3月30日(土)2019明治安田生命J1リーグ 第5節
ベガルタ仙台 - セレッソ大阪 (14:00KICK OFF/ユアスタ)
試合写真・コメントなど チケット
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 2019シーズンの公式戦における最初のセレッソ大阪戦ということで、ベガルタ仙台にとって大きな注目点となるのが、やはり相手の背番号25。今季、仙台からセレッソに移籍した奥埜博亮が、相手チームの選手としてユアテックスタジアム仙台にやってくることだ。

 ジュニアユースから仙台のアカデミーで育ち、仙台ユースからのトップチーム昇格はならなかったものの、進学先の仙台大学でさらに大きく成長。在学中にJFA・Jリーグ特別指定選手としてJ公式戦デビューを果たし、2012年からトップチームの一員となった。

 V・ファーレン長崎への期限付き移籍を終えて2015年の仙台に“帰って”きてからは、間違いなく主力選手だった。しかしこの冬に、いちサッカー選手としての成長を考えた末に、セレッソへの移籍を決断する。惜しまれながら大阪へと去った彼が3月30日にユアスタのピッチに立つときは、もう“帰って”くるのではなく、相手の一員として“戦いに”くるのである。

 元セレッソで昨年4月から仙台に復帰した関口訓充は、クラブハウスから離れた練習場である紫山サッカー場まで移動する際に、奥埜の車に乗せてもらうことが多かった。今季開幕して間もない頃に、関口が練習場への“足”がいない寂しさについて奧埜に連絡したところ、「まだ見つかっていないんですか?」という突っ込みが返信されてきたという。そんな関口は、昨季まで奥埜が仙台でつけていた7番を背負い、彼にとっての“古巣戦”に挑む。複雑な話だが、今回のこのカードにはそのような縁ができたのだ。

 戦術的な話においても、奥埜や、彼が出場しない場合でも同じポジションに入る選手の動きは、仙台にとって注意点の1つだ。
 奥埜は豊富な運動量でピッチの広範囲を駆け回り、相手の間のスペースに潜りこんでボールを受け、さらにいいポジションを取っている味方にボールを託す。これを前線から中盤の底まで様々なポジションでこなすことができるため、セレッソがロティーナ監督のもとで新しく実践しているスタイルにおいては、貴重な選手といえる。
 仙台としてはこの奥埜にいい立ち位置をとらせず、逆にその周囲のスペースにハモン ロペスや石原直樹といった元同僚の攻め手を送りこみたいところ。それが相手の機能性を削ぎ、こちらの機能性を増すことにつながるといえる。

 なにより、仙台にとって大事なのは奥埜を止めること以上に、今季まだ勝利がない(1分3敗)リーグ戦での初白星を、このホームで記録すること。「初めての対戦。全力で、正面からぶつかりたい」(蜂須賀孝治)と、奧埜との再会を楽しみにする気持ちはありながらも、まず仙台の選手たちは勝点3獲得のために戦う。

文・板垣晴朗