なでしこリーグ1部復帰を決めた2019年。リーグカップ2部も制覇し、セレッソ大阪堺レディースにとって上々の結果を得たシーズンとなった。その先頭に立ったのが林穂之香。なでしこジャパンに初選出され、2020年は東京オリンピックへの期待も膨らむキャプテンに話を聞いた。
特別インタビュー【前編】 

なでしこ1部へ、東京五輪へ。
チームとしても個人としても成長の1年に!

■2020年は、再びなでしこリーグ1部で戦うことになります。
「2年前に初めて1部に昇格したときは、楽しみな気持ち、『1部のチームと試合ができるー!』という感じでした。今は、楽しみなのはもちろんありますけど、『前回は1年間コテンパンにやられていたけど今度は絶対に勝ちたい、勝つにはどうしたらいいのか』ということを考えます。このままでは無理やな、勝てないなという気持ちが強いです。技術的に1人ひとりがもっとうまくならないといけないし、チームとしてもプランをみんなで共有できるかというのが大切だと思います。ただ、そんなに急には巧くならないので、ギリギリの試合を自分たちのものにできるかどうかは、気持ちの部分が大きいです。難しいなあと思います。だから、みんな『このオフから頑張ろう!』と言っています。リハビリ組も頑張っています。ここからの頑張り次第でいけるかなと思っています」

■12月には、初めてなでしこジャパンに選出され、EAFF E-1 サッカー選手権 2019 決勝大会(E-1選手権)に出場しました。初代表の感想は?
「若い選手、2歳ぐらい歳上の選手が多くて、そこまで緊張することはなかったです。長谷川唯さん(日テレ・ベレーザ)たちの年代が多かったのですが、パプアニューギニアで行われた2016年のU-20女子ワールドカップに行かせてもらっていたので、そこで一緒にプレーする機会があって、知っている選手が多かったのがすごく大きかったです」

■E-1選手権では、初戦のチャイニーズ・タイペイ女子代表戦に途中出場、後半45分間プレーしました。自分の持ち味は出せましたか?
「試合の時はちょっと緊張はあったのですが、のびのびというか、サッカーを楽しんでできたし、出たらこういうプレーをしたいというものや積極性は出せたかなと思います。点は入りませんでしたが、シュートも打てましたし。中2日とかで試合があるので、バチバチする練習はあまりなかったです。でも、1試合だけの国際親善試合では招集されても出られない選手が結構いたなかで、今回は3試合ある大会だったので、大会の3日ぐらい前に(追加招集されて)初めて行った自分が試合に出してもらったのはすごくよかったなと思います」

■東京オリンピックまであと半年ほどですが、メンバーに食い込んでいく手ごたえはありましたか?
「このままでいったらスタメンとかは絶対無理だし、選ばれるかどうかもギリギリというか、頑張って選んでもらえるかもらえないかぐらいのところかなと思います。でも、今からオリンピックまでの7カ月半ぐらいで、一番成長した選手、伸びた選手だなと思ってもらえたら可能性はあるかなと思いました」

■具体的に、7カ月半の間にしなければいけないこととはなんでしょうか?
「まず体、フィジカル的な部分です。スピードとかパワーとか。身長はそんなに高くないということもありますから、スピードとかパワーというところの改善。ターンとか切り返しとかの部分を少しでも上げないと、メンバーに入ることもそうだし、いざ試合をしたときに海外の選手に付いていけるか、勝てるかというところがあります。あとは技術的なところもそうです。練習の映像を見ると、ミスはしていないし、みんなの中で滞りなく、スムーズにプレーできているんですけど、自分自身がやっている感覚では全然できていない、合っているのかなとめっちゃ思ってしまうんです。映像と感覚にすごくギャップがある。自分に自信がないからなのか、緊張しているからなのかな、と思ったり…たぶん、そうかなと。まだ遠慮しているんですかね、メンタル的なものがあるのかも。パプアニューギニアのU-20女子ワールドカップのときも同じような感じはあったので、早くそこを埋めていかないといけないなというのが課題です」


すべての面でレベルアップを!強い向上心を持って2020年に臨む

■それはポジティブな手ごたえだと?
「はい、そう感じます。今回、代表チームとしてずっと一緒にやらせてもらったおかげで、もっと強くオリンピックというものを意識するきっかけになったし、しなければいけないことが明確になりました。追加招集だったけど、行けてよかったと思います」

■2020年の意気込みを!
「セレッソとしては、2年前の悔しさもあるので、とりあえず試合には勝ちたいという気持ちが強いです。そのためになにをしたらいいかという覚悟は、前よりも持って、ちょっと違った気持ちで練習から取り組んでいけるんじゃないかと思います。とりあえずみんなで勝ってみんなで喜びたい。試合が終わって、みんなでイェーイみたいな写真を撮りたいです(笑)。
 個人としては、まずセレッソでしっかり試合に出て、ボランチから点を取ったりしてチームを勝たせることができる選手になること。『林だったらやってくれる』と思わせる選手になりたいと思います。そして、この7カ月半で成長して、オリンピックを目指したいと思います


チームみんなで笑顔になれるシーズンに!こんなシーンを1つでも多く見たい

 ピッチで見せる闘志むき出しのプレーとは違い、普段はおっとり、まったりした印象だ。質問にもゆっくりと言葉を探しながら答える。

 今回のインタビューは、E-1選手権から帰国した翌日に行った。初めてのなでしこジャパン選出と試合出場は、こちらの想像以上に鮮烈な経験だったようで、前向きなコメントがあふれ出た。
 東京オリンピックに向けたメンバー入りは狭き門で、争いは苛烈。ここまでコツコツと努力を積み重ね、実績を積み上げてきた林だけに期待は膨らむ。本人の言う「7カ月半で一番成長した選手、伸びた選手に」なることができたなら…と、うれしい想像をしてしまう。

インタビュー・構成 横井素子
インタビュー:2019年12月19日

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