9月16日(土)2017明治安田生命J1リーグ第26節
サンフレッチェ広島 - セレッソ大阪 (18:30KICK OFF/Eスタ)
試合写真・コメントなど チケット
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「広島、やばいよ」
 口々にセレッソ大阪の選手たちが話しながら、キンチョウスタジアムの廊下を足早に通り過ぎた、5月14日の光景を忘れることはできない。2-5 。内容的にはそれ以上の完敗を喫した広島にふさわしい形容詞は、まさに悪い意味での「やばい」だった。

 あれから4カ月。
J1復帰初年度のセレッソは優勝争いに絡み、2012年から4年で3度の優勝を果たした広島は監督が交代(7月3日)し、降格圏(現在16位)に沈んだまま。現時点でどちらに勢いがあり、どちらに力があるか、それは言うまでもあるまい。

 就任から2カ月が経ったヤン ヨンソン監督は、基本を徹底的に繰り返すことでチームを再整備させるべく指導してきた。再建の定石はまず守備から。3-4-2-1から4-2-3-1とフォーメーションを変更し、右サイドバックにはもともとセンターバックの丹羽大輝をコンバート。左サイドには運動量とスピードに秀でた高橋壮也を抜擢し、ラインディフェンスを教え込みつつ、コンパクトなゾーン形成を主張した。すべてがうまくいっているわけではないが、最近のリーグ戦3試合で1失点(1勝2分)と成果は着実にあがっていることは、指摘しておきたい。

 ただ、リーグ2位の得点力を誇るセレッソを相手にして、どういう守備が構築できるのか。ビルドアップ段階でのミスがまだまだ目立っている広島にとって、ショートカウンターに抜群のキレを見せつけるセレッソの質の高さは脅威そのもの。「カウンターだけでなく、セットプレーからもコンビネーションでも、あらゆる形で得点できるのがセレッソだから」という丹羽の警戒心は当然だ。5月14日の大敗時も、広島はセレッソの多彩さの前に手も足も出ず、自ら崩壊していった。

 前節の新潟戦で見事な守備を見せつけ、相手の切り札であるホニを完封した椋原健太は広島の希望の星ではある。ただ、セレッソからの期限付き移籍中ということで今節は出場できない。よくなってきたとはいえ、まだまだサイドの守備に不安を残す広島にとって、「椋原がいてくれれば」という気持ちを抑えきれないが、契約条項ならば致し方ない。とはいえ、サイドで相手に自由を許し、水沼宏太や柿谷曜一朗らが躍動すれば、千葉和彦や水本裕貴が「最も要注意な選手」として名前をあげた杉本健勇を抑えことも難しくなる。

「だからといって、ラインを下げすぎてはいけない」
丹羽の指摘である。
「むしろこちらがボールを保持し、相手を押し込むことができればベターだ。特にセレッソのサイドの選手は攻撃的な能力は高いけれど、守備にも長けているわけではないから。縦と横、どちらもコンパクトに保ち、ラインを細かくコントロールしながら戦えば、チャンスはある」

 別メニュー調整を続けながら試合に出場していたFWパトリックは今週、久しぶりにすべての練習に参加し、状態の向上も見受けられる。セレッソの攻撃陣を相手にしっかりと守り、いい形での攻撃ができれば勝点を奪えるチャンスも出てくるはずだ。

 まずは我慢。そして、今できることの全てを出し切る。セレッソから勝点を奪うためには、そこに尽きる。

文・中野和也