正真正銘、ちゃんと向き合って勝って、J1に上がりたい

 「今年1年でJ1に上がって、みんなで喜んで1年を締めくくれるようにしたい」。開幕前のインタビューでそう語り、強い決意とともにスタートした今シーズン。セレッソ大阪に戻ってきた背番号8にとって、試練の1年になった。6月8日のV・ファーレン長崎戦 で負傷、手術と長期のリハビリを経て、リーグ終盤に復帰を果たした柿谷曜一朗。J1昇格プレーオフを眼前に、何を思うのか。
Vol.18【前編】よりつづく


清水戦(第34節)に敗れたあと、なかなか勝てなかったときにチームメイトにはどんな言葉をかけましたか?
「『頑張るのなんて当たり前。人のせいにするのは簡単やけど、プレーしているお前らが、見ている俺やサポーターにやってるなと思わせてから文句を言えばいい』。それは選手みんなに言いました。そういう難しい時期は今年何度もありましたね。うまくいかないから、みんなが原因を探しにいく、勝っている時は気にしない細かいことを、勝てないと『やっぱり××やから…』と言ってしまう。でも、そんなことはいらん!済んだことはもうエエって思った。『みんなやってて楽しいんか?しんどそうにやって負けて、自分らが楽しくないのに、見てる人が楽しいわけないやん』って。そんなこともチームのみんなには話しました」

■ケガをして出られない選手がそういうことを言うのは勇気がいることですね。
「そうですね。実際には試合には出られへんわけやから。でも、(キャプテンという)立場もあるし、いつも『俺はピッチに立たれへんけど』という言葉を付けて話しました。どこかで団結できていないというか、それはもしかしたらスタジアムも含めた雰囲気も含まれるかもしれない。この間(リーグ最終節)のブーイングにも、そんな印象を自分は受けました。これからみんなでJ1昇格プレーオフに向かっていくというタイミングで、勝つ雰囲気を作るものではなかったんじゃないかなと。でも、選手はもうみんなわかっています。俺がピッチに戻って、伝えたいことはちゃんと言葉で伝えているし。(山口)蛍もいるからね」

■チームメイトにはどんなことを伝えていますか?
「なにを言っても、あと2試合で終わる。負けたらどうなるとか、なにを言われるかとか、そんなことを考えてやるなら、やる前から負けたほうがいい。そんなこと、どうでもいい。勝負やねんから。どっちかが勝ってどっちかが負ける、そういう世界やから。でも、自分たちは勝つに値するプレーをできるし、勝つ自信もある、能力もあるんやから、自信を持ってやるだけ。どれだけシュートを打っても入らなくて、相手のたった1本のシュートが入って負ける、そんなことのあるのがサッカー。やる前から勝ったら、負けたら…どうしようと思う必要はない。ちょっとした『どうしよう』という気持ちが出たり、『どうしよう』と思っている人が増えれば増えるほど、よくない結果につながる、絶対に。それはトップチームだけに言えることではなくて、クラブスタッフ、アカデミーのスタッフ、セレッソに関わるすべての人に言えること。誰かがちょっとでも邪念みたいなものを持っていたら、それは1つになっていないということ。今のセレッソに欠けているのは、そこだと思います」

■大変な1年だったけど、あと2試合で目標を達成できます。今の心境は?
「メッチャ楽しみです。足の状態も良くなってきたし、コンディションも少しずつ上がってきて、また試合ができるんやって思うと」

■どんな試合になると思いますか?
「ホームだろうがアウェイだろうが、相手がどこであろうと一緒だと思っています。4位やから準決勝は引き分けでいいとか、そんなことは絶対に考えていない。結果的に引き分けになることはあるかもしれないですけど。引き分け狙いというのもサッカーだけど、俺は勝ちに行く。当たり前やと思います。点を取ったら勝てるんやから…引き分け狙いでいって引き分けられるわけがない。京都は当然、最初から点を取りに来る。でないと勝てないから。もし決勝で松本と当たるなら、同じように絶対に点を取らないといけない。それなら準決勝の京都戦から点を取りに行くべき。俺らは俺らのサッカーをやればいい。負ける気はないし、自信を持ってJ1に上がれる。J1に上がるためだけのサッカーをやって上がったところで、将来にはつながらないし、今後の自分たちが得るものはなにもない。取りあえずJ1に上がって、また落ちて、というのはどうなのかなと思う。正真正銘、ちゃんと向き合って勝って、J1に上がりたい。とにかくみんなが絶対に上がれると信じること。全員が信じることでいい方向に流れていく、そう思います」


構成・文 横井素子
インタビュー:11月23日