンです。さらに長谷川アーリアジャスール選手も移籍したことを考えると、難しいシーズンになりました。
「その点は、裏では準備をしていたつもりだったんですけど、クラブには経営というベースがあり制限があるのが当然で、ああいう形の移籍を受けて、さらに向上するチーム力をつけるというのは簡単ではないということがありました。さらに1週間ぐらい(という急な形)で予想外にアーリアの移籍もあったことで、簡単ではなかったことは確かです。でも、若い選手が頑張って競争したり、ベテランの田代、玉田らがフィットして支えてくれて、どうにか…という感じで来られたと思います。ここまで逆転勝ちが1試合しかないのにこの順位にいるというのも、そんなにはないこと。逆にそれは守備の安定が出てきたから。ただ、自動昇格の2位が見えてきてはいるけど、もっと近づけるかなというところで、順位でいうとやや下位のチームに取りこぼしているという現状ではあります」

■特にアウェイの愛媛戦(第27節)の敗戦はショックでした。先制したのに、追いつかれて、終了間際に逆転されてしまいました。

「これからというところで、心臓としてずっと頑張ってきた(山口)蛍が代表で抜けたり、扇原のケガ(第23節札幌戦での脳しんとうの影響)がありました。そこを橋本が埋めてくれてはいるんですけど、アーリアが移籍して、ゲームを作る・コントロールする選手が抜けるということが実際にはあった。ただ、代わりの選手で戦えないチームではないと思っているので、愛媛戦は精神的なものを感じざるを得ない試合でした。畳み掛けるというメンタリティーというか、そういうところはもっとやっていかないといけないかなと感じます」

■ケガ人については、キム ジンヒョン選手の離脱も痛かったです。
「そうですね。でも、ケガ人も代表による離脱も、越えられない力ではないと監督も思っています。代わりの選手でやれる、信じ合いながら戦う中で、『誰かが』じゃなくて、自分が』という気持ちかなと思います。綱引きじゃないけれど、人間って5人いると、人任せにして100%の力が出なくなるようなところがあるんですよ。試合に出ている選手だけじゃなくて、勝利に向けてチームとしてどれだけまとまるか。精神的にもそうだけれど、もっともっとチームになるための力というものを常に出していかないと。相手は、やはりセレッソに対しては特別に頑張ってくるので、それを乗り越えるためには、もっとやらなきゃいけないというのはあります」
Vol.5【後編】につづく

構成・文 横井素子
インタビュー:8月13日