なでしこリーグ1部復帰を決めた2019年。リーグカップ2部も制覇し、セレッソ大阪堺レディースにとって上々の結果を得たシーズンとなった。その先頭に立ったのが林穂之香。なでしこジャパンに初選出され、2020年は東京オリンピックへの期待も膨らむキャプテンに話を聞いた。
特別インタビュー【後編】につづく 

アクシデントが続き苦しかったリーグ戦
最後は自らのゴールで昇格を決めた!

■降格してなでしこリーグ2部で戦うことになった2019年でしたが、どんな気持ちで臨みましたか?
「シーズン前は、1年で1部に絶対行きたいという思いがあって、自分としてはモチベーションはそんなに低くはなかったです。『頑張ろう!』という気持ちでした」

■あらたに岡本三代監督が就任、指揮を執ることになりました。
「岡本監督はもともとガールズを指導していました。まったく知らない監督が来たということではなかったので、スムーズに入れたと思います。岡本監督はミーティングをよく開いてくれて、コンセプトをわかりやすく説明してくれました。また、それまでなかった自分たちで考えてプレーするというところで、リーグカップでは試合前のミーティングを選手が進行しました。いつもは監督がやっていること、攻撃・守備において意識するポイントを選手たちが出して、自分たちでホワイトボードに端的に書いて、これをやっていきましょうという形で試合に向かいました。考えてサッカーをするというのが少しずつ浸透するきっかけを作ってもらったと思います。それは2019年が初めてでした」

■ホーム開幕戦で愛媛FCレディースに敗戦 するなど、スタートはあまりよくなかったです。
「勝ててないから雰囲気が悪いのか、もとから雰囲気が悪いから勝てなかったのか。どちらが先かわからないですが、今考えると雰囲気がよくなかったのかな、と思います。2部だからいけるんじゃないか、みたいなところもみんなの中でちょっとあって、詰めが甘いところはあったかと思います。こんなはずでは…という気持ちは個人個人では少なからずあったかもしれません。でも、もっとそう思ってほしいなとも感じました。選手同士ではあまりそういう話はしなかったです」

■ケガ人などでメンバーがそろわず、大変だったこともありました。
「そうですね。でも学芸(大阪学芸高等学校女子サッカー部)の選手が来てくれて、すごく助かったなと思います。(岩本まりの選手が)点を取ってくれたし、みんなに『ありがとうございます』という感じです(苦笑)。選手たちは、大変だなとはあまり考えていなかったと思います。やるしかないという感じで」

■夏のリーグカップ2部決勝(ちふれASエルフェン埼玉戦)、少し流れが変わったかなと感じました。
林選手が2得点して逆転勝利、執念を見た気がしました。

「振り返ると、初めて1部に上がった時(2017年)もリーグカップに優勝しているので、ちょっとしたターニングポイントはあの優勝にあったのかもしれないなと思います。
 決勝は失点してあとがなくなって、やるからには絶対に負けたくなかった。そのときは必死、がむしゃらという感じでした。ものすごい暑さのなかでの試合でしたが、セレッソの子はみんな頑張れるし、気持ちのところは持っています。そういうところはすごくいいいと思うし、すごく好きなところです。それに技術、戦術をもっとプラスしていけたらなと思います。勢いや気持ちを巧さでいなしてくる、かわしてくるのが、なでしこ1部の上位チーム。そういう相手に負けたくないというのがあります」


2019なでしこリーグカップ2部決勝では2得点。優勝に大きく貢献した林

■ただ、そのあとのリーグ後半戦のスタートも勝ちきれない試合がありました。
「もったいなかったですね。(第11節・愛媛FCレディース戦 は)落としたらアカンところを落としてしまいました。若い選手が多いというのもあって、ゲームの運び方では、先のことも考えてアウェイだから引き分けで終わろうというのはあまりない。ほかのチームがどうかはわからないし、そういう考え方が正しいのかもわからないけど、『残り時間が少ないから、最悪引き分けでも…』みたいなプランを持っておくのはあるかなと感じました。それがセレッソのいいところだけど、勝ちにいった結果、逆にやられて負けてしまった。どっちを取るのかというのは難しいですけど…」

■最後は2位になり、1部・2部入替戦に出場することになりましたが、林選手はリーグ最終節(スフィーダ世田谷戦)で負傷しました。
「左足首を痛めて、結構腫れていたし痛かったんですが、自分としては完全に治らなくても入替戦はいけるかなという感じでした。少しでもよくなるように、と無理せずに準備しました。結果として出場することができましたが、アクシデントはここでもありました。入替戦第2節の前に(松原)優菜がケガをして、試合が始まってすぐのタイミングで(筒井)梨香も負傷して。それまでにも(宝田)沙織ちゃんもケガをしたり、登録の関係で出られない選手(特別指定選手の高和芹夏、浜野まいかは入替戦には出場できず)がいたり、いろいろありました」

■アクシデントがあったなか、勝負の入替戦第2節 はどう戦いましたか?
「センターバック2人(松原優菜、筒井梨香)がケガで、田畑晴菜選手と前半途中からは松本奈己選手が入りました。いつもと違うディフェンスのメンバーだったので、守備に重心を置いたというか、大丈夫かなと気にかけていた部分はありました。奈己はほとんど初めてぐらいの試合だったし、入替戦でセンターバックを途中からするなんて、絶対緊張するじゃないですか。もともとうまいから、大丈夫だろうとは思いましたが、慣れるまではいつもより後ろを気にかけてプレーしました」

■試合を決めたのは、林選手のアウェイゴールでした。
「前半は結構押されていたので、点が入るならごちゃごちゃした感じで押し込むのか、ショートカウンターからミドルシュートというのがあるぐらいかなと思っていました。(ゴールは)予想通りの形でしたね(笑)」

■入替戦第2節のゴールやリーグカップ決勝での2得点、大事なところでの決定力はさすがでした。
「リーグでは、特に最後のほうで勝点的にも絶対に勝たないとアカンという流れになって、でも(宝田)沙織ちゃんがケガをしてしまった。そこで、自分が点を取らなければ…という気持ちが出てきたというか、いつもより強引にゴールを目指す気持ちが強くなりました。いつも頼っているつもりはなかったけど、『やっぱり得点は沙織ちゃんに頼む』みたいな気持ちがあったんだな、ということがわかりました。これは沙織ちゃんともしゃべりました(笑)」


入替戦第2節で1部昇格を決め、サポーターに挨拶
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林穂之香選手プロフィール(選手名鑑)
レディースコラム「桜なでしこ物語」

インタビュー・構成 横井素子
インタビュー:2019年12月19日