5月15日(日)2016明治安田生命J2リーグ第13節
セレッソ大阪 - レノファ山口FC (16:00KICK OFF/金鳥スタ)
試合写真・コメントなど チケット
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 はじめまして――。ぺこりと頭を下げて、キンチョウスタジアムに入る。「おお、ここが…」。きょろきょろしながら、昨年はもとより一昨年までなら全く想像もできなかったピッチを踏み、あるいはそのスタンドに立ち、ひとしきりの感動をすることだろう。でも、「新参者なので優しくしてください」とまでは言わない。新参者だから当たって砕けていいとも思っていない。
 上野展裕監督は「志のサッカー」という言葉を繰り返す。汗をかき、ひたすらに走り、気持ちの入った戦いを見せるのが流儀だ。シュート数で上位に入る福満隆貴も「1人が2人分の運動量で向かわないといけない」と話す。新参者だけど本気でぶち当たり、最後まで戦い抜く覚悟で、ホイッスルを迎える。

 レノファ山口FCは、山口県教員団を母体に2006年に改組して誕生した。地域リーグの中国リーグで、Jリーグを目指すチームとしては決して短くない期間をもがき、のちにJFL、そしてJ3と階段を上がってきた。
 昨季のJ3での得点力は驚異的なもの(36試合96得点)で、そのカテゴリーをチェックしていなかった方でも活躍ぶりは聞いたことがあるかもしれない。そして今季も攻撃は底知れず、前節こそ無得点に終わっているが守備の堅いと言われるJ2にあっても12試合で17ゴールを挙げている。 

 ベースになっているのはパスサッカーだ。自陣で回すのではなく、小池龍太と香川勇気の両サイドバックも高い位置に上がり、敵陣内で間を取って回していくのがスタイル。ただ、目の覚めるような縦パスから一気にゴールに迫ることも多く、攻撃のバリエーションは多彩で掴みどころがない。オーソドックスなJ2のサッカーというよりもJ1のそれに近く、顔ぶれにJ1を経験した選手は少ないが、セレッソ大阪としても楽しんでサッカーをやれるのではないかと思う。

 でも、今節でスポットライトを当てるのは前線ではない。華やかな攻撃陣に注目が集まってしまうのだが、JFLとJ3でフル出場し、今季もここまで全ての試合に出ている守護神・一森純に注目してほしい。ピンと来た方もいるはずだ。

 一森はセレッソのU-15、U-18に育ち、関西学院大を経て山口でプロデビューした。幼少期からピンク色のユニフォームに憧れ、「小さい頃からプロと言えばセレッソ。親とサッカーを見にいくとなれば必ずセレッソの試合だった」と回顧。トップチームに所属することは叶わなかったが、「サッカー選手としての基礎の部分や人間性を育ててくれたのはセレッソ。感謝の気持ちでいっぱいです」と話し、憧憬のスタジアムで成長した姿を見せる。
「実感は、試合が終わってから湧くのかなと思う。今は山口をいかに勝たせるかで頭がいっぱい。個々の選手としてやるべきことをやっているので、セレッソ戦だからという気負いはない」と勝負にももちろんこだわっている。

 はじめましての輪の中、一森はちょっと特別な「ありがとう」の思いを重ねて試合に入る。けれど、そこにどんな景色が広がっていようとも、11人に「自分たちはチャレンジャー」という意識は変わらない。新参者、大阪でも胸に志、目を輝かせ走ってみせる。

 文・上田真之介