もっとセレッソでサッカーやっていたい
セレッソでタイトルを獲りたい

 インタビュー中、とぼけたコメントをはさむのは相変わらずだったが、物腰も話す内容も、すっかりベテランのそれだった。
「チーム最古参」で「セレッソ愛の塊」と言われる酒本憲幸が、今だからこそ語る、今シーズンのこと、昨年のこと、そしてこれからの戦いについて。
Vol.9【前編】よりつづく


■10年以上セレッソにいる酒本選手ですが、昨シーズンをふり返ってみてどうですか?
「うーん…こんな言い方はプロ的じゃないかもしれないですけど、サッカーが楽しくなかったです…。なにがあろうと誰が監督であろうと、やっているのは選手。それはみんなが自覚していたし、ピッチに入ったら選手がメインなんやからと思ってやっていましたけど、それだけではなにもできなかったですね…ずっとヤバいヤバいヤバい…といった感じで続いていきました」

■降格が決まって、いち早くセレッソに残ると表明しました。
「普通に『来シーズンもお願いします』という感じで、それ以外には考えなかったです。そのことを『セレッソ愛が強い』とか言ってくれるのはうれしいですけど、J2に落としてしまったから当然や、という意思表示と言うたらカッコいいですけど、もっとシンプルに『もっとセレッソでサッカーやっていたい』という気持ちでした。変な話ですけど、降格して初めて、やっと地に足がついた気がしたんです。やっと結果が出て解放された、結局なにもできへんかったけど、気持ちが少しすっきりしたというか。ずっとモヤモヤした気持ちが続いていましたから」

■気持ちを切り替えて、もう一度J1に上げるために頑張ろうと?
「セレッソをJ1に上げるためにというより、セレッソでタイトルっていうのが、ずっと思い描いていることなので、やっぱり目標はそこなんです。『J1に昇格するのが先やろ』と言われたらその通りで、まずJ1に復帰するのが今いちばんしなければいけないこと。でも、自分がサッカーできている間に、僕はセレッソでタイトルが獲りたい。それが、いちばん大きいです」

■今シーズンは、関口訓充選手との右サイドのコンビが特長で、見ていて楽しいです。
「むちゃくちゃ、やりやすいですね。クニはホンマに気が利くというか、助けてもらってばっかり。もっとこう、前にパワーを使えるようにしてあげられたらいいんですけど、クニのほうがカバーだったり、はさみ込みだったりをしてくれて、そこからバーッと前に出て行くスピードも持っている。もっともっと、クニの力を引き出せるようにしていかないといけない、そうすればチームとしてもよりスピーディーな攻撃ができると思います。コミュニケーションの点でも問題ないし、サッカーのことをわかっているというか、ここが危ないなというのを感じて守備にも戻ってきてくれる。ホンマに助かる存在です」

■次の北九州戦はどういうメンバーの組み合わせで臨むかはわかりませんが、楽しみにしたいです。
「選ぶのは監督で、監督はボスなので、そこを信じへんかったら信じるところがなくなってしまう。僕らのボスである監督のことを信じないと空中分解するというか、おかしくなってしまう。試合に出る選手はチームの代表だと思って、思い切って自分のプレーをしてほしいし、出ていない選手はそれをサポートするというか応援する。いろんな形があると思いますけど。なにくそ!!と思うのも悪いことじゃないし、そう思われへんようになったら、サッカー選手として終わりかなぁとも思います。練習中は、それでいいと思いますよ、削り合うぐらいの強い気持ちでやるべき。でも、試合が始まったら、ね。福岡戦も、みんな必死で応援してましたよ。どのチームも波はあると思うけど、チーム一丸になること。一丸になったら、絶対にどのチームにも負けへんと思う。チーム一丸になるぞというところに集中してもいいかもしれないですね、今は。負ける相手なんてないですもん、一丸になったら」

■残り7試合、今後に向けた意気込みを。
「J1でタイトルを獲るということは、すなわちJ1に上がらなアカンということなんで、今シーズンの目標はそれしかないです。残り7試合になって、この順位でこの勝点差ということで、チーム全員がふがいないなとは思っています。でも7試合、まだ巻き返せる。勝負ごとなんで、7試合の結果はどうなるかはわからない。でも、全部勝ちに行くつもりで、選手は一人ひとり、絶対にやります。だから、ブレずに応援してほしいなと思います。セレッソが好きで応援してくれている皆さんには、これからも継続して応援してほしいなと思います」

■次節・北九州戦に向けての思いは?
「引き分け、引き分け、負けで順位も落ちて、ガクッとくるところやと思うし、次の試合がホンマにもう、口に出さずともわかっているいちばん大事な試合です。あとの試合のこと、ほかの会場の結果、そんなことは気にせずに、絶対この相手に勝つということを全員が思って練習から取り組んでいけば、簡単なことではないけれど絶対に勝てると思う。そういう気持ちで、1試合1試合臨んでいきたいです。ベテランの人たちが黙々と練習に取り組んでいるし、声を出して引っ張ってくれている人もいる。上の人が頑張ったら、そりゃ、みんなやることはやります。みんなチーム状況を理解していますしね。(山口)蛍も代表で頑張っているし、逆に蛍のポジションが1つ空いたということやから、みんなやると思います。次でガラッと雰囲気を変えて、ホンマのラストスパートという気持ちで試合を戦っていきたいです」

構成・文 横井素子
インタビュー:10月7日