ポジション争いは毎年ある
試合に出ていないときに何をするか

 インタビュー中、とぼけたコメントをはさむのは相変わらずだったが、物腰も話す内容も、すっかりベテランのそれだった。
「チーム最古参」で「セレッソ愛の塊」と言われる酒本憲幸が、今だからこそ語る、今シーズンのこと、昨年のこと、そしてこれからの戦いについて。


前節の福岡戦 は、メンバー外でした。試合はスタンドで見ましたか?
「見ました。チャンスはあったし、押し込んだ時間帯もあったから、全体としたら悪くはないかなという印象でした。でも、シーズン終盤やっていうことを考えると、ちょっともの足りないかなあとも感じた試合でした」

■酒本選手がもの足りないと感じた点は?
「そうですね…最後、ゴール前でのアイデアだったりチームとしての攻撃という面では、もっともっと精度を上げないとアカンと感じたし、あとはもっと個人で打開していくことも必要。見ていておもしろいっていうか、細かい崩しみたいなものも欲しかったかなと感じましたね」

■確かに、決定的なチャンスがなかったわけではないだけに残念でした。
「ですね。やっぱり、守るだけでは勝ちはないんで、ね」

■福岡戦でベンチ外だったのは、コンディションの問題ですか?
「いいえ。僕のコンディションはバッチリ、元気ですよ(笑)。けど、その前に水戸戦 徳島戦 と引き分けが続いた試合で結構早い時間帯で交代したので、そういうところは監督からのメッセージというか、もっとやれよということなのかなと思っています。自分自身、できなかった部分というのはありましたし、競争は競争ですから」

■水戸戦、徳島戦の2試合連続の引き分けについては、もったいない印象でした。実際にプレーしている選手としてはどうでしたか?
「水戸戦までは4連勝といういい形できての引き分けでしたけど、水戸戦は負けてもおかしくない試合内容で、そこを引き分けた。同じような流れだった愛媛戦(第27節) は、最後に逆転されて負けで終わったけど、水戸に対しては引き分けた。もろちん、勝ちで終われるのがホンマに強いチームやと思いますけど、『この引き分けはいいふうにとらえよう』という話をして、次の徳島戦に臨んだんです。
 次は何が何でもっていう形で入ったんですけど、そこで勝たれへんかった。ファン・サポーターの方もガクッときたと思うし、やっている選手も『なんで?なにがアカンねやろ、なんやろ』と考えすぎたのかなと思いました、徳島戦に関しては。そういう時に、勝点の近い福岡との大事な試合を迎えて、自分たちでちょっとバランスを崩してしまったなという気がしました」

■昨シーズンは、チームでほぼ最年長といってもいいぐらいでしたが、今シーズンはベテランの選手がたくさん加入しました。雰囲気は変わりましたか?
「昨シーズンは試合に出ているメンバーでは最年長ということもありましたね。今シーズンはベテランの人がたくさん入ってきましたけど、若い選手もいっぱい入ってきました。人数が多くなったことで競争はそれだけ激しくなって大変なこともあるけれど、単純に明るくなって、楽しくなったというのは、まず感じます。もともとにぎやかですけど(笑)。ベテランの人たちも、気軽に僕らや若手にしゃべりかけてきてくれるので助かりますし、うれしいですね。いろんな経験をしている人たちなので」

■教えてもらえることは多いですか?
「グラウンド上がメインですけど、なるほどねって思ったりすることが多いです。ピッチを離れたら、冗談ばっかりですけど(笑)」

■そのあたりは、昨シーズンとは違う点ですか?
「いや、昨シーズンはイバ(新井場徹)さんがいてくれましたから。あの人がおらんかったら、昨シーズンは大崩壊していたと思います。ホンマに助かりましたね。今シーズンはそういうベテランの人がたくさんいるので、甘えさせてもらっています(笑)」

■若い選手たちはどうですか?
「生意気ですけど、あれぐらいのほうがいいです。僕自身も生意気やったと思いますから」

■さきほど出たポジション争いについてですが、今シーズンは特に熾烈になりましたか?
「そうですね。毎年ポジション争いはあるし、そのなかで自分が試合に出たい!というのは大前提にあります。けど、チームのことを考えたり、試合に関われてないときにサッカーや練習にどう向き合えるかということは、僕が若いときに上の人たちが教えてくれたことでした。当たり前のことなんですけどね。自分が試合に出て活躍して、2~3点ぶち込んでという目に見える活躍をすることがもちろん一番ですけど、こうやって歳を重ねて…まだ若いと思っていますけど…監督の求めることをしっかりやる、プラス自分の持ち味をどれだけ出せるのかというところで、練習から見せていかないとアカンと思っています。試合に出ている選手はチームの代表ですから、自分が出ない時は、出ている選手を100%応援しますよ、勝利のために。勝ってくれることを願って」

■ポジション争いをするなかで、自分が誰にも負けない点とは?
「やっぱり、左足の精度とか足の速さとか…(笑)。いや、負けてないのは…右足のボール技術、止めて蹴ってというところは持ち味だと思っていますし、攻撃面では負けたくないというのはあります。そこはサッカーの楽しみの1つになっていると思うので、意識しています」

Vol.9【後編】につづく

構成・文 横井素子
インタビュー:10月7日