3月9日(土)2019明治安田生命J1リーグ 第3節
セレッソ大阪 - サンフレッチェ広島 (16:00KICK OFF/ヤンマー)
試合写真・コメントなど チケット
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 なんといっても、セレッソの開幕・神戸戦は衝撃的だった。イニエスタら世界的な選手が揃った強力攻撃陣を周到に準備していた守備ブロックで封じ、セットプレーで得点して逃げ切る。ロティーナ新監督の戦術的な引き出しの深さに感動した戦いだった。

 今季のサンフレッチェ広島は、神戸とは前線の迫力が違うとはいえ、彼らと同様にボールポゼッションを高めての戦いを志向している。ACLの広州恒大戦(3/5・火、2-0で敗戦)でも、ボール保持は60%近くにのぼり、シュート数でも枠内シュートでも上回った。だが、具体的なビッグチャンスがいくつあったかと問われると、まだ心許ない。
 第1節の清水戦(1-1)でボール保持にバランスが傾いたことを修正しようとすると、続く磐田戦(0-0)では裏へのボールばかりになってしまい、今季のコンセプトである「主導権を握って意図的に崩す」回数が少なくなった。

 つまりはまだまだ、発展途上なのである。プレシーズンでもメンバーが固定されているわけではなく、コンビネーションはこれから。柴崎晃誠と柏好文、川辺駿と野津田岳人など阿吽の呼吸を持つユニットはあるが、それがチーム全体に行き渡るためには、まだまだ時間が必要だ。故にボールを保持してもサイドへの展開からのクロスがどうしても多くなり、制空権で優位に立つ相手に弾かれてしまう。

 ACLを含む連戦中で、チームとしてのトレーニングがなかなかできない状況もあり、コンビネーションが急激に良くなるとも思えない。セットプレーにも期待したいが、まだキッカーの野津田岳人の意図と周囲の動きがシンクロしておらず、決定機の創出には至っていないのが現状だ。

「サッカーの志向を変えて勝点を積み重ねることは簡単ではなく、今は辛抱の時期。相手を焦らすようなパス回しから縦へのスイッチを入れるバランスは、まだまだ」と城福浩監督は言う。しかし一方で2試合で1失点という守備には手応えもある。
「戦うメンタリティーや守備のベースは昨年から変わらないし、そこは選手たちとも共有している。また、(ドウグラス ヴィエイラをはじめとして)ケガ人が戻ってきてくれることにより、途中で(攻撃的な)カードを切れるようになったことはポジティブだと捉えています。セレッソ戦は正直、(中国・広州からの)長時間の移動を含めてのハードな日程を考えると、本当に厳しい。とにかくベストを尽くして努力を重ねることしか、勝点を積み上げる方法はないと思います」

 前線の選手たちをどう選択するのか。19歳の若き守護神・大迫敬介が柿谷曜一朗や都倉賢ら経験豊富なストライカーたちとどう対峙するのか。野津田や川辺、松本泰志など20代前半の選手が中心に座る発展途上のチームが、個人能力の高いホームチーム相手に対してどう戦うのか。厳しい戦いが待っているが、紫の魂を燃やして桜軍団に挑戦していくしかない。

文・中野和也