結束して、
残り3試合を全力で戦いたい

 パウロ・アウトゥオリ前監督の退任が決まり、代わって就任した大熊清新監督。残り試合は、リーグ戦1試合とJ1昇格プレーオフという時期の交代は、果たしてチームを活性化するカンフル剤となるのか?監督交代に至る経緯や、決断に秘めた思い、J1昇格に向けてどうチームを率いるのかについて聞いた。
Vol.11【前編】よりつづく


■就任後、チームスタッフにアンケートを取ったと聞きました。どういう意図がありましたか?
「最終的には決めるのは監督ですが、スタッフひとりひとりがどういうメンバーが一番いいと思ってやってきたのか、システムもいろいろやってきた中でどの形がいいと思うかについて聞きました。選手は30何人いても、出られるのは先発の11人、ベンチ入り含めて18人です。今の競争と結束の中で、どういうメンバーを選択したらいいのかというのは、非常に大切です。それを最初に出してもらいました」

■それを参考にして、大熊監督がメンバー、システムを決めていくということですね?
「そうです。自分の頭の中にも(メンバーは)あるんですけど、大体一致していましたよ、スタッフの考えと。ただ、拮抗した試合の中では、スタートの11人よりも、ベンチを含めた18人、3枚のピース(交代枠)というものが、この3試合においては重要だと思います。特に3枚のピースというのは、大切なので、そこをどう考えて決断するかはまだこれからです。何人かケガをしている選手もいるので、もう少し議論して、自分が最終的に決めようと思っています。今回は、力を温存して戦うという試合ではないので、出し切ったあとの(交代の)3枚のピースというのは非常に重要です。今日、紅白戦をやって見てみたいです」

■どんな選手を起用したいと考えていますか?
「これはもう、目標を達成するためにというところから逆算して使いたいです。うまいから、発展途上だから、ではなくて、チームとして、メンタル含めて戦える選手、経験も大事で、経験があるということは、年齢が上の選手になるかもしれない。基本的には勝ちにいくために、うまい選手でアイデアも必要だけれど、最終的には、勝てる、戦える選手、いろいろ助け合って、チームとして勝てる、戦えるチームということになります。選手には、年齢とかで選ぶことはまったく考えていなくて、クラブ、チームの枠を逸脱することさえなかったら、性格とかで選ぶつもりはないから、自分に合わせろとかも言わない。戦える集団ということで選ぶ、と言いました。ただ、若さや勢いというものも必要かもしれないし、ここぞというときの経験も必要だとは思いますね」

■リーグの順位が4位で終わるか5位で終わるかというのは大きいです。最終節の東京ヴェルディ戦はどう戦いますか?
「引き分けでもいいよね、という声もあるのですが、引き分けでOKというサッカーは難しいです。そこはちゃんとしたベースを築きながら、勝ちにいくという気持ちは必要です。引き分けでいいというのは結果論であって、あまりそこは頭にはないですね。結果的に、引き分けになってしまうこともあるかもしれないし、(同点で)アディショナルタイムになったりしたら、はっきりさせないと、とかは考えますけど」

■そして、J1昇格プレーオフはセレッソにとって初めての経験です。
「ヴェルディ戦から、もうトーナメントのような感じですね。(直近2試合で)5失点していますから、トーナメントだと考えると、1試合平均2失点以上だと勝ちぬくのは難しいです。もう一度、失点しない、崩れないベースを作ることは必要だと思っています。それは実際に練習でやっています」

■新監督を迎えた選手たちの反応はいかがですか?
「自分も選手をやっていたのでわかりますが、体制が変わると、新たな環境、空気になるので、新しい刺激があり、新しい空気を吸って、全体で競争してやろうという気持ちにみんながなっていると思います。ただ、人間が持続するというのは簡単ではないので、スタッフを含めた周りが、この雰囲気を持続させるということですね。今の雰囲気がどんな時でも続くような、そんな集団にするのは非常に大切なのかなと思います。それには、みんなにいろいろな我慢があったり、苦境に屈しない強さも要ると思います。簡単ではないけれど、いろいろあってこういうシーズンになってしまうこともありますから、前から言っているように、フロントのマネジメント能力も含めたクラブ力を上げていくことが必要なのかなと思います」

選手にこまめに声を掛ける大熊監督。
チームにポジティブな空気を吹き込んでいる。

■泣いても笑ってもあと3試合、2週間の戦いになります。
「そうですね。結束して、3試合全力でやりたいです」

■サポーターの皆さんにメッセージを。
「記者会見でも言いましたが、セレッソは多くのスポンサーの皆さんに支えられている魅力あるビッグクラブです。そして、何よりも、本当に温かい、アウェイも含めて来てくれる熱心なファン、サポーターの皆さんに常に前向きに応援していただいています。社長も話していましたが、本当に世界一のサポーターだと思います。その皆さんと、目標を達成するために、クラブ一丸となって目標に向かっていきたいと思います」

【インタビューを終えて】
 インタビューのあと、舞洲のヤンマーグラウンドで行われた練習では、大熊監督の大きな声が響いていた。「よし、いいぞ」「そうだ、そうだ」というポジティブな声も耳に残ったが、選手の一挙手一投足に反応し、こまめに声を掛けているのが印象的だった。
 気になるメンバー…は23日の東京ヴェルディ戦で披露されるから、ここでは書かないが、選手たちのプレーに活気が戻ったことははっきり見て取れた。あとは、それを試合で出し切ることができるかどうか。勝ちきるムードを、スタジアム全体で作り出せるかどうか。
 あと3試合で、運命を変えることができる。叶わないかも、と思われた目標がつかめるかもしれない、残り270分。見逃すわけにはいかない。


構成・文 横井素子
インタビュー:11月20日