発展途上ながら、順調にきています

「今年は必ずJ1へ」を掲げた2016シーズン。大熊清監督が就任、充実の新戦力を得て、チームが始動して約1カ月が経った。
 タイキャンプ、宮崎キャンプでの調整具合は?新戦力はフィットしているのか?開幕戦の先発メンバーは?新キャプテンに求めるものとは…?
 キャンプ地・宮崎で聞いた、指揮官への開幕直前インタビュー。


■宮崎キャンプは終盤(インタビューは2月16日)ですが、ここまで大きなケガ人がほとんどなく、順調のようです。
「多少のケガはありますが、どの選手も長く離脱するものではないです。この時点で全員が揃ってケガなくやれているというのは、こと昨年と比べると差があるなと感じます。厳しい練習をしているなかでの、いい状態ということですし、(ケガ人が出て)選手が欠けていくとチームの雰囲気も変わっていきますから。ただ、目標が『J2優勝』であり『強くなって早くACLに出場できるチームにする』ということを考えると、まだ発展途上ではありますが…。でも、イメージとしては順調にきています」

■ケガ人がないというのは、フィジカルコーチを増やすなど、今シーズン手厚くした部分の効果が出ているのでしょうか?
「新しく来たフィジカルコーチは、いずれも経験があります。オリンピック(北京大会)代表チームでの経験がある山崎亨と、もう1人の田中等志はJクラブでやってきた経験があります。彼らが、選手たちが気持ち的にセパレートになったところを手厚く見るとか、個人の体づくりのメニューを作るとか、個人の面接もやって、しっかりコーディネーションのところもやっていこうとしています。たとえば柔軟性や強さが足りないというところなんかを非常に細かく見て、個人に意識づけをしっかりやっていることがモチベーションを高くして、きつい練習をしてもケガがないというのにつながっていると思います。相談しながら、練習の強弱はつけて休む時は休む。ただ、コンディションはほかのチームよりかなり上げたいという考えで、厳しいときはかなり厳しくやっています」

■よくコメントされているように、90分間、アディショナルタイムも含めた95分間、動く体力をつけるためということでしょうか?
「これは結果論なんですけど、タイですごく暑い中で41、2分ハーフの試合をやった。終わったら気温は38度ありました。暑いのはわかっていて、選手には理不尽なんだけれど、チームが苦しいときに立ち戻るためにはここで頑張ってほしいという思いがあってやりました。非常にいい紅白戦だったかなと思いました。それがタイで最後の紅白戦で、暑い中をみんなで頑張りきって日本に帰って来た、というのはまた自信になったんだろうと思います。
 ただ、前半5分、後半5分のアディショナルタイムを考えると100分間。『サポーターズコンベンション』で社長も言われていた ように、昨年失点した残り8分間の気持ちや体力はどうなんだというのは、ずっと言われていたこと。それを忘れずに続けられるかというところで、人間だから忘れてしまうので言い続けないといけないんですけど、できれば選手の中での自意識がちゃんとあって、頭の中に教訓として持っていられるというのが一番いいんです。昨年のことは知らない選手もいるけど、ビデオを見せて、やっていこうかなと思っています。昨年のことを知っている選手も、苦しい時には忘れてしまうかもしれないし、自動昇格に勝点15足りなかった、得失点差も得点も失点も足りなかった、(昇格できなかったのは)たまたまじゃないという謙虚さは、チャレンジャーとして持たなくてはいけないです。今年もここまでどんな相手にもチャレンジャーだということでやっていますけど、その気持ちが大切だと思います」

■昨年の課題として、得点力不足、1点取れるけれど2点目、3点目がなかなか取れなかったというのがありました。ここまでの練習試合では、複数のゴールが取れています。変化はありましたか?
「これも『サポーターズコンベンション』でお話しした ように、新加入選手については、ビデオを見ながら経歴などを見てきて、各ポジションで点を取っている選手というところを、予算を考えながら探してきました。得点するのはまぐれではなく素質みたいなところはあるので、できればチャンスメーカーじゃなくて点を取れる選手を補強するという考えでずっとやってきた。その結果が、まだ練習試合ですが、少しは出ているのかと思います。ただ公式戦では、お互いのモチベーションや戦略もあるし、今は強化の過程だというのもあり、また違ってくるとは思いますが、ほんの少しは兆しが出てきているとは感じています」

