12月2日(土)2017明治安田生命J1リーグ第34節
アルビレックス新潟 - セレッソ大阪 (14:00KICK OFF/デンカS)
試合写真・コメントなど チケット
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 杉本健勇との“対決”を、心待ちにしている男が新潟にいる。とはいっても、ピッチ上で直接マッチアップする可能性は、ほぼゼロ。なぜならポジションはFWで、ピッチ上では対極にいるからだ。
 彼の名は河田篤秀(かわた・あつし)。健勇と同じ1992年・大阪生まれ。今年4回目となる新潟の「相手チーム情報」、その1回目 となる5月のルヴァンカップで対戦時にも取り上げたので、『お、あのカワタか?』という方もいらっしゃるのではないだろうか。

 アルビレックス新潟シンガポール(以下、新潟S)から今シーズン加入した河田はセレッソ大阪U-15出身の“セレッソOB”。健勇は同期である。河田のU-18昇格の夢はかなわなかった。U-15の途中でFWから右サイドバックにコンバートされ、馬力を生かすことが期待されたものの、アピールし切れなかったからだ。
 阪南大学高校、阪南大学を経て新潟Sに加入したのは2年前。昨シーズン、チームの3冠に貢献し、リーグのMVPにも選出され、今シーズンから新潟に加入した。新潟デビューを飾ったのは、そのルヴァンカップ・セレッソ戦 だった。79分、途中交代でキンチョウスタジアムのピッチに立った。
 だが、そのときは「楽しめなかった」という。1-0で試合に敗れたこともある。が、なにより開幕前のキャンプから悩まされる右足首の痛みがピークに達していたからだ。試合のメンバーに、なかなか絡めない。足首も痛い。滅入る気持ちに喝を入れてくれたのが、柏から今シーズン加入したベテランGK稲田康志だった。7歳上の稲田がセレッソU-15の先輩だったというのも、またなにかの縁だろう。試合のメンバー外の選手たちによる居残り練習など、ともに過ごす時間が自然に多くなった稲田から、あるとき、ぴしゃりと指摘された。
「カワ。今日の練習、本気でやってたか?ちゃうやろ。それはあかんぞ」
 柏のトレーニングで、歴戦のストライカーたちのシュートを受け続けた稲田だからわかる、河田のシュートの可能性。だからこそ、足首の痛みを言い訳に練習で力を出し切らないのが残念でならなかった。河田の胸にもズドンと響いた。手術をしよう。治して、それでも試合に絡めないのであれば、それは足首ではなく、自分のせいだ。
 5月に手術を受け、全治まで約8~10週間と診断された。決断し、一歩踏み出すと道が開けた。第27節・北海道コンサドーレ札幌戦は、それまで1トップのレギュラーだったドウグラス・タンキが警告の累積で出場停止、代わりに先発した富山貴光も前半で負傷。30分に途中出場という思いがけない形で出番を得ると、0-2から土壇場で追いつく2ゴールを挙げた。一気にポジションをつかんだのも、自然な流れだった。上背があるわけではないが、相手を背負ってもボールを収める力強さがあり、ジャンプ力があって空中戦も苦手にしない。なんといっても、どんな形でもゴールをねじ込もうとする泥臭さが、新潟サポーターの心をがっちりつかんだ。

 このタイミングでセレッソと対戦するめぐり合わせに、燃えないはずがない。
「子どものころからJリーグといえばセレッソ、プロといえばセレッソ。かなりワクワクしています」
 戦いの舞台には、かつてのチームメイトが待っている。
「中学のときから、健勇の強さ、速さ、高さは図抜けていた。今はそこからさらに献身的に守備をしたり、厳しいボールを頑張って収めたりできる。以前の健勇でも追いつきたいと思っていたのに、あのレベルでなお成長している。それが素直にうれしいんです」
 それでこそ、追いつき、追い越しがいがあるというものだ。「健勇より点を取りたいんですよ。この試合で」と河田。ホーム・ビッグスワンでの対決が、今から楽しみでならない。

文・大中祐二