6月14日(日)2015明治安田生命J2リーグ第18節
水戸ホーリーホック 1-1 セレッソ大阪 (13:04/Ksスタ/8,391人)
試合写真・コメントなど
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 明治安田生命J2リーグ第18節。試合前、パウロ・アウトゥオリ監督が「最高の1週間だった。試合で結果を出して、今週を締めくくりたい」と話すなど、連勝を目指して敵地・水戸に乗り込んだセレッソ大阪だが、結果は1-1。何より欲していた勝点3を得ることができず、悔やまれる引き分けとなった。

 前節の愛媛FC戦では、前半すばらしい攻撃を見せたセレッソだが、今節はボールは持てども効果的な崩しがなく、得点の気配が漂ってこない前半だった。山口蛍が日本代表に招集されて不在の中、普段は山口が務めている[4-3-3]のアンカーに扇原貴宏が入り、左のインサイドハーフには丸橋祐介が、左サイドバックには染谷悠太が入るなど、「あくまで緊急措置の、今節だけの限定的な」(アウトゥオリ監督)布陣で臨んだセレッソだが、機能したとは言い難く、迷いなき水戸ホーリーホックの縦に早い攻撃の前に、守備で後手を踏む場面も見られた。セレッソは37分、45分と立て続けに失点のピンチを迎えたが、前者は相手の決定力不足に、後者はオフサイドに救われ、辛うじて0-0で前半を折り返した。

 流れが水戸に傾いた中で迎えた後半だが、先制したのはセレッソだった。55分、右サイドの酒本憲幸のクロスに飛び込んだ楠神順平が水戸のDFに倒されPKを獲得。キッカーは玉田圭司。この千載一遇のチャンスを背番号20が冷静に沈め、得点後はこの日の「モリシの日」にちなみ、森島寛晃アンバサダーの代名詞である飛行機ポーズで喜びを表現した。
 ここから、アウトゥオリ監督は一気に攻勢をかけるべく、染谷に代えて吉野峻光を投入。丸橋を左サイドバックへ戻す。先制し、布陣も本来の形に戻ったことで、ここからの数分間はセレッソが主導権を握った。67分には、右サイドで短いパスを何本もつなぐセレッソらしい崩しの中から、最後は玉田が押し込むもシュートはわずかにゴール右に外れた。

 直後の68分、アウトゥオリ監督は田代有三をピッチに送り込む。この試合がセレッソデビュー戦となった田代は、懐の深いポストプレーや滞空時間の長いヘディングなど、持ち味は垣間見せたが、「距離感というか、そこも開いていたので、僕がもっとキープできればよかった。ボールを取られてカウンターという場面が何度もあった」と試合後に悔やんだように、キープし切れず、失う場面もあった。
 81分に喫した痛恨の失点も、セレッソが敵陣まで攻め込んだ状態から、前線でパスがつながらずにカウンターを浴びた形だった。「僕が入って失点してしまったので、もっと違うことができたのではないかなと思う」。同点の責任を背負い込んだ田代だが、彼ひとりにこの結果を負わせることは筋違い。「点を取った後に構え過ぎたというか、相手を受けてしまう」(扇原)姿勢は前節の後半も見られた現象である。さらに言えば、後半の終盤に相手に走力で上回られ、サイド攻撃からクロスでやられる形は、今季ここまで何度も見られた形だ。
 1-1となってからの水戸の攻撃はすさまじく、85分以降セレッソは決定的なピンチを4度招くが、ここは丹野研太が、山下達也が、茂庭照幸が体を張ってしのぎ、逆転弾だけは許さなかった。

「内容的にも相手にやられる部分が多かった」(玉田)、「今日に関しては、内容的にもあまりいい形がなかった」(茂庭)。試合後、選手たちがそれぞれ振り返ったように、今節は水戸・柱谷哲二前監督が心血を注いで作り上げたチームが見せた戦う気持ちに対し、上回るだけのクオリティーやメンタルを発揮することができなかった。水戸のゴール裏に掲げられた「柱谷前監督の4年半を無駄にしない為に絶対に結果をだそう」の横断幕は、確実に水戸のイレブンに響き、90分間の集中力としてピッチで具現化された。
 前節掴んだ反撃の機運を加速させ、上位浮上の機会を逃したセレッソにとっては、「J2は甘くない、ということはこれまでも十分味わっているし、その中でどう勝ち切っていくのかを一人ひとりは考えていると思う。それをチームとして、どうまとまってやっていくか」(茂庭)という課題を改めて突きつけられた、ほろ苦い一戦となった。

文・小田尚史