12月6日(日)2015 J1昇格プレーオフ決勝
アビスパ福岡 - セレッソ大阪 (15:35KICK OFF/ヤンマー)
試合写真・コメントなど チケット
----------

「いつも通りに戦う」
そう話す選手たちの表情は晴れやかだ。勝たなければいけないでもなく、負けたくないでもない。彼らの胸の内にあるのは、リーグ戦を12戦無敗、8連勝で締めくくった自信と、まだ何も手にしていないというチャレンジャーとしての心構え、そして、個の能力で高いC大阪をリスペクトする気持ち。選手たちは、なんの邪念もなく、ただ純粋に目の前の試合に勝つことだけに集中している。井原正巳監督は、博多三大祭りのひとつである「放生会」(9月12日~19日)に、「人事を尽くして天命を待つ」と書いた提灯を奉納したが、いままさに、その心境で福岡はプレーオフ決勝戦に臨む。

 その大一番を前に、井原監督は次のように話す。
「セレッソ大阪は監督も代わっているし、リーグ戦で2勝した相手とは別のチームとして戦いたい。もっとも、リーグ戦の2試合も簡単な試合ではなかったし、実力も、経験もある選手がたくさんいる。より難しい試合になると思っている。けれど、我々はリーグ戦と同じ気持ちで、1年間の集大成として戦う。自分たちの力を信じて戦えば、必ず結果は付いてくると思っている」

 井原監督が最も警戒するのは、豪華な顔ぶれが揃う攻撃陣。玉田圭司、田代有三、エジミウソンら、いずれも、能力と経験を併せ持つ選手ばかり。「どうやって抑えるのかがポイントのひとつ」と話す。そして、山口蛍。今シーズンの2度の対戦では、山口に仕事をさせなかった印象があるが、だからこそ、山口自身も雪辱に燃えているはず。「運動量があり無理が効く選手。ミドルシュートも、自ら飛び出していくシーンもあり、さすがは代表選手と思わせる選手。チームとして、しっかりと抑えないといけない」と井原監督も警戒心を高めている。

 ボール支配率ではセレッソが上回るものと思われるが、「いつも通り」に戦う福岡は、粘り強く戦って、少ないチャンスを確実にものにすることが勝利への方程式。最大の武器は堅固な守備と、「守」から「攻」への切り替えの早いカウンターだ。特にポイントとなるのは能力の高い相手に対して数的優位を作って守れるかどうかということにある。そして、キーマンとして注目されるのは、やはりウェリントン。個の能力に頼るというよりも、組織で戦う福岡だが、その中でも、攻守に渡ってウェリントンの存在は光る。準決勝では自らのゴールで福岡を決勝戦に導いたが、前線からの献身的な守備と、攻撃の起点として、福岡のゴールのほとんどに絡むウェリントンにかかる期待は大きい。

 また、過去のプレーオフでは、リーグ戦3位のチームが勝ち上がっていないという、福岡にとっては不利なデータもあるが、井原監督は「過去のデータはそうなっているかも知れないが、今年の我々はそういうものを打ち破って勝利につなげて来たし、むしろ、変えてやろうというモチベーションにもなっている。チームとしても、選手としても、そういうデータは気にしていない」と話す。どんな状況であっても、どんな対戦相手であっても、それに惑わされることなく、自分たちのやるべきことだけに集中して勝利を重ねて来たのが福岡。その姿勢は今シーズン最後の戦いでも変わらない。

 いずれにせよ、福岡にとって、激しく、難しい試合になることは間違いない。だが、それは福岡に与えられた最後のテスト。今までと同じように、目の前に立ちはだかる壁を打ち破って、歓喜の瞬間を迎えるために、福岡はヤンマースタジアム長居のピッチに立つ。彼らの目には「昇格」の2文字しか見えていない。

文・中倉一志