■攻撃陣では外国籍選手としてリカルド サントス、ブルーノ メネゲウ、そして柿谷曜一朗、杉本健勇選手というすばらしい選手が入ってきました。うまく融合できていますか?
「見ていただけばわかると思いますが、ホントに献身的にやっていると思います。最初に『戦術としては、たとえば相手が引いたときは、奪いに行けばゴールに近いから、自分たちは激しくボールを奪いに行きたい。それをやってほしい。攻撃と両方やってもらうというのは大前提だ』ということは言いました。それを今までは実行してくれていると思います。ただ、暑い夏や蒸し暑い大阪の気候があると、今やっていることを継続できるかなというのもあるし、セレッソに対して粗いサッカー、どんどん蹴ってくるサッカーをしてくるチームもあると思います。いろんな相手、いろんなサッカーに対応できるようにシミュレーションもしたいと思います」

■FWのポジション争いはし烈になります。新加入選手のほかに、玉田圭司選手や田代有三選手もいます。
「そうですね。今は正当な前向きな競争をやってくれていて、表現して結果を出して、またポジションを取り返してやろうということでみんな頑張ってくれています。ただ、変化や競争も必要だけど、固めることも必要なので、考えながら相談しながら固定するところは固定して、と考えています」

■チームに復帰する形になった、柿谷選手、杉本選手はチームになじみましたか?
「彼らは、外の空気を吸って外の水を浴びて、帰って来ました。すごく厳しくやっていますけど、『前の彼らはこういうことはやらなかった(でも、今はするようになった)』とはよく聞きます。私は今の彼らしか見ていないのですが、世界のスタンダードというものや、サッカーの本質の部分を要求されてきたなかで、それが当たり前なんだっていうのを若いときよりも体感したり肌で感じた部分があるから、今の彼らがあるのかなと。あとは気持ちの部分ですね。彼らが『本当にセレッソでやりたい。セレッソを強くするためには、どういうことをすればいいのか』ということを考えられる年齢になっているのが大きいのかなと思います」

■山口蛍選手という大黒柱が抜けたボランチについては、新加入選手を含めていろいろな組み合わせが考えられます。ボランチの選手起用については、どう考えられていますか?
「山村(和也)という選手は、心技体、経験を含めて、今非常に安定した力を出していると思います。だからレギュラー確定ではないけれど、昨年の(山口)蛍のように、ある意味、心臓みたいなところがあります。その選手の心技体がブレたり安定していないと、チームが安定しなくなる。そういう意味では、今、山村はそれに見合うパフォーマンスは出しているかなと思います。ずっとレギュラーでやってきたわけではないなかで、攻守にわたって前向きに高いレベルでやろうとしてくれています。
 また、ソウザも福岡との練習試合 で2得点したり、自分の個性を出している。蛍の移籍の可能性が高かったから、予算のなかでセレッソに合う選手を探したわけですが、まだ日本のサッカーに慣れていないところはあるけれど、徐々にフィットしてきているかと思います。外国籍選手は、3人とも非常に人間性がいいです。日本が好き、セレッソが好き、あとはみんなと仲良くやれています。キャンプから帰ったら家族も来て、また相乗効果も出てくるでしょう。仲がいいわりには、ピッチに入るとオンのスイッチが入って激しいサッカーをして、それもいいかなと思います。全然違う切り替えができていて。ピッチ内外でのオンオフの切り替えは世界ではスタンダードだし、日本人選手に対してもいい影響を与えるのでは、と思います。
 あとは、扇原(貴宏)や(秋山)大地、彼らは非常に伸びています。大地が練習試合で少し痛んだのが残念ですが、扇原については、(キャンプ中の練習試合で)昨年から今年にかけて一番いいパフォーマンスを見せていました。今年はいい体づくりをしているし、厳しさもある。彼らにも非常に期待していますし、もちろん橋本(英郎)もいいですからね」

Vol.16【後編】につづく

構成・文 横井素子
インタビュー:2月16日