5月20日(日)2018明治安田生命J1リーグ 第15節
サンフレッチェ広島 - セレッソ大阪 (16:00KICK OFF/Eスタ)
試合写真・コメントなど チケット
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 昨年5月14日、キンチョウスタジアムで広島はセレッソに5-2で敗れた(第11節 )。その時、意気揚々と引き揚げてくるセレッソの選手たちが口々にこう言っていたのを、はっきりと覚えている。

「広島、やばいよ」
 やばいという言葉は最近、大きく変化してきた。「すごい」とか「興味深い」という意味でも使われるが、この場合は本来の「危ない」ということ。おそらくは「残留争いに巻き込まれる」という意味であろう。その言葉を聞いた時、自分の心の奥底で覆い隠そうとしてした現実が突き付けられた。

「やはり、そうか。そういうことなんだ」
 次々と襲いかかるセレッソの若きアタッカーの前に、4年で3度の優勝を果たした守備陣が為す術なく失点を重ねる。必死の思いで前に出ても、その姿勢をあざ笑うかのようにカウンターがはまる。信じがたい光景。現実を突き付けられた。

 セレッソ戦で11試合目を終えた広島の、当時の戦績は1勝3分7敗。勝点6で17位に沈んだ。その後、森保一監督が退任し、ヤン ヨンソン監督が就任。夏場以降、なんとか立て直したものの勝点は33。2005年、2008〜2012年、そして2014年のレベルであれば降格していた数字である。残留にはまちがいなく、運があった。

 苦戦に苦戦を続け、勝点1差で残留を果たしたチームが、その翌年にJ1史上に残るほどの快進撃を続けるとは、広島担当記者ですら予測は不可能。今季ここまでの14試合であげている勝点37は18チーム制になった2005年以降最多。失点6は最少。複数失点試合は唯一の敗戦であるFC東京戦だけで、先制された4試合中3試合で逆転勝利をあげている。22得点中17得点と後半にめっぽう強く、昨年は34試合で6得点しかあげられなかった75分以降ではすでに8得点。もちろん、リーグNo.1だ。

 カップ戦も含めた公式戦ですでに3つのPKを止めている林卓人や、14試合10得点と爆発的なパワーで得点ランキング1位を走るパトリックなど個人の活躍も目立つが、広島はやはり組織。インテンシティの強い守備を90分間続けることができるフィジカルの逞しさをベースに、どんな状況でもあきらめない守備や繋がりを保つ攻撃など、当たり前のことをハイレベルで当たり前にやっていく「高いレベルのベーシック」(城福浩監督)が持ち味だ。「広島は強い。全員のハードワークがすごい」と槙野智章(浦和)が評する激烈な戦いぶりは、昨年のキンチョウスタジアムで無残な姿を見せた広島とは一線を画す。

 ただルヴァンカップ敗退が決定し、少なからずショックを受けているのも事実だ。16日に行われたグループステージ最後となった浦和戦で失点に絡んでしまった柏好文は「本当に申し訳ない。この悔しさを強いメンタリティーを発揮して修正し、セレッソ戦にぶつけたい」とまなじりを決した。城福監督も「この敗戦によって我々は大きなものを得たと信じている。連戦で疲れているなどと言っていられない」と決意を新たに。カップ戦敗退によって芽生えた大きな危機感をエネルギーに変え、強敵・セレッソに挑む。

文・中野和也