大きいのは、試合に出ていない選手の存在
浦和時代の経験が今に生きている

関口訓充

 今シーズン移籍加入した関口訓充。かつてライバルチームで憎らしいほどの活躍を見せた彼は、今セレッソでなくてはならない大事な選手になった。攻守にわたる献身的な姿は、サポーターの心をすでにしっかりつかんでいる。

■関口選手というと、仙台時代のイメージが強いです。対戦相手としては非常にいやな選手でした(笑)。その頃のセレッソにはどんなイメージがありますか?
「当時はクルピ監督で、前線には(香川)真司とか(乾)貴士がいて、ほかにもアキ(家長昭博)や、外国籍選手も強力な選手がFWやボランチにいました。個の能力が非常に高くて、おもしろいサッカーをするなあというイメージです。細かいパスワークで崩してくるチームだな、と思いました」

■セレッソに移籍した直後は、「若いチームで、選手が少しおとなしいと感じる」と話していましたが、その印象は変わりましたか?
「うーん…まだまだだと思いますけど、徐々にチーム内の要求というのも出てきましたし、僕だけじゃなくて、モニさん(茂庭照幸)もいろいろ言ってくれたりしているので、チームとして、いい方向に進んでいるのかなと思います。ただ、練習中はもっともっと激しく、ケガさせろとは言わないですけれど、試合同様に球際は激しくいかなきゃいけない。そういうところは、まだ変われると思います」

■そのへんが変わっていけば、目標にも近づく、と?
「そうですね。練習でできないものは試合でもできないと思うし、練習の積み重ねが大きくなって、チームの力になっていく。そういうことを続けていけるチームが、強いチームになっていくのかなと思います」

前節(9月13日)の栃木戦は4-1の快勝でした。振り返ってどうですか? 
「最初に決定的なチャンスを決められなくて、風上に立っていた前半を0-0でいったら、ひょっとしたらまずいなあというのは感じていました。でも先制点を取れて、追加点もすぐ取れたのでよかったと思います」

■これで今季初の3連勝ですが、チームがよくなったところとは?
「結果的に今季初の3連勝になりましたけど、(3連勝の)チャンスが何回もあるなかで勝てなくて…ということが続いていました。選手的にはなんでだろうという思いや、多少の気のゆるみがあったのかなあというのはありました。何が変わったのかというと、特に変わったことはないですけど、サブの選手やメンバー外の選手が、どんな状況においてもいい準備ができているので、それがチームの強みとなっているのかなと思います。強いチームというのは、相手と戦う前に、まずチームで競争して勝たなければ試合には出られない。試合よりその競争のほうがきつければ、試合のほうが楽になると思うし、そういう意味で、レベルの高い、いい競争ができているのかなと思います」

8 /1 vs愛媛より

■競争という点では、関口選手自身も開幕2試合のあとはベンチを経験しています。その頃の心境について、どう振り返りますか?
「昨年、一昨年と浦和でやっていて、試合に出られない日のほうが長く続いていました。僕としてはつらいシーズンでしたけど、先輩の坪井(慶介)さんのようなワールドカップを経験している人たちが、メンバー外になっても日々の練習を大切にしていた様子を身近に見ていたことは、自分の中では非常に大きかったです。ああいう人がやることによって、後輩も絶対にやらなきゃいけないという雰囲気を作っていました。自分がここで切れても、自分のためにもチームのためにもならないと思って練習をしっかり続けられたのは、そういう選手を見ていたからかなと思います」

■試合に出られない時、気持ちを保つのは難しくなかったですか?
「やっぱりキツイし、試合に出なければ評価されないし、一番大変なのはコンディションを調整することですね。メンバーに入っていても試合に出なければ、試合前日もあまり練習をやらないので、試合翌日のオフも入れてほぼ3日間やらないということになってしまう。大変ではありましたけど、浦和時代の2年間そういう環境が続いたときに、コンディションを落とさないようにする努力をしてきたつもりだったので、そういうのも生きたかなと思います。そんな経験はしないのが一番ですけど、長くサッカーをやっていくうえで大事なことだったと思うし、どんな状況になっても、やり続けていけるという自信もつきました。自分の中では、無駄な2年だったとは思っていないです」

Vol.6【後編】につづく

構成・文 横井素子
インタビュー:9月15日