7月12日(水)第97回天皇杯3回戦
アルビレックス新潟 - セレッソ大阪 (19:00KICK OFF/デンカS)
試合写真・コメントなど チケット
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 今シーズン、3度目の対戦となるセレッソ戦は、新潟にとってはとても残念なことに、顔を合わせるにしたがってチーム状況が悪くなっている。

 最初の対戦となった5月のルヴァンカップでは、三浦文丈前監督が休養し、片渕浩一郎コーチが暫定的に指揮を執った。そして数日の準備期間で何とか守備を立て直し、粘ったものの、相手陣地からのロングフィードが大きく弾んでGK守田達弥の頭上を越え、ネットを揺らすという、弱り目にたたり目のようなゴールを喫して敗れた。

 新たに呂比須ワグナー監督を迎え、再出発したあと迎えたのが6月のリーグ戦第14節。新監督となってリーグ戦は1勝1敗と、何とかきっかけをつかみたい一戦だった。しかし68分まで粘りながらPKで先制を許すと、守備が崩壊。立て続けに失点して0-4と大敗した。

 このキンチョウスタジアムでの大敗を含むリーグ6連敗中に迎えるのが、今回の天皇杯だ。6連敗はクラブワースト記録、折り返したリーグは勝点わずかに8で最下位と、チーム状況はどん底といってよい。

 ここまで苦しい状況だからこそ、新たな力の台頭が切望されるのだが、その候補の1人がMF端山豪である。プロ2年目だが、慶応大学在学中の2015年後半も特別指定選手として新潟でプレーし、“アルビ歴”は3年目だ。

 15年も最後まで残留を争う厳しいシーズンだったが、端山は攻撃的MF、ボランチとして試合に絡み続けた。チームにとって大一番となった2ndステージ第14節の松本戦では、新潟初ゴールとなる決勝のミドルシュートをたたき込み、残留への勢いを一気に加速させた立役者だ。

 キレのあるドリブルと両足からの強烈なシュート、“サッカーIQ”の高さを感じさせるプレーは強気でもあり、チームの次世代を担う逸材であるのは間違いない。ところがプロとなった昨シーズン、そして今シーズンと、レギュラー争いに食い込めないままでいる。創造性で勝負したがるがゆえに、プレーが高いレベルでの安定を欠くのが、その理由だ。

 しかし、“サッカーIQ”の高さを生かすことができれば、きっかけをつかむのは十分に可能だ。チームから提示される分析を待たずして、セレッソ、自分たちの現状も明快に把握している。

「セレッソは勢いがすごい。前線でいい距離でつないで崩すのがうまいし、サイドからのクロスに対しても力強いプレーをするハイレベルなチーム。でも僕らも浦和を相手に前節(第18節●1-2)、途中までしっかり守ることができていた。守備のベースは構築されています」

 出番があれば、4-2-3-1のトップ下に入ることが予想される。このポジションを争っているのはチアゴ ガリャルドだ。技術が高いブラジル人MFは、ピッチのどこであろうと隙あらばラストパスを狙うような強引さが魅力ではあるが、しばしば裏目に出ることもある。何より、守備意識がまだまだ物足りない。

 対する端山は、客観性で勝負する。

「しっかり守備をしつつ、攻撃で結果を残せるか。それが今のチームの前線に求められていること。セレッソ戦は前からボールを奪いに行く時間もあれば、押し込まれる時間もある。どちらにしても、全員で共通意識を持って守ることが大事だし、押し込まれているときこそ状況を逆手に取って、カウンターのチャンスを狙いたい」

 明日の天皇杯を終えると、中断を挟んでいよいよ残留に向けての正念場に突入する。良い守備から良い攻撃につなげる、新潟本来の感性を備えたプレーメーカーの台頭に期待が膨らむ。トレーニングのみで、くすぶっている場合ではない。

文・大中祐二